『オーシャンズ8』女性チームならではの関係性に燃える、正統派のリブート作品だった!

(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

プロの犯罪ドリームチームの活躍を描いた人気映画『オーシャンズ』シリーズの出演者を、全員女性に置き換えてリブートした最新作『オーシャンズ8』が、8月10日から全国公開された。練り上げられた緻密な犯罪計画が今回も成功するのか?派手な銃撃戦や爆破ではなく、知力を尽くした頭脳戦が見所な本作を、今回は公開2日目の最終回で鑑賞して来た。

前シリーズの主人公オーシャンが、まさかの死亡!彼に妹がいて、しかも今回のオーシャンズは全員女性?

事前に入ってくる情報からは、どうしても安易な続編企画との印象を持たれそうな本作だが、果たしてその内容と出来はどうだったのか?

ストーリー

5年の刑期を終え、仮出所を果たしたデビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)。”オーシャンズ”のリーダー、ダニー・オーシャンの妹である彼女は、刑務所の中で練り上げた犯罪計画を実行に移すため、右腕となるルー(ケイト・ブランシェット)と共に犯罪のプロたちを集めて”オーシャンズ”を新結成する。ハッカー、スリ師、盗品ディーラー、ファッションデザイナー、服飾デザイナーなど、一流の才能を持つ彼女達のターゲットは、世界最大のファッションの祭典”メットガラ”でハリウッド女優(アン・ハサウェイ)が身に付ける1億5千万ドルのネックレス!網の目のように張り巡らされた防犯カメラや厳戒な警備を相手に、前代未聞で型破りな計画は果たして成功するのか?(公式サイトより。)

予告編

決して安易なリブートでは無い!女性チームに変えた意味とは?

実は、あのオーシャンに妹がいた!

その設定を聞いただけで、ある種の先入観や拒否反応を抱いてしまい、劇場での鑑賞をスルーされた方も多いのでは?

全3作が製作されて大ヒットした人気シリーズの夢よもう一度!とばかりに製作された作品。確かに、そんな安易な企画と誤解されがちな本作なのだが、実は単に出演キャストを女性チームに変更しただけの便乗作品ではなく、今回の設定変更には明確な狙いがある。

先頃世界的に話題となったハリウッドを中心とする女性運動や、それに伴う女性の社会進出からの影響が強いのはもちろんだが、同時に多くの女性に夢と希望を与え、日々の不満やストレスを解消してくれるその内容は、正に今の時代が求めている物だと言えるだろう。

本作に登場する”新生オーシャンズ”の顔ぶれは、落ち目のファッションデザイナーやスリ、天才ハッカーや盗品のディーラーなどなど。それぞれ得意の分野やスキルを持ちながら、男性優位の社会や彼女達が置かれた家庭環境のおかげで、自身の活躍の場や正当な評価を得られずにいる女性たちだ。

過去にデビーと一緒に働いた者もいれば、犯罪経験の無い者も加わったこの女性チームが挑むのは、ニューヨークで開催される世界的なファッションの祭典”メットガラ”の会場から、時価1億5千万ドルのネックレスを盗み出す大計画!

アン・ハサウェイ演じる人気女優が身に付けているネックレスを、果たしてどの様に盗み出すのか?その大胆過ぎる計画も、もちろん今回の見所なのだが、普段我々が見る事も出来ない高額のアクセサリーを、厳重な警備を突破して盗み出す彼女たちの姿こそ、正に女性観客の共感を呼び日頃の鬱憤を晴らしてくれる代弁者に他ならない。

完璧だったはずの計画を襲う予期せぬアクシデントをかわしつつ、男には実行不可能な計画を次々と進めて行く彼女たちだったが・・・。彼女たちを待つその意外な結末は、是非劇場でご確認を!

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監督・脚本のゲイリー・ロスは、やっぱり裏切らない!

本作の監督・脚本・原案は、あの心温まる政治コメディの傑作『デーブ』の脚本で知られるゲイリー・ロス。

『ハンガーゲーム』でハリウッドの大作を経験した彼が、今回オールスターキャストによる新生シリーズ一作目の監督・脚本に選ばれたその理由は、やはり人間ドラマの名手であることと、彼が登場人物に向ける温かい目、これに尽きる。

そんな彼だからこそ、派手な銃撃戦や爆破を廃して洒落た頭脳線を描く『オーシャンズ』シリーズへの起用は、正にピッタリの選択だったと言えるだろう。

過去に数多く作られた男性による”集団犯罪物映画”の様に、自身の欲望や金目当てで犯罪計画に加わるのではなく、皆今の自分の環境を変えたくて行動に移すという展開は、大いに女性観客の共感を呼ぶものだ。

実際本作でも、一世一代の犯罪計画に加わる彼女たちのフットワークの軽さやチームとしての一体感、そして事件の真相を追う保険調査員のコメディリリーフ的キャラクターなど、ゲイリー・ロスを起用したその効果は、見事に作品の随所に現れている。特に”新生オーシャンズ”の面々が自身の役割を果たしながら、共通の目的に向かって進んで行く様子は正に”チームワークの勝利”そのもの!

