『七人の侍』+『荒野の七人』4部作と傑作西部劇『マグニフィセント・セブン』

■「キネマニア共和国」

久々に西部劇の、そしてアメリカ映画の快作を見ました。

アントワン・フークワ監督の『マグニフィセント・セブン』です。

ご存知、黒澤明監督の時代劇『七人の侍』(54)と、それを西部劇として翻案リメイクしたジョン・スタージェス監督『荒野の七人』(60)の双方を原案にしながら、現代に見合ったセンスで映画化したこの作品の魅力を語る前に……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.195》

『七人の侍』から『荒野の七人』、そして『マグニフィセント・セブン』に至る流れを、ざっとおさらいしてみましょう!

キャラクターの魅力こそが『七人の侍』『荒野の七人』のキモ

野武士の集団から村を守るために雇われた7人の侍たちの決死の活躍を描いた『七人の侍』に関しては、以前にもこのコーナーで“七人”映画の流れなどを紹介させていただいたことがありますので、下記を参照していただくとして……。
『七人の侍』から派生していった名作珍作群、その7つのパターン!

七人の侍

この作品の魅力は、何といっても7人の男たちの個性が見事に描かれているところにあります。

※出演(役名)
志村喬(勘兵衛)
加東大介(七郎次)
宮口精二(久蔵)
千秋実(平八)
稲葉義男(五郎兵衛)
木村功(勝四郎)
三船敏郎(菊千代)

これらの猛者たちが魅力的に描かれているからこそ、映画そのもののダイナミズムも一層弾んでいくものであり、やはり映画の魅力の基本は、キャラクターにあることを見るたびに唸らされます。

では、そのリメイクとなった『荒野の七人』は?

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これがまた見事なまでにキャラクターが立った映画になっているのです。

※出演(役名)
ユル・ブリンナー(クリス・アダムズ)勘兵衛
スティーヴ・マックィーン(ヴィン)七郎次+五郎兵衛
ジェームズ・コバーン(ブリット)久蔵
チャールズ・ブロンソン(オライリー)平八+菊千代
ロバート・ヴォーン(リー)オリジナル
ホルスト・ブッフホルツ(チコ)勝四郎+菊千代
ブラッド・デクスター(ハリー)七郎次+菊千代

ユル・ブリンナー以外、当時はまだそこまで売れていなかった面々が、本作で一気にスターダムを駆け上ることになったのも、やはりそのキャラクター性ゆえでしょう。

実はこの作品、基本的な設定こそ『七人の侍』と同じですが、7人のキャラクターはかなり換骨奪胎されており、さすがに志村喬扮する勘兵衛に相当するリーダー、クリスを同じスキンヘッドのユル・ブリンナーが演じていますが、それ以外のキャラクターは、リーダーの良き相棒(七郎次)、半人前のイケメン(勝四郎)、冷静沈着な剣の達人(久蔵)、子ども好き(菊千代)、粗暴(菊千代)などなど、こういった要素を『荒野の七人』では巧みにばらけさせて各キャラに割り振り、さらには新たな個性をも加味させていくことで、新たなキャラクター像を構築することに成功しているのです。

ジェームズ・コバーン扮するブリットは宮口精二扮する久蔵のキャラをかなりなぞっていますが、一方でロバート・ヴォーン扮するリーは完全オリジナル・キャラ。ブラッド・デクスター扮する金に目がないハリーも、リーダーと旧友であることや豪放に見える点以外、『七人の侍』との共通項はさほど強く感じられません。

単なるリメイクにしてやるものか!とでもいった名匠ジョン・スタージェス監督らスタッフの意気込みがうかがい知れるところですね。

『荒野の七人』4部作はクリス・アダムズのシリーズ

その『荒野の七人ですが、実はシリーズ化され、全部で4本あることをご存知でしょうか?

●1作目が好評だったことで、1966年に第2作『続・荒野の七人』が制作されています。

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※出演(役名)
ユル・ブリンナー(クリス)
ロバート・フラー(ヴィン)
ジュリアン・マテオス(チコ)
ウォーレン・オーツ(コルビー)
クロード・エイキンス(フランク)
ヴィルジリオ・テクセイラ(ルイ)
ジョーダン・クリストファー(マニュエル)

内容はユル・ブリンナー扮するクリスが再登場し、新たな7人を集結させて、またもメキシコの無法者集団と戦うお話ですが、悪の側の論理にもスポットを与えているところがミソ。

さすがに前作のスティーヴ・マックィーン(ヴィン)やホルスト・ブッフホルツ(チコ)まで再登場というわけにはいかず、かなり地味な印象を与えるキャスティングになってしまっていますが(もっとも私自身は愛してやまないウォーレン・オーツがそこにいてくれているだけで大満足ですが)、その分ユル・ブリンナーのスター性が引き立つ内容にもなっています。

