運転するバスに元妻が…『ミッドナイト・バス』
が描く人生への不安


©2017「ミッドナイト・バス」ストラーダフィルムズ/新潟日報社

こんにちは、八雲ふみねです。
今回ご紹介するのは、現在公開中の『ミッドナイト・バス』。



八雲ふみねの What a Fantastics! ~映画にまつわるアレコレ~ vol.142

バツイチの中年男 高宮利一は故郷・新潟と東京を走る長距離バスの運転手。東京で定食屋を営む恋人・志穂との再婚を考えていたが、息子の伶司は東京での仕事を辞めて帰郷、娘の彩菜は夢と結婚の間で揺れていた。

そんなある夜、利一が運転する新潟行きのバスに一人の女性が乗り込んでくる。

彼女は16年前に別れた妻の美雪。
怪我をした父親の面倒を見るため、東京と新潟を往復しているのだった。

思いがけない再会をきっかけに、止まっていた家族の時間が動き出した…。

直木賞候補傑作ヒューマン小説をベテラン竹下昌男監督が映画化!


第27回山本周五郎賞と第151回直木賞の候補に選出された伊吹有喜の同名小説を映画化した本作は、地元にUターンした男と元妻の再会をきっかけに、離れ離れになった家族が再出発するさまを、バスの乗客たちとの人間模様を交えて描いたヒューマンドラマ。

新潟の美しい風景とともに映し出されるのは、人生の機微。やるせない現実、人生への不安、反発、動揺。

しかし、お互いがお互いを知ることで誤解も解けて分かり合える…というストーリーに派手さはありませんが、心にじんわりと染み入る温かい余韻が残ります。

それを実現したのは、竹下昌男監督による演出力。丁寧にシーンを重ねていくことにより、登場人物のちょっとしたやり取りにも“意味”が積み重なり、ストーリーが進むほどに厚みを増していく。それはまるで、利一ファミリーが離れ離れになってしまった16年という歳月を埋める“作業”に観客も立ち会っているかのよう。決して手を抜かない丹念な作品作りは、熟練監督ならではの才腕とも言えるでしょう。



©2017「ミッドナイト・バス」ストラーダフィルムズ/新潟日報社

ガラス窓が主人公の心の内を映し出す。原田泰造のオトナの男の哀愁にドキッ!

秀逸な人間ドラマを奏でるのに集まったキャストは、ベテランから若手まで実に多彩。

主人公の利一を演じるのは、お笑い芸人としてだけでなく俳優としての活躍も著しい原田泰造。

元妻の美雪役を山本未來が、恋人の志穂役を小西真奈美が熱演し、作品に華を添えます。

利一の子ども役には七瀬公と葵わかなというフレッシュな二人が大抜擢。

そしてまさに“扇の要”とも呼べる魅力を発揮しているのが、美雪の父・敬三を演じる長塚京三。

それぞれの“人生”を体現する姿に愛おしささえ感じられます。

なかでも深い印象を与えるのが、やはり主演・原田泰造の存在感。役作りのために中型運転免許を取得、関越自動車道を走行するシーンも自らハンドルを握って撮影を敢行。優しい男性である反面、他人に心の内側に踏み込まれたくないがために上っ面だけ優しいだけのようにも見える。そんな利一の細やかな感情の起伏を表現し、観る者をイラッとさせたり共感を呼んだり。深夜バスを運転しているシーンで窓ガラス越しに見える利一の表情はオトナの男の哀愁がたっぷり。必見です!

緊張感あふれる場にも笑顔を。会見中、原田泰造が思い出した人物とは…。

本作がお披露目されたのは、第30回東京国際映画祭。

記者会見、プレミア上映舞台挨拶には原田泰造、山本未來、小西真奈美、七瀬公、音楽を担当した川井郁子、竹下昌男監督が登壇。

皆さんがそれぞれ本作への熱い思いを語って下さるなか、ちょっぴり神妙な面持ちの原田さん。元妻役の山本さんと恋人役の小西さん間に座る自らの立場をなぞらえて「石田純一さんってスゴイ」と、ポツリ。

原田さんの突然の告白に、集まったマスコミ陣は大爆笑。
緊迫感あふれる映画祭のプレス会見でも常に笑いを忘れない原田さんの“しゃべくり”に、司会を務める私も魅了されてしまった瞬間でした。


作品情報

ミッドナイト・バス

2018年1月20日から新潟先行公開
1月27日から有楽町スバル座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー


監督:竹下昌男

原作:伊吹有喜 「ミッドナイト・バス」文春文庫刊

音楽:川井郁子


出演:原田泰造、山本未来、小西真奈美、葵わかな、七瀬公、長塚京三 ほか

八雲ふみね fumine yakumo

八雲ふみね大阪市出身。映画コメンテーター・エッセイスト。
映画に特化した番組を中心に、レギュラーパーソナリティ経験多数。
機転の利いたテンポあるトークが好評で、映画関連イベントを中心に司会者としてもおなじみ。
八雲ふみね公式サイト yakumox.com

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