『エルストリー1976』は、『スター・ウォーズ』脇役俳優たちの生きざまから人生の機微がうかがえる!

■「キネマニア共和国」

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(C)ELSTREE 1976 LIMITED, 2015

現在シリーズ第1作『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望の希望』(77)の前日譚となる『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が絶賛公開中ですが、その傍らで、静かに、しかし熱く、1976年の夏、イギリスのエルストリー・スタジオでの第1作の撮影に参加した俳優たちのドキュメンタリー映画『エルストリー1976-新たなる希望が生まれた街-』が公開されています……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.187》

この作品、何と登場するのは第1作の脇役やちょい役、そしてエキストラばかりなのでした!

内容もろくに知らぬまま
撮影に参加した人々のその後

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(C)ELSTREE 1976 LIMITED, 2015

みなさんご承知のように、映画には多数の人間が携わりながら製作されていくわけですが、その出演者も主役や助演クラスのスターだけでなく、台詞がほんの一言しかない者もいれば、撮影してもシーンごとカットされる者もいれば、ちょっとした縁でエキストラに参加した者もいたりします。

『エルストリー1976』とは、そんな感じで『スター・ウォーズ』にほんのちょこっと出演した人たちの、その後を追ったドキュメンタリー映画なのです。

おそらくこの作品、『スター・ウォーズ』のディープなファンであればあるほど狂喜できることでしょう。あのシーンの端っこで叫んでた人とか、戦闘機X-Wingのコクピットに座ってたパイロットとか、宇宙酒場の中で特殊メイクして出ていたおねいさんとか、知る人ぞ知るマニアックなキャラクターが多数登場します。

しかし、ライトなファンにはちんぷんかんぷんというか、「そこまで覚えてないよ!」といったシーンにしか出ていない、当然名前も知らない役者さんばかりでもあります。

一番有名なのは、ダース・ベイダーの中に入っていたデヴィッド・プラウズかなあ……(日本での劇場公開当時、彼のインタビュー記事が『ロードショー』などの映画雑誌に掲載されたのを覚えています)。

また、ボバ・フェッドのような人気のあるキャラクターにしても、その中に入っていた人がジェレミー・ブロックという俳優であることを知る映画ファンが、果たしてどれだけいることでしょう?(でも、世界レベルで数えてみると、これが意外に多かったりするわけです)

本作の監督ジョン・スピラは、そんな彼らを探し当て、インタビューを試みていきます。

実際のところ、彼らは当時『スター・ウォーズ』という作品の内容もよく知らされないまま、単なる“お仕事”として数日ほど撮影に参加したという、ただそれだけのことなのでした。

結果として、まさかあれほどの大ヒット映画になるとは誰も思っていませんでしたが、それで別に彼らの人生が大きく変わるとか、そんなことはありませんでした。
(逆に、もしデヴィッド・プラウズがダース・ベイダーの声まで担当していたら、彼の俳優人生は大きく変わっていたかもしれません。『スター・ウォーズ』は撮影こそイギリスでしたが、アフレコなどのポストプロはアメリカのスタジオで行われ、イギリス在住のプラウズを渡米させるのではなく、アメリカ在住の俳優ジェームズ・アール・ジョーンズに声を任せることになったのです)

コンベンションでリスペクトされていく
脇役俳優たちの凱歌

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(C)ELSTREE 1976 LIMITED, 2015

ところが、さすがは世界的人気を得たシリーズ作品、各地で開催される『スター・ウォーズ』コンベンションに、ほんのちょっとしか出ていない彼らまで招かれるようになっていくのです。

それぞれ「なぜ、スターでもない、ほんの少ししか出ていない自分が?」と半信半疑で会場に赴くと、そこはサインをねだるファンであふれかえっていたのでした。

やがて彼らはコンベンションの常連となり、ファンとの交流を深めていきます。

年老いて事実上引退している人などには、とても嬉しい老後のプレゼントにもなっていきます。

しかし、ここでまた興味深いのは、脇役とはいえ俳優という職業の誇りのもとで出演した人々と、エキストラ的な立場や、そういった意識で出た人たちとの間で確執が生じていくところで、人間とは何とも難しい生き物か……。

このように本作は、『スター・ウォーズ』という1本の作品にほんの少しだけ関わった者たちの人生を浮き彫りにしていきます。

大ヒット作に出たからといって、彼らのほとんどは俳優として大成したわけではありませんが、かといってそんなにひどい道のりを歩んだ人もいなさそうです(事業に失敗した人とかは出てきますが)。

そんなに成功もしなかったけど失敗もしなかった、ごく普通の人生を過ごしてきた人々。しかし『スター・ウォーズ』という作品は、彼らにほんのちょっとだけ後々の生きる喜びを与えてくれた。そんなささやかな奇跡と一抹の空しさ、そして大いなる人生讃歌の映画として、『スター・ウォーズ』にさほどの思い入れのない人でも、これはきっと楽しめることでしょう。

そしておそらく、映画館を出るや否やDVDレンタルもしくはショップに駆け込み、『スター・ウォーズ』を見直したくなってしまうことでしょう。

そして、さらには『ローグ・ワン』を見に行きたくなってしまい、いざ鑑賞したころにはすっかり『スター・ウォーズ』の虜になってしまっている……!

この循環こそ、『スター・ウォーズ』が壮大なるサーガである所以なのでしょうね。

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(文:増當竜也)
 

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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