『ザ・フォーリナー/復讐者』はジャッキー版『ランボー』!傑作となった「3つ」の理由

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昨年公開された『ポリス・ストーリー/REBORN』でも、我々観客が期待する迫力のアクションを披露してくれた、永遠のアクションスター、ジャッキー・チェン。

そんな中、彼の最新作となる映画『ザ・フォーリナー/復讐者』が、いよいよ5月3日から日本でも劇場公開された。

製作年的には2017年度の作品なのだが、今回はいつもの明るくユーモラスなジャッキーのイメージとは違い、娘の復讐に全てを賭ける孤独な男を演じているだけに、かなりの期待をもって鑑賞に臨んだ本作。

ただ残念ながら公開館数が少ないためか、初日は予約段階でほぼ全回が満席…。何とか公開二日目の最終回で鑑賞できたのだが、果たしてその内容と出来はどのようなものだったのか?

ストーリー

元特殊部隊の工作員だった、クァン・ノク・ミン(ジャッキー・チェン)は、現在はロンドンでレストランのオーナーとして静かに暮らしていた。
そんなある日、クァンの高校生の娘ファンが爆弾テロに巻き込まれ、彼の目の前で犠牲となってしまう。
娘の復讐に燃えるクァンは、かつてIRAの活動家だった北アイルランドの副首相リーアム・ヘネシー(ピアース・ブロスナン)にコンタクトを取り、犯人の名前を教えるように迫るが、事件と無関係だと主張する彼は、クァンを追い返してしまう。娘の復讐のため、独自の捜査を開始したクァンはリーアムを執拗に追跡。次第に緊迫感を増していく、クァンと北アイルランド政府、そしてIRA組織との三つ巴の闘いの行方は?

予告編

理由1:笑顔とコメディ要素を封印したジャッキーが凄い!

全盛期を彷彿とさせる高所アクションや、コメディ要素満載の内容で楽しませてくれた昨年の『ポリス・ストーリー/REBORN』でも、娘との悲しい過去を胸に巨大な悪に挑む男を演じたジャッキー・チェン。

ポリス・ストーリー/REBORN(字幕版)

いつまでも変わらず、素晴らしいアクションをスクリーンで披露して欲しい! そんな観客の願いに応えるかの様に、数々の傑作を世に送り出してきたジャッキーだが、1992年に発表されたスティーブン・レザーの小説「チャイナマン」を原作とする本作では、ジャッキーの実年齢に近いリアルな役柄での復讐劇が展開するためか、これまでジャッキー映画のトレードマークだったコメディ要素や笑顔を完全に封印!

そのため、確かに昔から彼の主演作を追いかけてきたファンにとって、本作中のジャッキーの姿は想像以上に彼の実年齢を感じさせるものであり、往年のイメージ通りの明るくユーモラスなジャッキーを期待して鑑賞に臨むと、若干の違和感や驚きを覚えるかも知れない。

だが、単なるアクションスターに止まらず、演技派俳優ジャッキー・チェンとして新たな役柄に挑戦するその姿は、本作中の優しい父親が悲しみの中で最強の復讐者へと変貌する展開に、確かな説得力を与えてくれているのだ。

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祖国を捨ててイギリスへ渡る途中、海賊の襲撃で娘二人を失い自分も銃撃を受けた主人公のクァン。新天地のロンドンで新たに授かった娘との平和な暮らしを手に入れるが、突然の爆弾テロが最愛の娘の命を奪ってしまう…。

娘が何故犠牲になったのか? 事件の真相と犯人逮捕への執念が、次第にクァンを過激な行動へと駆り立てていくことになるが、自身の人生の全てだった娘の死を受け入れられず、犯人不明のまま娘の存在が忘れ去られてしまうことを恐れる父親の心情を見事に表現するジャッキーの演技は必見!

日本版ポスターの印象的な宣伝コピー「いま、孤独が最強となる。」が象徴する通り、全ての家族を失った主人公が単身で国家権力に迫っていく様子は、正にジャッキー・チェン版『ランボー』と呼びたいほどの、孤独で悲壮感漂う戦いの連続となっている。

もちろん、特殊部隊時代の技術と経験を駆使して危険を恐れず事件の核心に迫っていく主人公の姿は、絶望と悲しみに押しつぶされることを拒む程の迫力に満ちているので、きっとファンの方にもこのジャッキーの新たな役柄への意欲を感じ取って頂けるはずだ。

これからも更に続くであろう、映画人ジャッキー・チェンの新たなスタートを予感させる作品なので、全力でオススメします!

理由2:二大アクション映画スターが、遂に夢の競演!

本作でジャッキーと対決する、北アイルランドの副首相ヘネシーを演じるのは、なんとあの5代目ジェームズ・ボンドことピアース・ブロスナン!

しかも物語の舞台がロンドンということで、どうしても007対ジャッキーの夢の対決! を連想してしまう本作。

更に監督が、本家『007 ゴールデンアイ』『007 カジノロワイヤル』のマーティン・キャンベルとくれば、観る前から派手な見せ場やアクションを期待してしまうのも無理は無いというもの。

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だが、意外にも本作は派手な見せ場やスタントシーンの連続ではなく、無差別テロの巻き添えとなった娘の無念と自身の心の喪失を埋めるかの様に、執拗に権力に立ち向かう男の挑戦を中心に描かれていた。

もちろん、主演のジャッキー・チェンの実年齢を考慮した点も大きいのだろうが、アクションによる見せ場を越えたその先にある、主人公の内面や感情の爆発によって観客の心が動かされる展開は、正にこれまでジャッキーが積み重ねてきた演技経験とキャリアの裏付けがあればこそ!

