『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』はティム・バートン監督の到達点と新たなはじまりの物語!

■「映画音楽の世界」

(C)2016 Twentieth Century Fox Film Corporation.

みなさん、こんにちは。
2017年2月3日より、ティム・バートン監督の最新作『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』が公開されています。主人公ジェイク役には、劇場公開作が続々と封切られているエイサ・バターフィールド。‟奇妙な子どもたち“を守るタイトルロール、ペレグリンには『ダーク・シャドウ』に続きバートン作品への出演となるエヴァ・グリーン。そしてサミュエル・L・ジャクソンが敵役のバロンを嬉々として演じています。
今回の「映画音楽の世界」は、そんな『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』をご紹介したいと思います。

円熟のバートン節。バートン監督が守るもの

原作はランサム・リグズのベストセラー小説「ハヤブサが守る家」。森を抜けた海岸沿いに建つ洋館に住む特殊能力を持った子どもたちと、彼らを守るミス・ペレグリン。彼らと親交のあった祖父が謎の言葉を残し不審な死を遂げたことで、ジェイクは父親とともに祖父が間際に言い残した島へと旅立ちます。そこで出会ったのは、幼少期に祖父から見せられた写真から一切年齢を重ねていない奇妙な子どもたちで──。

序盤から祖父を狙った不穏で残忍な事件から一気にダークファンタジーに引き込むバートン監督。導入部から映画の核心となる謎を観客に提示し、島に住むエマら子どもたちとの運命的な出会いを見せることで、いよいよバートン監督の才気が溢れためくるめく映像美とキャラクター造形が展開していきます。

空気よりも軽いエマに触れるものすべてを燃やしてしまうオリーブ、透明人間のミラード、後頭部に第二の口を持つクレア、覆面をしたままのザ・ツインズ……。ジェイクが洋館で出会う子どもたちはバートンが実に嬉々として描きそうな‟奇妙な子どもたち“であり、能力と向き合いながらある理由からタイムリープで繰り返される1943年の9月3日をペレグリンとともに過ごしていました。やがて映画の後半ではペレグリンや子どもたちを狙うバロン、そして怪物のホローガストとの異能バトルへと展開していきます。

とにもかくにも全編バートンらしさが散りばめられた本作。今までバートン監督は自身を投影したようなキャラを愛着を持って描き、『シザーハンズ』のエドワードや『バットマン リターンズ』のペンギンなどフィルモグラフィーの前半は「異端ゆえに迫害される者」を描き、やがて『ビッグ・フィッシュ』では「迫害する者を理解する」と同時に「異端なる者を受け入れる・肯定する」というスタンスに(『ビッグ・フィッシュ』に関してはクリエイターとしてよりも1人の人間として作品と向き合った印象が強い)。

そしてついに本作でバートン監督は「異端の者たちを守る」ポジションへと立ち、自身がフィルモグラフィーとともに成長してきた証明をして見せます。それゆえに、本作はおそらくバートンが幼少から慣れ親しんだ映画へオマージュを捧げ、さらには自作のセルフオマージュも織り込んでいます。原作のある映画とはいえ、バートンが詰め込んだ映画への想い、幼少時代からの自分を客観的に見つめた映画としても、本作とのテーマ性が見事に合致しています。その辺りのバートン監督の感情も想像しながら鑑賞すると、また違った味わいがあるのではないでしょうか。

(C)2016 Twentieth Century Fox Film Corporation.

最強タッグ結成ならずも丁寧な仕上がりとなった音楽

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音楽を担当したのは、ハンス・ジマー率いるリモート・コントロール・プロダクションの一員であるマシュー・マージソンと、近年ではリモート・コントロール作品やティム・バートン監督作でサウンドエディターを務めることの多かったマイク・ハイアム。バートン作品ファンなら今回の二人の名前に「ダニー・エルフマンじゃないの?」とすぐに気付くかと思います。そうなのです。ミュージカル作品だった『スウィニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』を除いて、ケンカ別れした『エド・ウッド』以来となるノン・エルフマン作品となったのです。この辺りの事情は語られていませんが、今回ゴシップネタも聞こえてこず最初からエルフマンの名前がクレジットされていなかったことからも、あくまでスケジュールの都合ではないかと言われています。

さて、意表を突く人選となったマージソンですが、近年の活躍ぶりが目立ってきた人物で、『キングスマン』シリーズや『キック・アス』シリーズ、『イーグル・ジャンプ』などマシュー・ボーンにも気に入られている作曲家です。今回、音楽を聴いてみると無理にエルフマン色に寄せるのではなく、あくまで映像からのインスピレーションを大切にしたオーケストラ曲に仕上げています。エルフマンが持つバートン作品にどこか子どもっぽさあるとすれば、マージソンとハイアムの音楽は繊細かつ壮大。特にオーガスタ号が浮上するシーンの音楽[Rising The Augusta]はこの映画での最も大きな聴きどころで、コーラスも加わっての高揚感を高める力強いフレーズが用意されています。

また、面白いのはバートンがレイ・ハリーハウゼンにオマージュを捧げたと思われる遊園地でのバトルシーンでの音楽。[Handy Candy]と名付けられたギンギンのクラブ系サウンドが、ストップモーションのレトロな雰囲気を醸し出した映像と真っ向勝負? を見せているので、バートンとマージソン、ハイアムの思いきった遊び心が楽しめる名場面となっています。

(C)2016 Twentieth Century Fox Film Corporation.

まとめ

その独特の世界観、作風から多くのファンを持つティム・バートン監督。前述のように、これまで「迫害を受ける異形の者」たちへの愛を詰め込み、『ビッグ・フィッシュ』では自身の人生観をも映画に重ね合わせた転換点となり、その想いを汲み取った観客の涙を誘いました。異形の者の1人だったバートン監督がやがて親になったことで過去の自分を受け入れ、そして異形の者たちを守る立場となったのが本作『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』なのです。もはや円熟の領域に達したティム・バートン監督。彼が描く世界観を、ぜひとも堪能してください。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)

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