肯定派、否定派真っ二つ。ハマる人はどこまで深くハマる堤幸彦の世界

RANMARU 神の舌を持つ男

(C)2016 RANMARUとゆかいな仲間たち

いよいよ公開となった「RANMARU 神の舌を持つ男 酒蔵若旦那怪死事件の影に潜むテキサス男とボヘミアン女将、そして美人村医者を追い詰める謎のかごめかごめ老婆軍団と三賢者の村の呪いに2サスマニアwithミヤケンとゴッドタン、ベロンチョアドベンチャー!略して…蘭丸は二度死ぬ。鬼灯デスロード編」。略称「RANMARU 神の舌を持つ男 鬼灯デスロード編」。

ゴールデンタイムでありながらあっと驚く低視聴率(平均視聴率5.6%)を記録したにも関わらず一気に映画化まで持って行きました。

もちろん、低視聴ドラマが映画になって大化けたものもあります。例えば「モテキ」なんて平均視聴2%台でしたが、映画は大ヒットを記録しました。といっても「モテキ」はテレビ東京のド深夜ドラマで「神の舌を持つ男」は全国ネットのゴールデンタイムのドラマです。この低視聴率は自他ともに認める大爆死(監督談)です。

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メインディレクター&原案は堤幸彦監督

その大爆死ドラマのメインディレクター&原案を担当したのが堤幸彦監督。大ヒット作、話題作を連発しながら、その作風もあって賛否両論、肯定派、否定派真っ二つ。好きな人、ハマる人はどこまでもついていくそんな監督です。

「神の舌の持つ男」に至ってはいつもは“どハマリ”するような人でもちょっとついて行けなくなってリタイアしちゃった人までいました(苦笑)。タイトルから料理ドラマと思った人もいたようです。

確かにドラマ放映時は低視聴でも、再放送で盛り上がったり、ソフトが高稼働したりして映画化に繋がることはありますが、今回はドラマ撮影等ほぼほぼ同時進行で映画の撮影も進行、今回ばかりはどんなことになってしまうかと思いましたが、これが、ドラマシリーズを無事完走した人間にはたまらない絶品となっておりました。ドラマ→映画化作品、実に6作品11本!!

実に多作な堤幸彦監督。企画の一からやり始めた作品から、どう見ても頼まれ仕事のような作品まで多種多様。その作品の中には「20世紀少年」3部作「真田十勇士」などのストレートな大作エンタメ。「明日の記憶」「悼む人」「天空の蜂」などの社会派ドラマ。「BECK」「イニシエーション・ラブ」のようなトリッキーな作品まで実に多種多様です。

昨年は「イニシエーション・ラブ」と「天空の蜂」を全く違うテイストのエンタメを同時に発表したことで報知映画賞監督賞を受賞しました。
ただ、いわゆる“小ネタ”を大量投入する作風や「BECK」のようなトリッキーすぎる演出方法は賛否、というよりは“否”を大いに呼ぶようなこともありました。

そんな堤監督のキャリアの中で特に目に付くのが自身から発信したドラマの映画化の多さです。ドラマでもまた爆死(本人談)が多い人ですが、その数、実に6シリーズ11本に発展しています。

堤幸彦テレビドラマ→映画化一覧

「金田一少年の事件簿」→「金田一少年の事件簿 上海魚人伝説」

「ケイゾク」→「ケイゾク/映画 Beautiful Dreamer」

「TRCIK」→「トリック劇場版」「トリック劇場版2」「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」「トリック劇場版 ラストステージ」

「スシ王子!」→「銀幕版 スシ王子! 〜ニューヨークへ行く〜」

「SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿」→「劇場版 SPEC〜天〜」「劇場版 SPEC〜結〜 漸ノ篇/爻ノ篇」

「神の舌を持つ男」→「「RANMARU 神の舌を持つ男 鬼灯デスロード編」」

映画的にも爆死してしまったもののもありますが、それでもこの数はほかに類を見ません。映画まではいかないまでもスペシャルドラマで続編が放映されることも多いです。(「金田一少年の事件簿」「ケイゾク」「池袋ウェストゲートパーク」「TRICK」「SPEC」など)

これはひとえに、堤監督の世界観が圧倒的に確立されているからのことでしょう。嫌いであろうとなんであろうと、見た瞬間に“あっ!?堤幸彦だ!!”と思わせる、堤幸彦という人はそんな監督です。ちなみに舞台演出もコンスタントにこなしていて「電車男」「琉球ロマネスクテンペスト」「悼む人」「真田十勇士」なども手がけています。元々がバラエティ番組のディレクターから出ている人でもあるので、まさにオールラウンドプレイヤーです。

そして、集大成。「RANMARU 神の舌を持つ男 鬼灯デスロード編」

RANMARU 神の舌を持つ男 メイン

(C)2016 RANMARUとゆかいな仲間たち

そして堤幸彦監督が20年来の構想をぶち込んだのが「RANMARU 神の舌を持つ男 鬼灯デスロード編」。あらゆるモノの成分分析を舌でできる男朝永蘭丸(向井理)とそれに付きまとう(?)瓶棺墓光(木村文乃)、宮沢寛治(佐藤二朗)の三人が再結集。東北の片田舎で起こる謎の事件に挑みます。

低視聴であることは自覚があるようで、なんと冒頭三分間宮沢寛治役佐藤二朗によって“誰も見てないでしょうから”ということでドラマシリーズの紹介ナレーションがあります。

そして、やっと本編が始まります。

事件は謎の黒水の出現、毎夜起きる鬼火、群発地震に地盤沈下、そて“子殺し温泉の伝説”まで詰め込むだけ詰め込みました。映画ゲストには市原隼人、木村多江、財前直見が登場、ついには堤幸彦監督が手掛けていなかった財前直見主演のドラマ「QUIZ」のネタまでぶち込んできます。

おかげさまで、事前に映画を映画会社の試写室で見させてもらえるような身分になったのですが、試写室内ではクスクス笑い続ける人と首をかしげ続ける人両方がいて見事な“THE 堤幸彦映画”となっていました。

手間隙かけたコントと揶揄する人もいるようですが、それこそがファンにはたまらない堤幸彦映画です。そしてなにより堤幸彦ワールド入門編として最高の一本です。

ドラマを見続けた人も、ドラマはリタイアしてしまった人も、ドラマは見ていなかった人も、かなり腰が引けている人も、堤幸彦ワールドが苦手な人も、一度気持ちをリセットして劇場に行きましょう。

心底楽しめる絶品映画があなたを待っています。低視聴だなんだという前評判を吹っ飛ばしてやりましょう!!

(文:村松健太郎)


    ライタープロフィール

    村松健太郎

    村松健太郎

    村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年目に入った映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方で各種記事を執筆。

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