監督は『夕陽に立つ保安官』(68)『大列車強盗』(72)など特にコミカル西部劇に才を発揮し、西部劇ファンの信頼も厚い才人バート・ケネディですが、この題材は彼としては少しお門違いの感もあり、良くも悪くも職人的にパート2をこなしたといった出来栄えでした。

なお、ユル・ブリンナーは本作にてシリーズを降板しますが、その後もSF映画『ウエスト・ワールド』(73)やその続編『未来世界』(76)にクリスの姿をしたロボット“ガンスリンガー”役で登場するなどのセルフ・パロディを喜々として演じています。

●1968年には第3作『新・荒野の七人/馬上の決闘』が発表。

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※出演(役名)
ジョージ・ケネディ(クリス)
モンテ・マーカム(キーノ)
ジョー・ドン・ベイカー(スレーター)
ジェームズ・ホイットモア(リーヴァイ)
スコット・トーマス(P.J.)
バーニー・ケイシー(キャシー)
レニ・サントーニ(マクシミリアーノ)

クリス役がユル・ブリンナーから『暴力脱獄』(67)でアカデミー賞助演男優賞を受賞したばかりのジョージ・ケネディにバトンタッチ。

またまたメキシコを舞台に、暴虐な政府軍に捕らえられた革命派リーダーを救出すべく、クリスらが雇われます。

監督は70年代テレビ・ムービーの雄ポール・ウェンドコス。

さすがに前2作に比べるとB級テイストになったことは否めまず、ジョージ・ケネディのタフガイ的資質もそれほど活かされているとは思えませんが、プログラムピクチュア的なラフな姿勢で接するとそれなりの楽しさを見出せる作品です。

興味深いのは、ここで黒人ガンマン(バーニー・ケイシー)が登場していることで、このあたりは『マグニフィセント・セブン』のキャスティングにも大きな影響を及ぼしているような気がしてなりません。

●1972年には『荒野の七人/真昼の決闘』が制作。
これが最終作となりました。

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※出演(役名)
リー・ヴァン・クリーフ(クリス)
マイケル・カラン(ノア)
ルーク・アスキュー(マーク)
エド・ローター(スコット)
ペドロ・アルメンダリス・Jr.(ペペ)
ウィリアム・ラッキング(ウォルト)
ジェームズ・シッキング(ヘイズ)

こちらは第1作目から10年後、保安官を務めていたクリスが妻を殺されての復讐譚に、村の女たちを群盗から護るため、かつてクリスが刑務所送りにした5人の囚人と、ひとりの記者を集めて立ち向かっていく姿が絡み合っていきます。

ちょうどヴェトナム戦争末期でアメリカン・ニュー・シネマが台頭していた時期に発表されたこともあってか、かなり殺伐とした描写が目立つ作品でもありました。

三代目クリスとなったリー・ヴァン・クリーフの陰の個性も大いに影響しているのでしょう。

監督のジョージ・マッコーワンはテレビ・ムービー中心に活躍した職人ですが、『吸血の群れ』(72)みたいなカルト・ホラー映画も発表しています。

こうしてみると、『荒野の七人』4部作は、キャストこそ変われど、主人公クリスの戦いの人生を描いたものと解釈できます。

また、回が連なるにつれてキャスティングがどんどん地味になっていくのはやむなしではありますが、むしろ当時はこういったマニアックな個性派俳優の名前と顔をいかにたくさん覚えられるか? というのも映画ファンの醍醐味になっていたようにも思われます。

それほど魅力的なタフガイが多く登場したシリーズでもありました。

●1998年から2000年にかけて、
テレビ・ドラマ・シリーズ全23話(2クール)も制作されています。

※出演(役名)
マイケル・ビーン(クリス・ララビー)
エリック・クローズ(ヴィン・タナー)
アンドリュー・カヴォネット(JD)
デイル・ミッドキフ(バック・ウィルミントン)
ロン・パールマン(ジョサイア・サンチェス)
アンソニー・スターク(エズラ・スタンディッシュ)
リック・ワーシー(ネイサン・ジャクソン)

こちらは南北戦争終結後のアメリカ南部を舞台に、ネイティヴ・アメリカンの村人たちが南軍の残党から身を護るために7人のガンマンを雇うという内容です。

各キャラは映画版第1作を踏襲、もしくは彷彿させる設定になっており、戦いが終わった後も、彼らが正義のために活躍していく様が一話完結で描かれていきました。

製作総指揮の中に、第1作のプロデューサーであり、何と半世紀以上の時を越えて『マグニフィシェント・セブン』の製作総指揮を務めたハリウッドの大プロデューサー、ウォルター・ミリッシュの名前も!

