やってくれたな!ラストにモヤモヤする映画3選
映画の紹介でよくあるのが「衝撃のラスト」の謳い文句ですが、衝撃にもいろいろありますよね。感動とか驚愕とか。
しかし今回は「モヤモヤ」にスポットを当ててご紹介したいと思います。ハッピーエンドだけが映画じゃない、モヤモヤも時には良いものだ。そう思えるような作品を3つご紹介します。
※「モヤモヤ=悪」ではなく、モヤモヤをひとつの楽しみとしていただければ幸いです。
タイトルの通り!?霧が晴れない『ミスト』
まず最初にご紹介するのは『ミスト』です。『ショーシャンクの空に』、『グリーンマイル』のスティーブン・キング原作によるホラー作品です。
あらすじは、
激しい嵐が町を襲った翌朝、8歳の息子とスーパーへ買い出しに出掛けたデヴィッド。賑わう店の周りを軍人やパトカーが走りはじめ、辺り一面は濃い霧に覆われてしまう。さらに鼻血を流した男が店内へ逃げ込み「霧の中に何かがいる」と叫び出す。夜になると、巨大化した虫のような異次元の怪物が店内に侵入し、店内の人々は次第に理性を失いはじめる…。
となっており、そのスピード感ある展開に目が離せず、一気に霧の世界に引きずり込まれまるでしょう。
人間はパニックになったとき、たとえ狂った言動であっても、とにかく安心させてくれるものなどにすがるのだと本作は教えてくれます。
本作では、普段はしがないおばちゃんが人々を先導します。本当のピンチのとき、それがしがないおばちゃんであっても、安心させてくれるのであれば喜んですがるし、崇拝する。そして崇拝された者は次第にその思想がエスカレートしていき、今度はそのおばちゃんがもうひとつの脅威になっていく様が見事に描かれています。
相手が人間だけに怪物よりも恐ろしい部分もあり、それに負けずと戦う主人公・デヴィッドたちを手に汗握りながら応援することになるでしょう。
しかしながら、映画史上もっとも後味が悪いと言われるラストが待っています。映画内では霧は晴れても見ているこちらの霧がまったく晴れない。ものすごくガスったまま、ぜんぜんすっきりしない。「こんなの初めて…」と言ってしまうほどの衝撃の展開が。
これ以上はネタバレになってしまうので書けませんが、私はこれ以上にモヤモヤする作品を知りません。どうぞ覚悟してご覧ください。
唐突なSF展開で見る人を選ぶ『ドリームキャッチャー』
続いてご紹介するのは『ドリームキャッチャー』です。こちらもスティーブン・キング原作となっており、珠玉のホラーとして名高い作品です。
ドリームキャッチャーとは、アメリカインディアンのオジブワ族に伝わる、小さな輪や涙の形をした枠に糸を網状に張った装飾品であり、悪夢から守ってくれる魔除けのことです。これは予告編でも触れられています。
伝説では、ドリームキャッチャーは我々を悪夢から守ってくれるという。ところが今、ひとつの悪夢がその網を通り抜けてしまった…
冒頭からワクワクが止まらないナレーション。インディアン伝統の魔除けは本当に存在していた! そしてその魔除けを通り抜けてきた悪夢と戦う男達の物語感が漂ってきます。
私は予告編を初めて見たときには興奮を抑えきれず、しかしながら悪夢だけに夢オチだったらどうしよう…と不安になったことを覚えています。しかし本作は夢オチではありません。でも、むしろ夢オチだった方がよかったのかもと思うくらいモヤモヤします。
あらすじは、
メイン州の小さな町に住む4人の少年、ジョンジー、ヘンリー、ピート、ビーバーはある日、風変わりな少年ダディッツを助ける。4人はその時、ダディッツから彼の持っている不思議な力を分け与えられ、以後その秘密を共有することで強い絆が結ばれる。20年後、大人になった4人にとってそのパワーは今では重荷として彼らにのしかかっていた。そんなある時、ジョンジーが交通事故で重症を負うが、奇跡的に一命を取り留める。やがて4人は北方の森にある狩猟小屋で再会を果たす。それは彼らにとって毎年恒例の楽しいイベントのはずだったが…。 引用:映画 ドリームキャッチャー - allcinema
となっていますが、正直なところ予告編とあらすじから展開を予想できる人はいないでしょう。そのくらい裏切られますし、途中から唐突なSF要素がぶっこまれるので、見る人を選ぶ作品とも言えます。
また、予告編の最後で、
見せてあげよう、見たことを後悔するものを…
と言っていることで、展開のキレについていけなかった人から「そのとおりだった…」なんて意見もあったようです。
しかしながら原作者のスティーブン・キング自身が、DVDのコメンタリーで本作の仕上がりを絶賛しているだけあって、好きな人にはたまらない作品であることは間違いありません。
なんでもありすぎるやろ…『続・猿の惑星』
最後は『続・猿の惑星』です。『猿の惑星』の第1作は1968年に公開され、本作はその2作目となります。その後、いくつもの続編やリメイクが作られています。(本作は第1作の続きとして描かれているので、できれば第1作を見てからの鑑賞をおすすめします。)
人間と猿の立場が入れ替わり、人間は知能のない動物として猿に支配されている。原作の小説には「人間の知性は固定されて備わっているものではなく、知性がなくなれば動物と変わりがない」とのメッセージが込められており、いかに人間が傲慢で、猿に対してどんな扱いをしているのか、それを逆の立場から見てわかるようになっています。
しかしこの『続・猿の惑星』においては、かなりのモヤモヤが生じます。
なぜなら、人間と猿の立場が逆転しただけでなく、ミュータント:地底人がそこに加わってくるからです。
ひとつのフィクションを飲み込む前に、もうひとつのフィクションが追加される。だから、ものすごく消化不良を起こしてしまうのです。
もともとSF作品ですので、ミュータントが現れたとしても納得すべきなのかもしれませんが、このミュータントが超能力を使えるとあって、もはやカオスを感じずにはいられません。
超能力を使えるのに地底で何をしてたんだ。なぜもっと早く猿の侵攻を止めなかったんだと野暮なことを考えずにはいられないのです。
そして、「猿の惑星」シリーズ全般に言えることですが、みんなが救われることはありません。誰もがハッピーで終わらないのです。途中のモヤモヤ展開があって、さらにそんなラストなので、見終わったあとはすぐに次の行動に移れないことは必至です。
モヤモヤを含めて楽しもう
ラスト(途中も)にモヤモヤする作品を3つご紹介しました。しかしながらモヤモヤするといっても、どれも素晴らしい作品であるは間違いありません。こんなことを言ってしまってはアレですが、必ずしもハッピーエンドの作品がいい作品とは限りません。
悲しい、苦しい、納得がいかない、そんなバッドエンドをモヤモヤを含めて楽しめるようになってこそ、本当の映画ファンと言えるのかもしれません。
ただし、バッドエンドの映画は見終わってからの反芻といいますか、自分自身への問いかけを含めて、腹落ちさせるまでに時間を要します。間違っても気分が落ち込んでいるときや、日曜日の夜に鑑賞するのは避けましょう。
むしろテンションが上りまくって落ち着かないときにこそ鑑賞し、一度自分を見つめ直したいときに利用するのが良いと思われます。
それではまた。映画カタリストのゆうせいでした。
(文:ゆうせい)
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