インディペンデント映画ならではの『Dressing Up』のユニークな映像セカイ

インディーズから生まれた新たな才能たち

監督の安川有果は撮影当時25歳。自主映画活動の中、大阪市が立ち上げたCO2(シネアスト オーガニゼーション・大坂エキシビジョン)の企画募集において、黒沢清や山下篤弘に選出されて、今回初の長編映画を監督することになりましたが、その豊かな映画的感性によって第14回TAMA NEW WAVEコンペティション部門グランプリを受賞。
ヒロイン育美を務めた主演の祷キララは撮影当時は小学校6年生でしたが、触れたら壊れそうなか細さと、逆にこちらが壊されそうなオーラの強さをもって、CO2新人俳優賞、田辺・弁慶映画祭・映検女優賞、TAMA NEW WAVEベスト女優賞を受賞しています。

こういった才能は、商業映画からはなかなか輩出できない、インディーズという自由な映画作りの中からこそ育まれてきたものでしょう。また本作の助監督だった清水艶は今年『灰色の鳥』を監督、制作の草野なつかが監督した『螺旋銀河』もまもなく公開されます。一つの作品から広がっていく映画的次世代のネットワークは、これからも注目し続けておいて損はありません。

誰もが持ちえる心の中のモンスターと、人はどうつきあっていくべきか、永遠に答えは出ないであろうが、それでも提示せずにはいられない作り手側の衝動が、痛いほど見る者に伝わってくる作品です。新人若手ゆえのつたなさも今だけの初々しい魅力として、強く一見をお勧めします。

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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