『シークレット・ミッション』が『ハロー!?ゴースト』と並ぶ感動作である「3つ」の理由!




第5回:『シークレット・ミッション

新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が、更に期間延長されることが濃厚になった今日この頃。

全国規模で映画館が休館中のため、最近は自宅やスマホでの映画鑑賞に慣れてきた、そんな方も多いのではないでしょうか。

確かに劇場での新作映画鑑賞ができず、テレビも再放送が増えてきている現状では、もはやネット配信での映画鑑賞に頼らざるを得ないのも事実。

しかし、各配信サービスによって作品ラインアップが若干異なる上に、検索してもリストに挙がってこない作品も多かったりするため、自分の好みの作品が見つからなかったり、次にどの映画を観たらいいのか? 毎日の作品選びに頭を悩ませている方も多いと思います。

そんな方たちのために、Amazonプライム・ビデオで鑑賞可能な韓国映画の中から、特にオススメの作品を紹介する、この連載。

今回取り上げるのは、2014年日本公開の韓国映画『シークレット・ミッション』です。

北朝鮮の潜入スパイを主人公にしたアクション映画ですが、実は前回ご紹介した『ハロー!?ゴースト』にハマった方にこそ、ぜひオススメしたい本作。

果たしてその魅力と見どころとは、いったいどのようなものなのでしょうか?

ストーリー


北朝鮮の特殊工作部隊"5446部隊"のエリートスパイであるリュファン(キム・スヒョン)は、韓国の田舎町に潜入してバカな青年を演じながら、作戦実行司令を待つように命令される。
食料雑貨店を営むスニム(パク・ヘスク)の下で住み込みで働きながら、リュファンはパン・ドングと名乗ってマヌケな青年を演じ、巧みに周囲の人々に溶け込んでいく。
祖国への忠誠を誓って2年間もバカを装っていた彼だが、そこへ駆け出しのロックミュージシャンとして同じ部隊のヘラン(パク・ギウン)と高校生に扮するヘジン(イ・ヒョヌ)も送り込まれることに。
祖国からの作戦実行の連絡を待ちながら、田舎町の暮らしに慣れ、人々とも交流するリュファンたち。そして、ついに北朝鮮総政治局に動きが。だが、その作戦内容は彼らが想像していたものとは、あまりにかけ離れていた。


理由1:キム・スヒョンの見事な演技力が最高!



北朝鮮の特殊工作部隊"5446部隊"の班長を務める主人公リュファンは、軍服に身を包んだエリートスパイとして、映画の冒頭から颯爽と登場します。

部隊の鬼教官との別れのシーンで見せる、自身の命をかけた危険な潜入任務に向かう彼の真剣な表情に、観ているこちらの期待も高まるのですが…。

ところが意外なことに、そこから映画は一気にコメディへとシフトチェンジ!

2年後の韓国で子供たちから石をぶつけられてバカにされたり、階段から派手に転げ落ちるリュファンの変わり果てた姿が、スクリーンに登場することになります。

そう、実は韓国に潜入したリュファンの任務とは、周囲にスパイとバレないように、バカな男のふりをして生活すること! だったのです。

こうして、映画の冒頭でエリートスパイとして登場したリュファンと、任務としてあえてバカな男を2年間演じ続けている姿との落差に、観客も「え、こういう映画なの?」と、序盤から衝撃を受けることになります。



延々続く待機任務に疑問を持ちながらも、来るべき行動開始の日のために、わざと人前で一日に何回か転んだり、子供に石をぶつけられて転倒するリュファン。

愛国心に燃える彼は、任務の指示書で指定された通りにバカな男を演じるのですが、このリュファンを演じるキム・スヒョンの「ここまでやるか!?」という絶妙なコメディ演技のおかげで、観客も大いに笑わされてしまうのは見事!

キム・スヒョンのファンにとっては、かなりの衝撃シーンの連続となるのですが、バカな男を演じている時のリュファンと、エリートスパイの本性を現して敵を倒す姿との激しいギャップは、逆に彼のカッコよさを観客に強く印象付けてくれるもの。

例えば、リュファンを普段バカにしていた子供が、お兄ちゃんがいなくなって困った時に、リュファンを頼って訪ねてくるなど、間が抜けていても近所の人々に愛される主人公を見事に演じる、キム・スヒョンの演技は必見です!

理由2:愛すべき脇役たちに注目!



前述したキム・スヒョンの幅広い演技力も見どころですが、それに加えて魅力的な登場人物が次々に登場する点も、本作成功の大きな要因と言えるでしょう。

韓国に潜入してから2年間、バカな男のふりをして完全に周囲に溶け込んでいたリュファンでしたが、ある日、同じ部隊のライバルだったヘランや、リュファンの部下で彼に憧れるヘジンが、同じ潜入スパイとして彼の前に出現することに。

こうして、3人のスパイたちと近所の住人たちとの間に、暖かい交流や擬似家族的な関係が芽生えていくのですが、一見チャラくて軽薄な男に見えたヘランの隠れた男気や、リュファンに憧れるヘジンのBL要素など、観客が各登場人物の行動に共感・納得できるように、ちゃんと彼らの背景が描きこまれている点は見事!

