『ライリーノース 復讐の女神』ランボーも真っ青の最強ママ、降臨!

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愛する者を奪われた主人公が復讐のために悪を成敗する映画やドラマは山のようにありますが、アクションもヴァイオレンス描写もどんどん過激にエスカレートしていく昨今の映画界の中、もはや生半可なものを発表されても映画ファンの支持を得ることはなかなか難しいものがあります。

しかし、ここに久々、アクション映画ファンの留飲を下げる快作が登場! その名も『ライリー・ノース 復讐の女神』……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街408》

そう、今回の主人公は平凡なママが一転してランボー顔負けの復讐の女神と化してクズどもを次々と成敗していくという、何ともカタルシスに満ちた作品なのでした!

愛する夫と娘を殺された
平凡な主婦の壮絶リベンジ

『ライリー・ノース 復讐の女神』の舞台はアメリカ、ロサンゼルス郊外。

ヒロインは平凡ながらも夫と愛娘とともに幸せ生活を送っていたライリー・ノース(ジェニファー・ガーナー)。

しかしその生活は一瞬にして崩れ去ります。カルテルが支配する麻薬組織への介入を夫が拒んだことが原因で、組織は家族団らんで外出しているところを襲撃し、夫と娘の尊い命が奪われてしまいました。

辛くも生き延びたライリーは、その後姿を消します。

そして5年後、組織のワルどもが次々とむごたらしく殺されていく事件が発生。

彼らは全て、かつてライリーの夫と娘の命を奪った襲撃者たちでした……。

そう、ライリーが最強の復讐のためL.A.に戻ってきたのです!

冒頭にも記しましたが、復讐をモチーフとした映画は古今東西作られすぎるほど作られてきていて、ストーリー展開も割かし先読み出来てしまうものがあるだけに、ではどういった方法論で今の観客の支持を得るかというのが作り手の大きな課題になってくると言えます。

その意味でも、今回もっとも上手くいっているのがヒロイン、ライリーのキャラクター構築で、それまで争いや殺戮とは無縁の人生を過ごしていた心優しい彼女が、いかにして肉体改造し、殺しのテクニックを習得していったかをフラッシュバック的に手早く見せながら、その復讐の執念に説得力をもたせ、L.A.に舞い戻って家族の仇をひとりずつ始末していくあたりのパワフルな殺人マシーンぶりが、そんな彼女の心の痛みみたいなものまで巧みに体現しているのです。

ライリーを演じるのは『エレクトラ』(05)などで知られるジェニファー・ガーナー。

最近はドラマ出演が多く、それこそ11年以上アクション・シーンを撮影してなかったという彼女ですが、本作のオファーを受けて以降、肉体強化はもとより、戦術や武器の使い方などもネイビーシールズとともに訓練して習得していったとのこと。

そうした成果が本作では最大限に発揮されて、壮絶なバトル・アクションのつるべ打ちになっていきますが、そこには言葉数少ない彼女の身体的運動そのものが大きく貢献していることは間違いないでしょう。

たとえ定番的なドラマ展開でも、演じる者の体現の度合いでいくらでも初々しい魅力が醸し出されていくのが、映画ならではの妙味なのです。

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見る側に心の痛みを伴わせる
ビッグ・エンタメ!

もっとも本作はストーリーそのものも現代社会に即した目くばせがさりげなく盛り込まれていて、そこも今の観客にシンパシーを抱かせる要因の一つにもなっています。

SNSなどメディアをフルに活用していくドラマ展開はもとより、クライマックスとなるスラム街(L.A.最大の犯罪地区スキッドロウ)での攻防戦は、今や世界全体を覆いつくす貧困の苦しみや不安などを見事に象徴するとともに、巨悪と体制の癒着といった要素との対比にも成り得ているように思えてなりません。

監督は『96時間』(08)『パリより愛をこめて』(10)などで知られるピエール・モレル。

CGに頼らず生身の肉体による極限アクションを重視しつつ、現代社会を見据えていく彼の演出方法論はここでも俄然健在。

また、もともと撮影監督として本格的なキャリアをスタートさせている彼だけに、今回も単なるドンパチではなく、全体的に悪夢的魅惑を忍ばせた映像センスが開花されているのも注目すべきところでしょう。

またエンタメとして、ヒロインと対峙する敵の凶悪さをどれだけ提示し得るかというのも大きなポイントとなりますが、今回麻薬王ガルシアを演じるフアン・パブロ・ラバの存在感も特筆的で、さらには極悪非道の限りを尽くす輩にも愛する家族がいるという、ほんの一瞬ながらもそういったショットを忍ばせているあたりにも、映画そのものに深みを与えてくれています。

とにもかくにも邦題に偽りなし。“復讐の女神”による壮絶なリベンジを、観る側にまで心の痛みを伴わせるビッグなエンタテインメントとして、大いに堪能してください!

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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