日本を代表するボンドガール浜美枝

■「キネマニア共和国」

写真家『早田雄二』が撮影した銀幕のスターたちvol.13

現在、昭和を代表する名カメラマン早田雄二氏(16~95)が撮り続けてきた銀幕スターたちの写真の数々が、本サイトに『特集 写真家・早田雄二』として掲載されています。

日々、国内外のスターなどを撮影し、特に女優陣から絶大な信頼を得ていた早田氏の素晴らしきフォト・ワールドとリンクしながら、ここでは彼が撮り続けたスターたちの経歴や魅力などを振り返ってみたいと思います。

浜 美枝さん

先ごろ007シリーズ最新作『スペクター』(15)が公開されて話題を集めたばかりですが、その007シリーズは、かつて第5作『007は二度死ぬ』(67)で日本ロケを行い、日本人女優を多数ボンドガールに起用しました。浜美枝もそのひとりです。

日本人離れした華やかな容貌と
陽性で活発なキャラクター

浜美枝は1943年11月20日、東京都の生まれ。
中学卒業後、東急バスに勤務しますが、59年に東宝の『侍とお姉ちゃん』の宣伝を兼ねたコンテストに出場したことが縁になって、同年暮れに東宝に入社。翌60年に『若い素肌』で女優デビューを果たします。

この年、同い年の星由里子、田村奈巳とともに“東宝スリーペット”(命名は俳優の夏木陽介)として大々的に売り出され、『サラリーガール読本・お転婆社員』(60)では3人で主演しています。

3人の中でも浜美枝は活発なイメージが強かったこともあって、東宝の先輩・団令子の後継者的なポジションとして位置するようになっていきました。

62年には『キングコング対ゴジラ』『若い季節』などに出演して好評を博し、同年度の製作者協会新人賞を受賞しています。

もともと日本人離れした容貌から醸し出される都会的かつ陽性のイメージの強い彼女は、東宝のお家芸ともいえるサラリーマン喜劇でその資質を発揮していきますが、中でも印象を際立たせていったのがクレージーキャッツ主演のナンセンス路線で、『クレージー作戦 くたばれ!無責任』(63)や『日本一のホラ吹き男』(64)『クレージー黄金作戦』(67)などなど、クレージー・ファンにとってのマドンナともいえる存在として今も語り草になっています。

『国際秘密警察 鍵の鍵』(65)『100発100中』(65)などのスパイ活劇も実に彼女ならではの存在感で、およそ日本人が不似合に映えがちなジャンルを華やかに彩ることに長けた女優でありました。

また当時の子どもたちにも『キングコング対ゴジラ』(62)『キングコングの逆襲』(67)といった東宝特撮映画も鮮烈で、特に『キングコングの逆襲』のマダム・ピラニア役はその役名も含めて多大なインパクトをもたらしました。

女優業を引退し、望んでいた新たな道へ

そんな彼女が『007は二度死ぬ』(67)のヒロイン、キッシー鈴木役に抜擢されたのは当然の帰結であったとも言えますが、そのきっかけは『キングコング対ゴジラ』を見たスタッフがふみ子役の浜美枝とたみ江役の若林瑛子を推薦したことが機になったとのことで(当時から東宝特撮映画は海外でも人気だったことをうかがわせる話ですね)、かくしてふたりは面接を受けて合格し、ショーン・コネリーの相手役を堂々務めることになった次第です。

翌68年には日活の『昭和のいのち』で初の他社出演を果たし、石原裕次郎の相手役を演じます。岩内克己監督『砂の香り』(68)では主演しました。

もっともこの後、70年に東宝を退社してフリーとなって以降はテレビやラジオの出演が急増します。

テレビではドラマ出演もさながら『小川宏ショー』や『日曜美術館』などの司会でブラウン管に華やかなイメージを添え与えてお茶の間の人気を博し、ライオンの洗剤「トップ」CMイメージキャラクターも好評。

またその美声が買われての『浜美枝のいい人みつけた』『浜美枝のあなたに逢いたい』などの冠番組のパーソナリティも多くの支持を得続けました。

実は彼女自身、女優人生は本意ではなく、世界を見据えた環境・食・農業問題などに臨む仕事に就くことを望んでいたようで、民俗学者の姫田忠義に私淑して以降、90年代に入ると女優業を引退し、農政ジャーナリストや大学教授として活躍中です。

そんな彼女が現在のところ最後に出演した映画が森田芳光監督の『キッチン』(89)で、これは『がんばれ若大将』(75)以来久々の映画出演でもあったのですが、ここで彼女は料理教室の講師を演じていましたが、その華やかなオーラは健在で、それはまた森田監督作品が求めるものと見事に呼応していました。

そろそろ、また何か映画出演されてもいい頃ではないかなとも願ってやみませんが、いかがなものでしょう? 日本映画界も以前に比べると、彼女の華やかなオーラを自然に受け止められるだけの度量を持ち得てきているようにも思えるのですが?

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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