『ムルゲ 王朝の怪物』レビュー:『パラサイト』長男も出演! 韓国製ウイルス&怪獣&アクション&時代劇エンタメ快作!

想像の翼を広げて構築された
見事なまでのエンタメ!

本作の監督・脚本を手掛けたホ・ジョンホによると、本作は『朝鮮王朝実録』の中に記されていた「中宗の治世時に物怪によって宮殿中がパニックになり、王が居城からの撤去を余儀なくされた」といった短い一節を基に、想像の翼を広げられるだけ広げて創作を加えながら企画していった作品とのことです。

韓国語で物怪〈ムルゲ〉のムル=物、ゲ=奇怪な、といった意味があるそうで、ホ監督はこれを1匹の怪物とみなしながら、怪獣パニック時代劇として、しかもソード・アクションなどを巧みに融合させながら、見事なまでのエンタテインメントに仕立て上げています。

とにもかくにも怪獣ものとしての要素と王朝陰謀劇、刀を主としたハード・アクション、さらには若者たちのほのかな恋模様までもがドラマを全く疎外させることなく(むしろそれがあるがゆえにスリリングな情緒も高まっている!)機能し得ているのには驚くほどのものがあります。

キャストも『朝鮮名探偵 鬼〈トッケピ〉の秘密』など「彼が出ている作品に外れなし」の誉れも高いキム・ミョンミンを筆頭に、『美男(イケメン)ですね』(キム・イングォン)、『1987 ある闘いの真実』のパク・ヒスン、そして『ホワイトバッジ』の名優イ・ギョンヨンなど芸達者が勢揃い。

そして『パラサイト 半地下の家族』で長男を演じたチェ・ウシクの登場も『パラサイト』を見たばかりの映画ファンにとってなじみやすいものがあることでしょう。

彼が扮するホ宣伝官と淡い恋に落ちるユン・ギョムの娘ミョンに扮するイ・ヘリは、日本でも知られるK―POPグループ“Girl’s Day”のメンバーで、TVドラマ「恋のスケッチ~応答せよ1988~』(16)で女優としてもブレイクしています。彼女のさっそうとした弓裁きも見どころの一つです。

そしてなんといっても今回登場する物怪ムルゲのおぞましくもどこかしらグロ可愛い造型と、彼(彼女?)を動かすダイナミックなVFXの見事さ!

若干ご都合主義的な設定もありますが、そういった弱点も、ダイナミックな描写の連続とテンポの良さで帳消しとなり、あとはもうひたすらワクワクドキドキしながら鑑賞するのみ!

正直、どうしてこういう作品を日本映画界は作れないのか? と久々に敗北感に打ちひしがれるほどの面白さなのでした。

(『シン・ゴジラ』みたいなものとは、またテイストは違いますからね。あ、その伝でいいますと、私、昨年のハリウッド・ゴジラ映画『GMK』よりも断然こちらを推します!)

『パラサイト』で韓国映画の面白さに気づかれた方や、『GMK』くらいでは満足できない怪獣映画ファン、とにもかくにも面白い映画に飢えている方などなど、万民にオススメしたいエンタテインメントの誉れが『ムルゲ 王朝の怪物』なのです!

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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