2017年注目の新作映画5選

 気が付いたら2017年がやってきていた。気が付かないのも無理はない。何せ街の映画館では夏休み映画がまだまだ大きいシアターを陣取って上映しているのだ。しかも、『シン・ゴジラ』と『君の名は。』の2作品も。

 さすがにメガヒット邦画を予測するのも、興行収入を予測するのも(全米の動向は毎週書いているくせに)性に合わないので、新年最初のこの記事では、2017年に日本公開される注目作を紹介しようと思う。

 無論、もう間もなくノミネートが発表される第89回アカデミー賞への期待も込められている。

〜幻影は映画に乗って旅をする〜特別編:2017年注目の新作映画5選>

『ムーンライト』

ムーンライト

(C)2016 Dos Hermanas, LLC. All Rights Reserved.

まずはアカデミー賞で大旋風を巻き起こすと期待されているこの映画だ。インディーズ短編界で力をつけてきたバリー・ジェンキンス監督が描く本作は、トロント国際映画祭で大きな脚光を浴びると、全米公開後も高評価が絶えることはない。マイアミの貧困街に生きる少年が、いじめや麻薬などが蔓延る中で成長していき、自らのアイデンティティを確立していく。
2017年公開予定と、まだ具体的な公開時期はリリースされていないが、アカデミー賞の結果次第では春頃には日本に上陸するに違いない。

『ラ・ラ・ランド』

ラ・ラ・ランド 000

© 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

アカデミー賞の話となれば、この映画も黙っていない。『シカゴ』以来14年ぶりのミュージカル映画による作品賞を狙う本作は、黄金期のハリウッド映画を彷彿とさせるロマンティックでエモーショナルな絶対的娯楽映画。『セッション』のデイミアン・チャゼルがまたしても……!と驚嘆せずにはいられない。何と言っても、わずか1分半の予告編だけで、これだけ痺れさせてくれるのだから。2月24日から全国ロードショーとなる。

『エリザのために』

エリザのために

(C)Mobra Films – Why Not Productions – Les Films du Fleuve – France 3 Cinema 2016

もちろん、ハリウッドの映画だけが映画ではない。『4ヶ月、3週間と2日』のクリスチャン・ムンジウ監督が3度目のカンヌ映画祭コンペ挑戦で、3度目の受賞を果たした本作は、ルーマニア社会の現実を曝け出す。留学を控えた卒業試験の前日、暴漢に襲われた娘。心に傷を追った彼女のために、あらゆるコネクションを駆使して卒業試験に合格させようとする父親の姿。わずか5日間で流れる物語が、あまりにも濃密で、何故だかとても恐ろしい。
1月28日より新宿シネマ・カリテほか全国順次公開。

『午後8時の訪問者』

午後8時の訪問者

(c)Christine Plenus

『エリザのために』でムンジウが3度目の戴冠を遂げたカンヌ国際映画祭で、2度のパルムドールを含む100%の受賞経験を誇るダルデンヌ兄弟が、7度目の挑戦にして初めて無冠に終わった。それが、診療所に訪れたドアベルを無視してしまったがために、翌日ひとりの少女の遺体と向き合うことになった女医を描いた本作だ。映画祭時の星取表ではいまひとつ伸びを欠いたとはいえ、これまでのダルデンヌ作品のクオリティの高さを考えれば、少しハードルが下がったと捉えることができよう。楽しみだ。
4月8日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー。

『哭声/コクソン』

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(C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

5本目はナ・ホンジン監督の6年ぶりとなる最新作。韓国の二大映画賞である青龍映画賞と大鐘賞の両方で最多ノミネートを獲得し、青龍映画賞ではナ・ホンジンが監督賞、そして日本人俳優・國村隼が助演男優賞に輝き、大きな話題となった。田舎の村で起こる猟奇殺人事件を追う刑事と、得体の知れない〝よそ者〟が繰り広げる攻防を描く本作は、とくに精度が高いことで知られる韓国スリラー映画のド真ん中を貫く衝撃作。156分にも及ぶ、なんともヘビーな一本だ。
3月11日よりシネマート新宿ほかで公開。

まとめ

 ここで挙げた5作品以外にもまだまだ注目作が続く2017年。春にはテレンス・マリック監督のドキュメンタリー映画『ボヤージュ・オブ・タイム』、初夏には毎年恒例のウディ・アレン最新作『カフェ・ソサエティ』。そして、秋にはリドリー・スコットの『エイリアン:コヴェナント』と、大作からインディペンデント映画まで幅広く良質な作品が揃う。

 もちろん、まだ日本公開が決まっていない作品にも、ジム・ジャームッシュや、ポール・ヴァーホーヴェン、アキ・カウリスマキの新作も控えているので、なかなか充実した一年になるだろう。

 個人的にはとくに、シルヴァン・ショメ監督が手掛ける新作アニメ『The Thousand Miles』(年内に完成予定)と、フランスで2016年末から公開が始まったアクタン・アリム・クバト監督の『Centaur』の2作品が、できるだけ早く日本公開してくれないかと待ちわびるばかりである。

(文:久保田和馬)

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    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬 1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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