『007』シリーズという、欧米の一流アクション映画の主演俳優と共演しても、全く演技や存在感の面で引けを取らないジャッキーの成長ぶりを目撃することこそ、長年彼の映画を追いかけてきたファンにとっての最優先事項と言えるだろう。

未見の方や鑑賞を躊躇されている方も是非劇場に足を運んで頂いて、ジャッキーの役者としての成長を目撃して頂ければと思う。

理由3:深い怒りと悲しみを越えたラストが泣ける!

過去のジャッキー作品の様に、敵を直接対決で倒して復讐が完結! という単純な図式では描けなくなってきている、現代の世界情勢。もはや勧善懲悪では割り切れない、その複雑な政治的駆け引きを象徴するかのように、本作のラストは非常に深い余韻を残すものとなっている。

娘の命を奪った爆弾テロの、本当の犯人や原因とは何なのか?

その核心に近づけば近づくほど、次第に巨大で複雑な権力構造を相手に戦うことになるクァン。

一見、主人公の復讐を描いたアクション映画に見える本作だが、クァンが選択したラストの行動にも明らかな様に、敵の命を奪うことで新たな犠牲者や悲しみの種を植え付けるのではなく、無差別テロによる悲しみや復讐の連鎖を断ち切る勇気と、深い悲しみと喪失の中にいてもなお自分の帰るべき場所があることがいかに幸せか、そんな大切なことを観客に教えてくれる本作。

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無差別テロによって引き起こされた復讐の連鎖から、どうやってクァンは抜け出すのか?

孤独な復讐者の悲しみを癒し彼を再び人間に戻すものは、やはり”無償の愛”しかないことを我々観客に教えてくれるラストこそ、本作が近年のジャッキー主演作品の中でも傑作と断言できる大きな理由となっている。

思い返せば、自分のごく身近にいた女性が実は密かに想ってくれていたという展開は、昨年の『ポリス・ストーリー/REBORN』でも成功しており、現在のジャッキーの年齢でも十分にラブストーリー要素を盛り込めることを証明する、実に秀逸な発想と言えるのだ。

幸せを奪われ続けた男が最後に得たささやかな幸福は、実は娘の死を乗り越えなければ得られなかったもの。

先の見えない絶望の中にも、確かに希望があることを我々に伝える本作の見事な結末は、女性観客にこそ是非観て頂きたい名シーンなので、全力でオススメします!

最後に

突然の爆弾テロによって最愛の娘を失った悲しみと、実行犯への復讐の炎を胸に犯人を追いつめる男を、今回過去のイメージを封印して見事に演じきったジャッキー・チェン。

確かに近年は、実年齢に近い生活感の漂う役柄や、娘を持つ父親など、アクション主体の作風からの脱却を図る作品が次第に多くなっていった感が強い。

そんな試行錯誤の中、どうしても全盛期の様なアクションを期待する観客と、実年齢を反映した新たな役柄に挑戦しようとするジャッキーとの間にあったギャップが、この『ザ・フォーリナー/復讐者』でやっと解消されたのではないか? 本作鑑賞後、個人的にそんな考えが頭から離れなかった。

仮にも副首相に対して、「娘の命を奪った爆弾テロ実行犯の名前を教えろ」と、執拗に訪問を続けるクァンの行動は、確かにその心情には共感・同情できるが、若干常軌を逸した行動と取られても仕方がないもの。

それに加えて、元特殊部隊の工作員という設定や森の中の戦闘などから、映画『ランボー』の主人公と重なる今回のジャッキーの役柄だが、本作を観て思い出したのが、水谷豊が監督・脚本を務めた5月10日から公開中の新作映画『轢き逃げ -最高の最悪な日-』だった。

実はこちらの作品も、一人娘を突然の轢き逃げ事故で失った父親が、事件の真相を突き止めるために執念の独自捜査を行うという内容なのだ。

©2019映画「轢き逃げ」製作委員会

しかも終盤に意外なスタントシーンも用意されている上に、この父親が執拗に警察や容疑者の前に現れるなど、正常な判断ができないほどの人生の悲しみを味わった男の姿には、本作でのジャッキーの姿がダブって仕方がなかった。

時間とお金に余裕がある方は一度両者を見比べて頂くと、より面白い発見があるかも知れない。

ちなみに『ザ・フォーリナー/復讐者』では、恒例のエンドクレジットでのNG集が無いので、鑑賞後の余韻を損なわずにすむのもファンには嬉しいところだ。

これまで築き上げてきたアクションスターとしてのイメージを覆し、観客の心を動かす見事な演技を見せてくれたジャッキー・チェン。

アクションと演技、この両方を武器に今後も新たな挑戦を続けてくれるに違いない、彼の映画人生を見届けていくためにも、まずは劇場で鑑賞するのがオススメです!

(文:滝口アキラ)

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