女優の宝庫ウディ・アレン映画で最も輝いた大女優ミア・ファロー

<〜映画は女優で作られる〜vol.3:女優の宝庫ウディ・アレン映画で最も輝いた大女優ミア・ファロー>

ウディ・アレンの映画は、脚本力と俳優のアンサンブルが最大の魅力なだけあって、これまで多くの俳優に、アカデミー賞受賞もしくはノミネートの機会を生み出してきた。実にその数17名。(2度受賞のダイアン・ウィーストなど受賞者6名、ノミネート11名。うち1名はアレン自身)
さらにその男女比を見れば、男優5名に対して女優は12名と、いかに彼が女優を輝かせる作家であるということがわかる。

その中でも、とくに印象深いヒロインとして挙げるならば、公私にわたるパートナーとして、代表作『アニー・ホール』や『マンハッタン』から、『マンハッタン殺人ミステリー』まで7本のアレン作品でタッグを組んだダイアン・キートンだろうか。

しかし、今回はキートンを上回る13本の作品でコンビを組みながらも、意外なことに(アレン作品を除いても)一度もアカデミー賞の候補に挙がっていない大女優ミア・ファローに注目したい。

彼女もまた、アレンとの間に3人の子供(2人の養子を含む)をもうけるパートナーではあったが、かなり複雑な事情が重なって、現在ではアレンの義母という立場なのである。(ファローが前夫との間に迎えた養子の一人、スン=イーが現在アレンの妻なのだ)

そんなゴシップネタはさておき、このファローがウディ・アレンの作品の中で最も魅力的に映し出されていたのは間違いなく、1985年に制作された『カイロの紫のバラ』だろう。

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大恐慌時代の田舎町で、失業中の夫に代わってウェイトレスとして働く主人公セシリアは、町の小さな映画館に通いつめることを心の糧にしていた。ある日『カイロの紫のバラ』という映画を観ていた彼女の前に突然、その映画の主人公がスクリーンの中から抜け出してくる。たちまち恋に落ちた二人の前に、今度はハリウッドからその役を演じた俳優も現れるという、奇想天外なファンタジーが展開される。

ここでファローが演じるセシリアは、か弱い印象と純粋で真っ直ぐな心の持ち主を備えており、まるで現代の少女漫画の主人公のようなキャラクターなのだ。それでいて、どこかに陰鬱な影を帯びている。時代性や境遇を反映させながら、映画に逃避するというこのキャラクターには、他のどの作品でも観ることができない、アレンの映画に対する純粋な愛情が表現されているのはもちろんのこと、ファローに理想の女性像を照らし合わせているかのようにも映る。

出世作でもある『ローズマリーの赤ちゃん』や、『華麗なるギャツビー』など、やはり愛嬌と暗い影のハイブリッドが似合う彼女は、アレン作品のような徹底した都会的なキャラクターでこそ、その魅力が引き出される女優なのである。しかも、田舎を舞台にしたこの異色ファンタジーでもこれだけの魅力を放てるということは、単純にアレン作品との相性がずば抜けて良かったと考えても間違いはない。

しかしながら、最初の作品『サマーナイト』でアレン作品唯一のラジー賞候補俳優となり、そこから全ての作品に出演したのち、最後の作品『夫たち、妻たち』ではアレンと離婚する妻の役を演じることになるという、なんとも皮肉な幕切れとなったのである。

90年代以降、社会奉仕活動などにも力を入れるファローは現在72歳。直近の出演作は6年前と、すっかり銀幕で見る機会が少なくなってしまった女優の一人である。その一方で、Twitterを頻繁に更新しているという意外な一面も見せている。そろそろ久々に映画出演を果たしてくれないだろうか。いずれにしても、近い将来アカデミー賞の名誉賞を受賞して然るべき女優だ。

(文:久保田和馬)

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    ライタープロフィール

    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬 1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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