あなたも『まんが島』を見て、無人島で漫画を描きながら狂喜の淵に陥ってみよう⁉

■「キネマニア共和国」

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映画文筆などといった仕事をしておりますと、日々の締め切りに追いやられるたびにどこかへ逃げ出したくなるものですが、そういったエスケープを許すまじと、編集者が書き手を旅館やホテルに閉じ込める、いわゆるカンヅメというシステムもあります。まあ、有名であればあるほどその宿泊施設は豪華になっていくわけですが、映画『まんが島』に登場する漫画家たちは……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.217》

何と無人島でカンヅメさせられてしまうのでした!

大自然の中で心ゆくまで創作してみたいあなたのために!?

『まんが島』は、実に単純明快な映画です。

要はさまざまな過去を持つ売れない漫画家たちが、漫画を描くためにマンガ島と呼ばれる絶海の孤島に赴き、そこでひたすら漫画を描き続けていきます。

とりあえずは男ばかりです(女性は立ち入り禁止にしておいたほうが、犯罪も起きずによろしかろうといった雰囲気ではありますので、一応漫画家以外の立ち入りは禁止となっております)。

大自然の中、携帯の電波など届くはずもなく、ライフラインもおぼつかず、島と文明を繋ぐ唯一の手段である船に乗って、たまに編集者がハンバーガーを手土産に様子を見にやってきてくれたりはします。

が、そんなことを続けていると、どうなるか?

やがて船が来なくなり、紙も墨汁も、そして食料も底をつき、彼らの精神状態はパニックに陥っていき……!

まんが島

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モノ作りをめざして狂っていきたいあなたのために!?

今はデジタルで漫画を描く人も一般的になっていますが、本作の彼らは徹底してアナログ人間で、そのアナログの極致たる無人島にてひたすら漫画を描き続けていきます。

今、こうしてPCで原稿を書いている自分自身、狭苦しい部屋から離れて、彼らのように大自然の下でのんびり原稿を書いてみたいと、ないものねだりをしてみたくもなります。

やはり人間、誰しもアナログなものを原点とし、憧れるものがあるのでしょう。

しかしながら、そこで決死のサバイバルとなるとまた別問題で、餓えてもベレー帽をかぶり続ける漫画家さんたちではありますが、そのプライドも相まって、次第に狂気の域へ突入していきます。

正直に申して、この映画、私はもう後半は彼らが一体何をやっているのかわけがわからないほどに錯乱しながら見ていました。

おそらく、作り手も撮りながらわけがわからなくなっていたのではないかと、勝手に想像してしまったほどです。

しかし、その錯乱状態こそがクリエイターの心理でもあり、いかに理屈でわけがわからなくても、完成としては十二分にわかってしまう。

特にモノ作りを目指し、従事する人であればあるほど、そこに不可思議なシンパシーを抱くことができるでしょう。

監督は『キツツキと雨』『ディアスポリス-DIRTY YELLOW BOYS-』など多くの脚本を手掛けながら俳優としても活躍中の守屋文雄で、これが監督デビュー作となります。

おそらく彼自身、本作を作っているあいだじゅう、心の中の無人島でもがき苦しみ、時に何が何だかわからなくなったりもしていたのでしょう。

本作にはそういった創作者の本音が隠すことなく描出されています。

最初は笑って見ているうちに、いつしかクリエイターの狂気に飲み込まれ、恐れおののきながらも自ら何かを創作したくなる意欲に駆られていく、実に不可思議な映画です。

今、漠然とした気持ちでもいい、何かを創りたいという想いを抱いている人は、見て損はありません。

大いに狂ってください。その先に見えてくるものは、きっと楽しいもののはずですから!?

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(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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