恋愛なんて面倒くさいことだらけ。 でも、だからこそ魅力的であることを教えてくれる 映画『ピース・オブ・ケイク』

■「キネマニア共和国」

いつの世も、恋愛なんてものは面倒くさいもの。これさえなければ人生いかに楽か……などと思いつつ、それでも好きにならずにはいられない人の性(サガ)。そのことを痛感させてくれる作品を見てしまいました。

というわけで、

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.15》

多部未華子&綾野剛主演、田口トモロヲ監督の青春めんどいラブストーリー映画の快作『ピース・オブ・ケイク』をご紹介!

50過ぎのおっさんが25歳女子の恋愛映画を撮る!

ピース オブ ケイク
『ピース・オブ・ケイク』はジョージ朝倉のコミックを原作に映画化したもの。
どこか主体性のない25歳のヒロインが、会社を辞めて心機一転、おんぼろアパートに引っ越してDVDレンタルショップに務めることになったものの、アパートのお隣さんでしかもショップの店長と、いつのまにか恋愛関係に陥ってしまい、それがもとで結局はまた女と男の困った関係が、ときにシニカルに、時に微笑ましく描かれていきます。

監督は個性派俳優で知られる田口トモロヲで、これまで『アイデン&ティティ』(03)『色即ぜねれいしょん』(09)で映画監督として注目された彼ですが、この監督3作目は初の依頼仕事。
「50を過ぎたおっさんが25歳女子の恋愛映画なんか撮っていいのか?」
とマジに悩んだという彼ですが、いつの世も恋愛なんて自意識過剰が災いしての失敗だらけ。そんな普遍的関係性を田口監督は真摯に捉えながら、また俳優でもある彼ならではの各キャストに対する温かいまなざしも功を奏して、もはや駆け引きすらできない若い男女のどうしようもない恋がみずみずしく綴られていきます。

特撮ヒーロー・ファン必見のキャスティング⁉

本当に面倒くさい女子と、本当にどうしようもない男子、そんな困ったちゃんたちの映画を面白く成立させるためには、各キャラクターが好感を持って見守っていられるかどうかにかかっているわけですが、ここでの面倒くさい女・志乃=多部未華子、どうしようもない男・京志郎=綾野剛、ともにちょっと相談にのりたくなってしまうような好もしさを発散しており、恋愛のごたごたがエスカレートしていくにしたがって両者の魅力もかわいらしく、ときにエロティックに増大していきます。
ふたりが温泉旅行に出かけて起きるひと悶着のシーンは本作の白眉といってもよく、見ているこちらも「ああ、ついに……」といった奇妙なカタルシスをもたらしてくれています。
ピース オブ ケイク
さらには脇を固めるキャストも贅沢で、特にオカマの天ちゃんに扮した松坂桃李、川谷君役の菅田将暉、さらには小澤亮太も含めて、いつのまにか仮面ライダー&スーパー戦隊系イケメン男優総出演になっていることにも気づかされます(綾野剛も『仮面ライダー555』に出演しています)。特撮ヒーロー・ファンも必見。また志乃のライバル的存在となる光宗薫も今後要注目の女優でしょう。
ピース オブ ケイク 松坂桃李 オカマピース オブ ケイク
クライマックスからラストにかけて一気に駆け抜けていく女と男のエモーションの発露は圧巻の一言で、田口監督の自信のほどをうかがえるとともに、もう恋愛のゴタゴタなんてたくさんと日ごろ思っている人も、また恋してみたいと思わせてくれるような、そんな快作に仕上がっています(でも、いざまた恋をしたら、きっと面倒くさいことだらけなのだろうなあ……)。

『ピース・オブ・ケイク』公式サイト http://pieceofcake-movie.jp/

(C)2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピースオブケイク」製作委員会

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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