今回のリブートでチームの面々を女性に置き換えた意義を、更に高めてくれるゲイリー・ロスの脚本と演出、必見です!

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実は『オーシャンズ11』へのリスペクトに溢れた内容だった!

ここまで述べて来た様に、単に人気シリーズの出演キャストを女性に変えて、オリジナルシリーズの知名度を利用する内容とは、一線を画す本作。

その理由は、今回の『オーシャンズ8』が実は『オーシャンズ11』を初めとするオリジナルシリーズに最大限のリスペクトを捧げて作られている作品だからだ。映画冒頭の犯罪計画への取りかかりやチームの面々の特徴、計画進行中の予期せぬ要素の発生からの意外な展開はもちろん、ラジコンのおもちゃなどの小物まで、オリジナルシリーズのファンなら思わずニヤリとしそうな要素が所々に登場する本作。

そのため、出来れば本作鑑賞前には最低限『オーシャンズ11』を復習して鑑賞に臨んだ方が、「あれ、こいつ何で突然出て来るの?」とはならないので、より作品世界に没頭して楽しむことが出来るはずだ。

特にラストのデビーの一言には、なぜ彼女がこの計画を実行しなければならなかったのか?その想いが見事に込められており、オリジナルシリーズへの敬意と愛情が詰まっていると感じずにはいられなかった。

オリジナルの『オーシャンズ』シリーズの様に、多くの人気俳優を毎回集めてシリーズ作品を作るには、どうしてもスケジュール調整などで時間がかかるのと、やはり同じ様なキャストや内容の連続に、観客が次第に飽きてしまうのも事実。今回一気にイメージの革新と若返りを図った本作の挑戦は、見事に成功したと言えるだろう。

デビー以下”新生オーシャンズ”の面々が、犯罪計画の末に掴んだ物とは?それによって彼女達の生活や人生が、どの様な変化を遂げたのか?嫌でも次回作を期待させるそのエンディングは、是非劇場で!

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最後に

何と言っても今回のリブート版で注目すべき点は、せっかく実力や能力がありながら、自身が輝ける活躍の場を与えられていなかった女性たちが、その能力を生かして社会に一矢報いる!その痛快さと爽快感にある。犯罪映画という形を借りて、実はそうした世の多くの女性に励ましと希望を与える内容は、男たちが主役の犯罪映画とは一線を画すものだ。

実はネットのレビューや感想で目立ったのが、主人公のデビーが仮出所早々、様々な手口で盗みや詐欺を働くのが不快、或いは許せないというものだった。ここは本来、彼女の適応能力の高さや詐欺・盗みのテクニックを観客に理解させる効果と、出所してすぐ仕事に戻れるだけの彼女のプロ意識を示すためのシーンなのだが、この様に観客の受け取り方が違うだけで、全く別の意味に取られてしまうのだから、映画とは難しいものだ。

例えば警察でなく、保険調査員が事件捜査担当として登場するなど、実は巧妙に”犯罪行為”という現実味を薄れさせている本作。確かに彼女たちが行うのは犯罪行為だが、それを通して描こうとするメッセージやテーマにも、是非目を向けて頂ければと思う。

ただ、そうは言っても、すり替えたネックレスがレプリカと分からないのはおかしいとか、盗んだネックレスをあんなにしたら価値が落ちるのでは?など、細かい部分の不自然さや脚本上の穴が無いと言ったらウソになる本作。

前述した様に、仲間同士の裏切りや警察の捜査・追及、そして完璧な計画に発生するトラブル回避のスリルよりも、女性同士の連帯の強さや、社会的に弱い存在の彼女たちが、一世一代の晴れ舞台で世間の鼻を明かす痛快さを優先させたその作風こそ、正に今回監督・脚本を勤めたゲイリー・ロスの持ち味に他ならない。

実際、”メットガラ”会場から奪った品物を換金する方法も、今は現役を離れたある職業の女性たち(彼女たちも素晴らしい技術を持ちながら、今は社会から忘れられた存在なのだが)に、もう一度晴れ舞台を用意して活躍させることになるという、女性の社会進出をユーモアと共に描いた秀逸な展開になっているのだ。

そうして手に入れた大金を、果たして”新生オーシャンズ”のメンバー各人がどう使ったか?その個性溢れる使い道が描かれるエンディングも良いが、今回デビーの使い道が示されなかったのは、やはりそれを元手に次の計画を実行に移すためなのか?更に『オーシャンズ11』の様に特定の悪人を倒して金を奪うという展開ではないため、目的を達してから次回作への繋がりをどう持って行くか?などなど。今後のシリーズ化を考えると、いきなり最初から次回作へのハードルが上がってしまった感が強い本作。デビーの個人的な復讐と目的が達成された今、果たして彼女たちを動かすだけの動機が、次はどこから生まれてくるのか?亡き兄への想いと自身の過去に決着をつけたデビーと、彼女が率いる仲間たちの活躍に今後も期待したいと思う。

銃を撃たない、人が死なない犯罪物という、正に家族で見ても安心して楽しめる内容の本作。今後もより多くの観客層を取り込んで、世界中の観客たちを楽しませてくれることだろう。

(文:滝口アキラ)

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