更に主要キャスト以外にも、リュファンの近所の住人たちそれぞれにドラマが用意されていたり、北朝鮮のスパイを追う韓国の警察側にも理解者がいるなど、登場人物たちが皆、血の通った人間として描かれているおかげで、ラストに向けての怒涛の展開に、観客が安心して没入できるのです。

中でも注目なのは、『ハロー!?ゴースト』でヘビースモーカーのゴーストを演じていた、コ・チャンソクの存在!

本作で彼が演じる、リュファンの先輩として16年間潜入しながら、すっかり郵便配達人として韓国の暮らしに順応してしまったスパイは、エリートスパイとしてバカな男を演じるリュファンと見事な対比を見せてくれています。

周囲の人々を欺きながらも、次第に彼らと心を通わせていく3人のスパイたち。その心境の変化に説得力を与える脇役たちの素晴らしい演技にも、ぜひご注目頂ければと思います。

理由3:コメディ映画と思わせて、実は!



冒頭の描写でハードなスパイ・アクション映画と思わせておいて、実はリュファンのバカ男ぶりで笑わせるコメディ映画として進行する本作。

加えて、後から潜入してきたヘランの意表を突く任務内容や、リュファンに憧れるスゴ腕スパイとして登場したヘジンの高校生姿など、前半はコメディ寄りの展開が続くことになるのですが、そこから3人のスパイと近所の人々との交流を通して、ついに涙と感動のラストを迎えることになります。

例えば、映画の中で強い印象を残す、3人で仲良く煮干の処理をするシーンに象徴されるように、何でもない普通の生活の中にこそ本当の幸せが隠れている、そんな普段忘れがちな本質を観客に思い出させてくれる点も、本作が高い評価を得ている理由と言えるでしょう。

任務のためにバカな男を装い続けながら、北朝鮮に残してきた母親に向けて、決して届くことの無い手紙を書き続けるリュファン。

そして、そんな彼と住人たちとの温かい関係の中で、次第に気持ちを変化させていくヘランとヘジンの二人。

彼らの想いが交錯する後半の展開は、きっと涙無しには観ていられないはず!

祖国で彼らが許されなかった幸せな日々の中、2年間バカ男のふりをしてきたリュファンに、ついに下された指令とは?

そして、スパイとしての使命と人間的感情の狭間で苦悩するリュファンが、心から望んだものとは何だったのか?

数々の衝撃的展開を経て、序盤のコメディ路線が信じられないほどの涙と感動を呼ぶ作品へと変貌していく、この『シークレット・ミッション』。

リュファンに対するスニムの深い愛情と思いやりが、観客の涙腺を決壊させる大感動作なので、全力でオススメします!

最後に



冒頭の北朝鮮の描写を観た限りでは、韓国に潜入したエリートスパイの活躍を描くハードなアクション映画? そう思ってしまう、この『シークレット・ミッション』。

その後に続くコメディ展開で大いに笑わせながら、次第に深い人間ドラマへとシフトしていき、最後には涙と感動を観客に与えてくれる本作は、『ハロー!?ゴースト』で韓国映画の魅力に目覚めた方にこそ、ぜひ観て頂きたい内容に仕上がっています。

特に、てっきりコメディ的な味付けのためと思われたリュファンやヘランの偽装にも、実は重大な目的があったことが判明するなど、ストーリーの進行と共にその内容を二転三転させていく脚本は見事!

加えて、登場人物の誰一人として単純で薄っぺらいキャラクターには描かれておらず、ちゃんと各人に見せ場やドラマが用意されているので、ラストの感動と鑑賞後の余韻が、より深みを増すことになるのです。

中でも魅力的なのは、一年中同じジャージを着ていつもヘラヘラ笑っているため、近所の人々から馬鹿にされたり、子供たちから石を投げられたりしている、主人公リュファンのキャラクターでしょう。

序盤のコメディ描写のおかげで誤解されるかもしれませんが、実はリュファンの周囲の人々は、決して彼を差別したり偏見の目では見ていません。むしろ同じコミュニティの一員として、温かく迎えてくれているのです。

そんな近所の人々との触れ合いの中で、リュファンたち3人の北朝鮮スパイの心にも温かい感情が育っていくのですが、国家の政治的思惑やスパイとしての使命が、彼らを再び非情な世界へ呼び戻すことになってしまいます。

これから鑑賞される方のために、ここから先を詳しく書くことは控えますが、忠誠を誓ったはずの国家の犠牲にされる若者たちの姿と、南北の壁を超えて理解を深めていく人々の姿、更に家族の絆や母親の深い愛情が観客の涙と感動を誘う、この『シークレット・ミッション』。

『ハロー!?ゴースト』のラストと同様、こちらも号泣必至の作品なので、人の目を気にせず思いっきり泣ける自宅での鑑賞が、オススメです!

(文:滝口アキラ)

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