『パティ・ケイク$』は女性の自立を描く傑作!恋愛と将来の夢を掴んだ生き様を見よ!

(C)2017 Twentieth Century Fox

続々と傑作映画を世に送り出し、今や映画ファンにも絶大な信頼を得ているフォックス・サーチライト・ピクチャーズ作品。その中から新たに登場した注目の作品として現在公開中なのが、この『パティ・ケイク$』だ。

予告編からは、女性版の『8マイル』みたいな内容との印象が強かった本作を、今回は公開二日目夜の回で、鑑賞してきた。渋谷のタワーレコード近くの劇場という、絶好のロケーションで鑑賞した本作。果たして、その出来はどうだったのか?

ストーリー

掃き溜めのような地元ニュージャージーで、呑んだくれの元ロック歌手だった母と、車椅子の祖母と3人暮らしのパティ(ダニエル・マクドナルド)。23歳の彼女は、憧れのラップの神様O-Zのように名声を手に入れ、地元を出ることを夢みていた。金ナシ、職ナシ、その見た目からダンボ!と嘲笑されるパティにとって、ヒップホップ音楽は魂の叫びであり、観るものすべての感情を揺さぶる奇跡の秘密兵器だった。パティはある日、フリースタイルラップ・バトルで因縁の相手を渾身のライムで打ち負かし、諦めかけていたスターになる夢に再び挑戦する勇気を手に入れる。そんな彼女のもとに、正式なオーディションに出場するチャンスが舞い込んでくるのだが・・・。

予告編

とにかく主演のダニエル・マクドナルドがスゴい!

その強烈な存在感で主役の女性ラッパーのパティを見事に演じているのが、今後公開が予定されている話題作『レディ・バード』にも出演し、その演技力が高い評価を得ているオーストラリア出身の女優、ダニエル・マクドナルド。

彼女が見事なラップを披露するシーンが本作の最大の見どころなのだが、意外にも本職のラッパーでもなければ、それまでラップの経験も無かったとのこと。今回本作の役柄のためラップを猛特訓して撮影に臨んだだけに、男性ラッパーを相手に力でねじ伏せるかの様な、そのフリースタイル対決は必見の迫力!

もちろん女性としての恋愛や、母親と娘の間に流れる複雑な感情もきちんと描かれる本作は、ラップに興味の無い方にも女性の自立や家族関係を描く良質の人間ドラマとして、きっと楽しんで頂けるはずだ。

(C)2017 Twentieth Century Fox

実は、ラップの神様O-Zのセリフが超重要!あまりに深いその真理とは?

本作で重要なキャラクターとして登場するのが、パティが崇拝するラップの神様O-Z。映画の後半、偶然にも彼の家で本人に対面する機会を得た彼女は、彼の目の前で自身の即興ラップを披露するのだが、O-Zの余りに冷たい態度と酷評に、完全にやる気を失ってしまう・・・。

実はこの部分、一見するとラップ界のスターの傲慢さと横柄な態度、それに音楽業界の裏側が描かれて、O-Zが悪役の様に取られかねないシーンなのだが、彼が語る美術品の価値についてのセリフと重ね合わせると、実はこの部分が真逆の意味を持つことが分かってくる。

彼の部屋に飾られている240万ドルの絵画。なぜそんなに高い値段がついているのか?その価値への説明として、絵の技術や上手い下手ではなく、その絵を描いた作者の人間性や感情が凝縮されそこに込められているからこそ価値があるのであって、それを考えれば240万ドルなんて安いもんだ、と語るO-Z。

そう、自分の部屋でO-Zが聞いていた音楽をいきなり止めて、一方的に自分のラッを披露したパティに対してO-Zが冷たく言い放った「お前はニセモノだ」という言葉は、実は観客のことや他人へのリスペクトを考えないパティの利己的な態度に対して向けられたものなのだ。つまり、挨拶や断りもなく自分のラップの技術を一方的に披露したパティに対して、アーティストとして根本的な部分が欠けていることを、O-Zは指摘したことになる。

この決定的な挫折と、O-Zの言葉に秘められた真理がパティを人間的に成長させたことは、決勝戦で彼女が歌った曲を見れば明らかだ。パティの母や祖母の想いと、自身の生い立ちや人生のすべてを乗せたその曲が、最終的にラジオリスナーのリクエストで1位を得たというその結果こそ、正に「ホンモノ」の証明であり、どんなコンテストの優勝よりも遥かに価値ある勲章に他ならない!

果たして彼女がすべてを賭けて臨んだ決勝戦で歌った曲とは何だったのか?

『グレイテスト・ショーマン』並みの感動が味わえるこのシーン、是非劇場で体験して頂ければと思う。

(C)2017 Twentieth Century Fox

最後に

ラップに対する抜群の才能とスキルに恵まれたパティだが、その外見や、女性がラップを?という周囲からの二重の偏見により、彼女の本当の姿が世に認められる機会は一向に巡って来ない。

実際アメリカでは、タレント発掘番組などでその才能が認められて一夜にしてスターへの階段を駆けあがるという、アメリカンドリームの実現が度々目撃されてきた。

だが、やはりその場に出るためには、人々の先入観や偏見の目に晒される覚悟、そして自身の外見を笑われて馬鹿にされるかも?という恐怖と対峙し、一歩を踏み出す勇気が必要となる。

周囲の人間が勝手に貼るレッテルに負けて、自分から一線を引いて夢を諦めるか、それとも嘲笑や失敗への恐怖を覚悟で挑むかは、夢を追うすべての人々にとっての共通の悩みだと言えるだろう。

O-Zに自分のラップを聞かせて認められるという、他力本願のやり方の甘さを指摘され挫折を味わったパティが、やっと周囲の人々と心から向き合い謝罪し助けを借りて、人生における最大の勝負所に挑むラストのパフォーマンスは、正に圧巻の一言!

「No Pain No Gain」の言葉通り、苦しみ抜いたパティだからこそが得られるエネルギーや、今まで苦しめられた母娘関係が逆に彼女の武器となり、遂にはその前途を照らす灯りとなる本作のラストは、きっと多くの観客に勇気とヤル気を与えてくれるはず。

「もう我慢するのは沢山、私は私のやりたいことをやってなりたい自分になる!」そんな気にさせてくれるこの『パティ・ケイク$』。

会社や仕事、そして恋愛や子育てなど、日々数々の悩みや選択の機会に直面している多くの女性にこそ、この作品を全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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