おっさんたちは、なぜ「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」を見て、むせび泣くのか?

■「役に立たない映画の話」

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

(C)2016 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

最初の「スター・ウォーズ」を1年待って見た世代としては・・。

先輩 というわけで、「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の話題なんだけど、思い出すだけで、もう・・・。

後輩 最初から泣かないで下さいよっ!!

先輩 いやあ、いい映画だった! まさかファルコン号もハン・ソロもルークもヨーダも出てこない、ましてやジョン・ウィリアムズが音楽を書かない、オープニングでも文字が吸い込まれていかない。そんな「スター・ウォーズ」のスピンオフを見て、こんなに泣けるとは・・!!

後輩 そんなに良かったですか?「ローグ・ワン」。

先輩 君のような若輩者には、分からないかもしれないなあ。オレたちは、最初の「スター・ウォーズ」を1年待って見た世代だから、思い入れもひとしおってもんで。「スター・ウォーズ」を今まで見て来て、本当に良かった!!!

後輩 叫ばない!!

先輩 とは言うものの、オレも初日のユナイテッド・シネマとしまえんでIMAX 3Dバージョンを鑑賞した時、場内のほとんどがおっさんで、しかも上映終了後、そのおっさんたちの何人かが散発的な拍手をした。あの光景を見て、我に返ったね。でも帰宅して限定版バンフ読んでいたら、涙が・・・。

後輩 確かに「スター・ウォーズ」シリーズを見て泣けるってことは、今までなかったですからね。

先輩 逆に怒ることはあったぞ(笑)。ジャー・ジャーのヤツ、ぶっ殺してやる・・・!!と(笑)。

後輩 なんでそんなに泣けるんですか?若輩者の僕には、今ひとつ分からないんです。

先輩 「ローグ・ワン」に描かれた、デス・スターの設計図を奪取するスパイたちの話は、1978年に日本公開された「スター・ウォーズ」・・今は「エピソードⅣ/新たなる希望」と呼ぶらしいが・・この中に台詞だけで語られていたんだよ。そのわずかな台詞からも、反乱軍がデス・スター攻撃を決めるまでに色々なことがあり、犠牲も伴ったのだということが伺えた。それが今、ようやく1本の映画になった。これはうれしかったなあ。全然関係ないストーリーを、「スター・ウォーズ・ストーリー」として作るとしたら、それはわしらの世代としては受け入れがたい。

後輩 それで「今まで『スター・ウォーズ』を見てきて良かった!!」という発言に繋がるんですね。

先輩 うん。例えて言うならば、巨大なジグソウパズルのピースがまたひとつ、ハマった感じ。でもまだ完成はしていない。

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 007

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結末が分かっているのに、爽快感と開放感がある作風。

先輩 君はまさか、「スター・ウォーズ」をエピソードⅠから見ていったんじゃないだろな?

後輩 それはありません。小さい頃、「特別篇」3部作を見たのが、最初の「スター・ウォーズ」体験かな。ですからエピソードⅣ~Ⅵを見て、その後でⅠ~Ⅲを見ました。そして昨年末に「フォースの覚醒」と。ご安心下さい。

先輩 で、君から見て、どうなんだ?「ローグ・ワン」の評価は。

後輩 正直言って、期待を裏切られました。ただしそれは良い意味で。凄く爽快感と開放感のある話でした。

先輩 開放感って?

後輩 だってこの話って、最後が決まっているじゃないですか。デス・スターの設計図を入手するのと引き替えに、6人のならず者たちはみんな絶命する。その悲劇的なラストに向かってストーリーが展開する、この構造はエピソードⅠ~Ⅲと一緒じゃないですか。

先輩 確かにそうだ。エピソードⅠ~Ⅲはアナキンがダース・ベイダーになっていく話だからな。パルパティーンを除いて、皆が不幸に向かっていくプロセスを、3本もの映画で描いている。最後が分かっているだけに辛いし、息苦しさもある。映画全体の雰囲気もね。

後輩 ところが「ローグ・ワン」では、最後がどうなるか分かっているのに、とても開放的で、その宿命をすんなりと受け入れてしまう。

先輩 ローグ・ワンの皆が死ぬわけだから、悲しいことには違いないが、その死を誰もが受け入れる。その代償が希望として、しっかり手渡されるわけだからね、彼女に。

後輩 自己犠牲ですよね。

先輩 その理由として思い当たるのは、キャラクターを新しいメンツにしたからだと思うな。ローグ・ワンのメンバーは、皆組織に属さないタイプの、ならず者ばかり。そんなヤツらが無謀な行為をするのだから、生きて帰れる保証は何も無い。でももしかしたら、こいつらだったら・・という希望もある。それだけこのキャラクターが魅力的だったし。

後輩 「誰かひとりぐらい生き残るかも。我々が知っている歴史と、これは別の次元の話では?」と、僕も映画を見ながら思いました。でもやっぱり、歴史は変わりませんでしたが。

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー

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ギャレス・エドワーズ監督作品としての評価は?

