映画コラム

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2015年05月28日

RADWIMPS 野田洋次郎がすべて英語で!『トイレのピエタ』日本外国特派員協会での記者会見レポート

RADWIMPS 野田洋次郎がすべて英語で!『トイレのピエタ』日本外国特派員協会での記者会見レポート

編集部公式ライターの大場ミミコです。

2015年5月27日、日本外国特派員協会(通称;外国人記者クラブ)にて映画『トイレのピエタ』の試写会および記者会見が行われました。場所が場所ということで、集まったのも外国人の方が多く、やりとりも英語で行われるという非常にレアな記者会見となりました。

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登壇したのは松永大司監督、主役の宏を演じた野田洋次郎さん(RADWIMPSボーカル)、ヒロイン・真衣の衣装である制服を着た杉咲花さんの3人。そこに司会の外国人女性と、通訳の日本人男性が加わって会見がスタートしました。

「My name is Yojiro Noda.」

野田さんの流暢な自己紹介を皮切りに、会場は英語とシャッター音に包まれました。ネイティブ並みの発音で、淀みなく作品の背景を紹介する野田さん。その英語力と凛とした佇まいに、会場のあちこちから称賛の溜息が漏れました。

野田「本日は皆さんお集まりいただきありがとうございます。皆さんにお会いでき、とても嬉しいです。松永監督が、手塚治虫さんの日記にインスパイアされ、この映画を企画してから約10年が経ちました。演技の仕事は初めてだったのですが、素晴らしい才能をお持ちの方々とご一緒させていただき、非常に光栄に思っています(会見では英語。通訳されたものを記事化)」

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野田洋次郎さんと英語について


主役・宏を演じた野田さんは、若者に大人気のロックバンド『RADWIMPS』のヴォーカル&フロントマンを務めてらっしゃいますが、その歌詞には良く英語が使われます。さらに野田さんは『illion』という名前でソロ活動をされており、こちらの楽曲はほぼ英語で構成されています。illionの初アルバム『UBU』は、イギリスなど世界9カ国でリリースされ、ライブも各国で大成功を収めました。

日本人でありながら、英語で詩を書き、英語で歌う野田さん。そのルーツは、彼の幼少期に遡ります。実は野田さん、6歳〜小学4年までの時期をアメリカで過ごしており、イギリスのモンスターバンド『OASIS』の影響を受けて育ちました。そして自らも世界を相手に表現活動をすると決心し、英語を猛特訓して身につけたという経緯をお持ちです。今回、日本外国特派員協会で会見が行われたのは、このような背景があってのことかもしれません。

また『トイレのピエタ』という映画自体も、とても繊細で美しいストーリーと映像を湛えた作品ということで「第16回全州(チョンジュ)国際映画祭」や「2015台北映画祭」に招待・出品されています。世界レベルで評価される秀作という点も、海外の方に向けた場での会見となった理由として挙げられそうですね。

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ドキュメンタリー出身の松永監督


野田さんによる英語の挨拶のあとは、質疑応答タイムとなりました。まずは、松永監督の作品を全て鑑賞している日本人女性の方から質問があがりました。

質問「今までずっとドキュメンタリーで、このたび初めてのストーリードラマとなりましたが、今後はドキュメンタリーとドラマと、どちらにフォーカスしていきますか?」

その問いに対し、松永監督は次のように語りました。

松永「ドキュメンタリーからスタートした映画活動ですが、僕という作家性にとても大きく影響していると思います。今回も映画を撮る上で、ドキュメンタリー的な雰囲気の作品にするつもりでした。これからも、1本でも多くの映画を作っていきたいと考えてはいますが、ドキュメンタリーの撮影は非常に大変です。1ヶ月2ヶ月という期間では、とてもじゃないけど出来ません。ただ、自分が表現したいものにはじっくり取り組んでいきたいので、長いスパンでドキュメンタリーを撮りつつ、フィクションの長編を作っていけたら有難いです」

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「艶っぽい」…野田洋次郎と杉咲花を起用した経緯


次の質問は、外国人男性によるもので「デビュー作でこんなに素晴らしいものが撮れる事に驚きました。どうしたらこのような作品が撮れますか?」という内容でした。

松永「まずはキャスティングです。主役をどうするか、プロデューサーと何度も打ち合わせました。そのうち、ミュージシャンにオファーしてみたいという話になり、主人公の年齢である28歳くらいのミュージシャンをリストアップしました。その中で、野田洋次郎という人間の創り出す世界観、そしてライブの映像を見た時に、とても艶っぽくて色っぽいと思ったんです。そして何より、僕の描きたい『生きる』『死ぬ』というテーマと共感する歌を歌っていたので、宏役は野田君しかいない!と思いました」

