『ザ・ウォーク』は絶対に3Dで見るべし!

■「キネマニア共和国」

ザ・ウォーク walk_main_large

ロバート・ゼメキス監督の最新作『ザ・ウォーク』がいよいよ全国公開されます。既にご承知の方も多いとは思いますが……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~》

これぞ昼飯代を抜いてでも、3D(立体視)で絶対見るべき映画なのです!

超高層ビル屋上間の綱渡りを敢行した
男の狂気を3Dで!

『ザ・ウォーク』は、1974年にニューヨークの超高層ツインタワー・ビル、ワールドトレードセンターの屋上に1本のワイヤーを張って命綱もつけずに綱渡りした男の実話を基に作られたもので、この事件(?)の全貌を描いたドキュメンタリー映画『マン・オン・ワイヤー』もかつて話題を集めましたがありますが、本作は主人公の深い内面などに肉薄することよりも、男の行動そのものを追うことで、ある意味狂えるエンタテインメントとしての見事な見世物映画として屹立していますし、またそのための3Dです。
前半こそ主人公がミッションに挑むまでの姿を淡々と描いていて、特に立体視としての面白みは感じられませんが、いざビルの屋上に上ってからの諸描写(地上から411メートルの高さ!)は、高所恐怖症ならずとも悲鳴を上げるか眩暈をおこして気絶するかといったサスペンス、まさに宙づりの恐怖をスリリングに味わうことができるのです。

この狂った世界を2Dでしか見ないのは、あまりにももったいなさすぎる!

技術とハッタリと狂気を
融合させたゼメキス監督の真骨頂

思えばロバート・ゼメキス監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ(85~90)はもとより映像技術の進化を見越しながらの映画制作に秀でた映画人で、アニメと実写を融合させた『ロジャー・ラビット』(88)や記録映像のケネディ大統領とトム・ハンクスを会談させた『フォレスト・ガンプ 一期一会』(94)など、その最たる例ですが、そんな彼が3D=立体視に着目していくのも当然の帰結だったような気がします。

『アバター』(09)の大ヒットによって3D映画はジェームズ・キャメロンが牽引している印象がありますが、実際はそれ以前にゼメキスが『ポーラー・エクスプレス』(04)『ベオウルフ/呪われし勇者』(07)『クリスマス・キャロル』(09)と3Dによるアニメーション映画を立て続けに発表し続けており、本来なら彼こそ3D映画の推進に大きく貢献してきた人物と讃えてよいのではないでしょうか。

また、ゼメキス監督作品はキャラクターであれ設定であれ、総じて良い意味でのハッタリ感を際立たせる傾向があり、それはスティーヴン・スピルバーグ監督作品『1941』(79)の脚本からして彼ならではのガチャガチャ感が伝わってきますし、『永遠に美しく…』(92)のおぞましき美醜の特撮処理や、『ホワット・ライズ・ビニーズ』(00)や『フライト』(12)では、主人公そのものがハッタリに満ちた狂える人物でした。
(狂気というのもゼメキス映画を紐解く大きなカギの一つではありますね)

こうした軌跡を経て、ロバート・ゼメキス監督初の実写3D映画『ザ・ウォーク』は、彼ならではのハッタリズムと狂気、そして映像技術への目くばせなどが見事に融合した、良い意味での見世物映画になっていると思います。
(本作の試写を見終えた後、あるベテラン映画評論家が「こんなのただの見世物だ」と怒っているのを見かけましたが、この人は一体映画に何を求めているのだろう? と哀れに思えてなりませんでした)

後半、いよいよ綱渡りを始める主人公に対して、おそらく誰もが「なぜこんなことをやっているんだ?」と思うことでしょうが、そんな主人公の狂気をエンタテインメントと容認してしまう我々観客もまた常にどこか狂えるものを求めているのかもしれません。

高低差411メートルの狂気を、ぜひ立体視で楽しんでください。

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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