なお、ここまですべての作品に、第1作のエルマー・バーンスタインのテーマ曲が用いられています。

『マグニフィセント・セブン』とアントワン・フークワ監督

こういった流れを経て登場した『マグニフィセント・セブン』は、『七人の侍』の精神を受け継ぎながら、21世紀の現代にフィットする『荒野の七人』を作ってみたいというアントワン・フークワ監督ら作り手側の想いが見事に昇華され、さらには『荒野の七人』のみならず、その他のシリーズにも巧みにオマージュを捧げ得た快作に仕上がっています。

基本ストーリーは同じですが、今回は村から町へ、群盗から悪徳大資本家一味へと設定は変更。

では肝心かなめのキャラクター設定はどうなっているか?

※出演(役名)
デンゼル・ワシントン(サム・チザム)黒人
クリス・ブラット(ジョシュ)白人
マヌエル・ガリシア・ルルフォ(ヴァスケス)メキシコ系
イ・ビョンホン(ビリー)アジア系
イーサン・ホーク(グッドナイト)白人
ヴィンセント・ドノフリオ(ジャック)白人
マーティン・センズメアー(レッドハーベスト)ネイテイヴ・アメリカン

まさに人種のるつぼ、多国籍軍ともいえるキャスティングですが、これ以上の設定はネタバレしたくないので、ぜひともその目で確かめてみてください。

ただし今回は『七人の侍』と『荒野の七人』4部作を換骨奪胎させた見事なキャラ設定がなされていることは、お伝えしておいてよいでしょう。

時間に余裕がある方は、ぜひともそれらを予習復習した上で本作に接すると、その面白さは数倍にも跳ね上がること間違いなし(もちろん、まったく白紙で見ても十分楽しめます)。

また、中盤とクライマックスには大きなアクション・シークエンスが設けられていますが、久々に西部劇としてのガン・アクションを堪能でき、さらには人馬がダイナマイトの爆発で吹き飛ばされる危険なスタント・アクションの数々も、久々に見ることができました。

これが遺作となったジェームズ・ホーナーの音楽(サイモン・フラングレンと共同)も、エルマー・バーンスタインのオリジナル・テーマ曲をアレンジしながら、戦いのシビアさに着目した優れたものとなっています。

また本作はアントワン・フークワ監督の作品群に見え隠れする義侠心ゆえの闘いといったモチーフがもっとも好もしい形で描出されています。

フークワ作品の常連デンゼル・ワシントンやイーサン・ホークが出演していることから『トレーニング デイ』(01)や『クロッシング』(09/イーサン主演)『イコライザー』(14/デンゼル主演)がクローズアップされるのもわかりますが、今回もっともひきあいに出されるべきは、内戦下のナイジェリアを舞台に、歴戦の勇士がひとりの女にほだされて、命令違反を犯してまで難民救出に向かい、部下もまたそれに付き従うというブルース・ウィリス&モニカ・ベルッチ主演『ティアーズ・オブ・ザ・サン』(03)でしょう。

そういえば今回も、7人の猛者を集めて回るのは、悪漢どもに夫を殺された未亡人エマ(ヘイリー・ベネット)であり、ひとりの女の強固な意志が男たちを揺り動かし、運命を大きく狂わせていくという、フークワ映画のラインに巧みに沿ったものにもなっています。

また、そんな彼女の復讐心はやがて本作の大きなフックにもなっていきますが、それもまた見てのお楽しみ。

いずれにしましても、CGやアメコミ・ヒーロー映画の乱立で、もともとそういった類の映画が好きなはずのこちらですら若干ウンザリ気味といったハリウッド映画の昨今、本作は久しぶりに人間そのものの存在感で魅せる、いわば映画の原点に立ち返ったものになり得ています。

西部劇もまたアメリカ映画の原点です。

そして黒澤明、ジョン・スタージェスといった偉大なる先達に敬意を払いながら、本作はフークワ映画特有の義侠心をもって、「アメリカさえ良ければいいのだ」と言わんばかりにアメリカ第一主義を掲げて大統領に就任し、一方では数々の人種差別的発言で国内外の他民族の脅威になって久しいトランプ政権に対して一石を投じる作品になっているような気もしています。

何度でも書きますが、エンタテインメントとは、単なる面白さだけでなく、巧まずして社会的に何某かの啓蒙を与えるものだと思います。

その意味でも『マグニフィセント・セブン』は、真に優れたエンタテインメント映画であると確信しています。

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(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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