先輩 こないだある人と言ってたんだけど、ギャレス・エドワーズ監督って、上手なのか下手なのか分からないねって。「モンスターズ」を撮ったことで、トーマス・タルから「GODZILLA/ゴジラ」を監督する機会を与えられた。それは分かるけど、「モンスターズ」ってそんなに面白い映画かよ?

後輩 うーん・・・確かに。むしろ「GODZILLA/ゴジラ」のほうが出来は良いように感じますね。

先輩 今度の「ローグ・ワン」だって、全体の4割をトニー・ギルロイがリテイクしたというから、この作品がどの程度ギャレスの意向に沿っているかは疑問なんだよ。

後輩 確かにそうですね。じゃあ「ローグ・ワン」は誰の作品なんでしょうか?

先輩 あえて言うならば、ディズニーのだな。ディズニー・グループの商品として作られたわけだから。作品という意味で捉えるならば、ルーカスフィルム社長のキャスリーン・ケネディのものだよ。

後輩 そういうものでしょうか?

先輩 プロデューサーが若い監督を抜擢する目的は、まず自分の意向に忠実に作品を作らせたいから。これは間違いない。特に製作規模が大きくなればなるほど、プロデューサーの権限は拡大していく。映画製作の常識だよ。

後輩 監督としての権限は、その分縮小していくんですか?

先輩 必ずしもそうじゃないけど、条件がつくだろうよ。プロデューサーの言うことには従うこととか。まあ商業映画を撮っているのならば、当たり前のことだよ。ファイナル・カット権はプロデューサーが持つわけだし。無名に近い新人監督を抜擢して大作を任せるというサクセス・ストーリーも理解出来るけど、それは二の次三の次だ。

後輩 ギャレスが「GODZILLA2」の監督を降板したのも、そういうことがあったからでしょうか?

先輩 本人に聞かないと実態は分からないけど、「GODZILLA/ゴジラ」「ローグ・ワン」とハイ・バジェットの映画が続いたから、そういう環境に疲れたんじゃないかな? 例え製作規模は小さくても、もっと自分の思うままに映画を撮りたくなったんだと思うなあ。それは映画監督として、極めてまっとうな考えさ。

後輩 とにかく「ローグ・ワン」はリテイクがあったとしても、優れた映画になったことは間違いありませんし・・。

先輩 そのためにリテイクした、というとらえ方も出来るぞ。だったらこの判断は正しかったんだろうな。映画館でおっさんが、これまでの自分と「スター・ウォーズ」との関わりを回顧してむせび泣く。そういう「スター・ウォーズ」があっていい。スピンオフなんだから。

後輩 次はライアン・ジョンソン監督の「エピソードⅧ」で、その次にスピンオフの第二弾で、今度は若き日のハン・ソロを描くそうですね。

先輩 「ローグ・ワン」が悲しい作品になることは、避けられなかったと思うけど、ハン・ソロの若き日を描くのならば、笑いの要素もあるんじゃないかな。今度は「楽しく、笑えるスター・ウォーズ」を見せてもらいたいものだね。

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永遠のレイア姫=キャリー・フィッシャー。

後輩 もうひとつ。「ローグ・ワン」が泣ける理由というか、要素があるんですが、このことはラストの描写に関わっているので、さすがにそれは明かせない。でも、「スター・ウォーズ」シリーズにとって、大きな出来事が最近起こりました。それは、レイア姫を演じたキャリー・フィッシャーが60歳で亡くなったことです。

先輩 このことに関しては、泣けるとかそういうレベルではなく、衝撃で言葉も出ない。ただただ唖然、愕然とするばかり。

後輩 レイア姫は、彼女以外には考えられませんからね。

先輩 最初の「エピソードⅣ/新たなる希望」から「ジェダイの帰還」までの初期3部作でレイアを演じ、昨年の「フォースの覚醒」で再登場。これには興奮したなあ。ルークも、ハン・ソロもレイア姫も健在だ! そう思っていたのに・・・。

後輩 「エピソードⅧ」の撮影は、既に終了していたそうですが、大団円となる「エピソードⅨ」には出演出来ません。つまり劇中で死亡したハン・ソロと、レイア姫不在の「スター・ウォーズ」にならざるを得ない。

先輩 そういう状況を、新しい製作陣、若い監督たちがどうカバーし、ストーリーの中に盛り込んでいくか。これに期待したいね。なんたって彼らは「スター・ウォーズ」シリーズを見て育った、いわばスター・ウォーズ・チルドレンだ。ジョージ・ルーカスの志を引き継いでいるはずだ。

後輩 キャリー・フィッシャーさんのご冥福を、心からお祈りしたいと思います。

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(企画・文:斉藤守彦)


    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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