『パーフェクト・レボリューション』、障害お構いなしの愛の革命!

■「キネマニア共和国」

(C)2017「パーフェクト・レボリューション」製作委員会

たとえば日本には「障害者」という言葉がありますが、現代ではこれを差別的であるとみなして、「障碍者」とか「障がい者」とか、マスコミによって表記の仕方を違えるといったデリケートな問題が存在しているのも事実です。

もっとも、「そんなことなどどーでもいいじゃん!」と言わんばかりに「身体障害者だって恋もするし、セックスもしたいんだよ!」「障害者だって普通の人間なんだ!」と説く向きがあるのもまた事実で、そのことを巧みに訴え得た作品が日本映画に登場したことは、個人的には歓迎すべき事象だと思っています……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.260》

『パーフェクト・レボリューション』、それはまさに愛の“革命”を描いた快作といっていいかもしれません!

脳性麻痺の障害者と人格障害の風俗嬢
ふたりの純愛がもたらす革命とは?

映画『パーフェクト・レボリューション』は、自身も脳性麻痺を抱えつつ、障害者の性への理解を広く世間に訴え続けている熊篠慶彦氏の実話を基に構築された、激しくも快活でアナーキーな愛のドラマを、新鋭・松本准平監督のメガホンで描いた作品です。

主人公は幼い頃に脳性麻痺を患い、大人になった今も重度の身体障害を持ち、車いす生活を強いられながら、障害者の性の欲求などを訴え続ける活動を続けているクマ(リリー・フランキー)。

日頃、かわいい女の子を見るとすぐにナンパしようとする明るいエロ・キャラでもある彼の講演を聞いて、ひとりの若い女性が声をかけてきました。

彼女の名はミツ(清野菜名)。人格障害を抱えつつ生きる風俗嬢です。

クマのことが気に入ってしまったミツは、熱烈なアプローチを始めていきます。

「あなたと私みたいな不完全な者同士が強い合わせになれたら、それってすごいことだと思わない?」

「世界に証明するの! 生まれも性別も、職業も能力も、お金も年齢も、幸せには関係ないって!」

そんなミツの説く“革命”にいつしかクマもほだされて、やがてふたりは同志のように結ばれていきます。

しかし、ふたりをめぐる周囲の目は、表面とは裏腹に実は意外と冷たいものがあり、そんな現実をふたりは目の当たりにしていきます。

果たしてミツとクマの“革命”はなしえるのか……?

もっとも本作は、革命の結果そのものを問うのではなく、革命を成そうとするふたりの純粋な想いと、それゆえの苦難にこそスポットをあてていきます。

(C)2017「パーフェクト・レボリューション」製作委員会

永遠に語られていくであろう
女優・清野菜名の代表作!

文筆業からイラスト、カメラマン、作詞作曲、俳優業などなど多分野で活躍し続ける主演のリリー・フランキーは、かねてより熊篠氏と交流があり、その姿勢に共感していただけあって、ここでも障害者として生きる者の実情や心情などをリアルに、そして飄々と演じています。個人的には今まで彼が演じてきたどの役よりも素晴らしく思えるほどの好演です。

しかしながら、今回もっとも特筆すべきはミツを演じる清野菜名でしょう。これまで『生贄のジレンマ』(13)における悪役としての孤軍奮闘ぶりや『TOKYO TRIBE』(14)『少女は異世界で戦った』(14)『東京無国籍少女』(15)などで魅せたハード・アクションの切れの良さ、そして今年は『暗黒女子』や『ユリゴコロ』とダークな状況下に置かれた若い女性の繊細な心理を巧みに体現している彼女ですが、おそらく本作は彼女のこれまでの最大の代表作として屹立し、今後も語られていくことは間違いありません。

何よりもこの映画を見ていて、ミツのことをみんな大好きになること必至でしょう。もちろん情緒不安定で、いろいろ周囲に迷惑もかけてしまうことしばしな彼女ですが、清野菜名の天性ともいえる明るい個性が、そのキャラクターを大いに魅力的にし、こちらまでも革命に巻き込んでくれていきます。

一方では健常者とも呼ばれる周囲の偽善性などを鋭くえぐりつつ、そこを完全に批判することなく、それもまた人間のサガであるかのように描いているのも本作の長所で、その意味での観客の想いを代弁しているのが、クマを長年介護してきているヘルパー恵理(小池栄子)でしょう。
クマとミツのことを真摯に考えているからこそ、次第に思考がふたりとどこかずれていく彼女の存在あってこそ、本作は幾重にも膨らみのある作品に仕上がっているのだと確信できます。

最近ではNHK朝のテレビ小説『ひよっこ』にも出演していた峯田和伸率いる銀杏BOYZの挿入歌《BABYBABY》や、チーナによるエンディング曲《世界が全部嘘だとしても》のエネルギッシュなノリの良さも、作品の快活なアナーキーさを巧みにバップアップし得ており、とかくこういった題材を深刻に受け止めがちな向きにも、いや、だからこそ本作を強くお勧めしたいところです。

クマとミツ、二人の純愛は、むしろ見る側の心に“革命”を起こしてくれることでしょう。

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(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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