もう1人の主人公、真衣を演じた杉咲花さんのキャスティングについて、松永監督は次のように語りました。

松永「この映画は、宏と真衣…2人が主人公だと思っています。大切な役どころである真衣を演じる女優を決めるのに、1年に渡ってオーディションをさせていただきました。その中でも、杉咲花の芝居は凄かった。
そして最後のオーディションに野田君を呼んで、それぞれとエチュード(即興劇)をやってもらったんです。その時の杉咲さんの変化、そして野田君との共鳴が素晴らしく、この2人でやりたいと決意しました」

「終わっても役が抜けない」女優・杉咲花の天才性


続いて、子役出身でもある杉咲花さんへの質問が投げかけられました。

質問「このたび長編映画で初主演されたとのことですが、実際いかがでしたか?」

杉咲「オーディション期間中に脚本を読ませていただき、興味本位で真衣を演じたら凄く面白くて、ずっと真衣を演っていたいと思いました。オーディションで何度も脚本も読んでいたし、役作りはできていると、自信を持ってリハーサルに臨んだのですが、監督に『ぜんぜん違う!』と言われてしましました」

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はにかんだ表情の中に当時の悔しさを覗かせつつ、杉咲さんはこう続けました。

杉咲「でも野田さんは、初めてリハーサルをした時から完全に『宏』になっていました。その一方、出来ていない自分が悔しくて…。そこから役を作り直して、真衣の登場シーンを何度も何度も演りました。演技を重ねること1時間、やっと監督が『真衣を掴んだね』と言って下さいました。そこから松永監督についていく自信がついたし、撮影期間中はずっと、野田さんとは“宏と真衣の関係”で居られました。そのせいか、撮影が終わった後も1ヶ月ぐらいは、真衣の役が抜けずに大変でした」

俳優・野田洋次郎の今後はいかに?


一方、主役を演じた野田洋次郎さんには「今後も芝居を続けるのか?それとも音楽一本に絞るのか?」という質問がされました。その問いに野田さんは、流れるような英語で答えて下さいました。

野田「今回、役者としてオファーをいただいた事は、非常に大きな出来事でしたし、全く後悔していません。とても素晴らしい経験をさせていただき、正しい決断だと感じています。今後、そういったお話が来れば考えますが、現在は特に具体的な企画やオファーが無いので何ともいえません。ピンと来たらやるかもしれないし、やらないかもしれない。その時になってみないと解りません(会見では英語。通訳されたものを記事化)」

発言の途中、野田さんの英語スキルの高さに触れた司会女性が、感嘆の声を上げていたのも印象的でした。

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松永監督のテーマソング「威風堂々」


集まった外国人の方からは、こんな変わった質問も飛び出しました。

質問「作品の中で、宏が2回ほど鼻歌で歌っているのは何の曲ですか?日本の国歌『君が代』のようにも聞こえますが」

松永「宏が歌っているのは『君が代』ではなく『威風堂々』という行進曲です」

質問「なぜ『威風堂々』なんですか?」

松永監督「タイトルですね。学生時代から『威風堂々』というタイトルの響きが好きでした。映画『トイレのピエタ』は僕自身の投影で、生きてきたすべてを封じ込めた作品だと思っています。人生で辛い時、試練に打ち勝ちたい時は、心の中に『威風堂々』を流していました」

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なるほど。筆者もなぜ『威風堂々』を選曲したのか疑問だったのですが、このような理由があったのですね。また、以前の記事でも書きましたが、『威風堂々』を劇中に2回(冒頭と終盤)、鼻歌で歌わせる意味についても次のように語ってらっしゃいました。

松永「冒頭、日常の中で歌う『威風堂々』と、終盤に死を目前に歌う『威風堂々』。同じ歌を歌っているのに、宏の表情がまったく違います。鼻歌を歌うことで、抗えない運命に対して涙するという場面を撮りたかったんです」

トイレの天井画を描いたのは誰?


トイレに描かれたピエタ(聖母子像)というビジュアルイメージから始まったこの映画ですが、「作品に出てきたピエタを描いていたのは誰?」という疑問は当然ながら出てきます。さて、あの力強くも優しいピエタは誰の作品なのでしょうか?

松永「ピエタの絵は、この映画にとってもう1つの主人公。誰に描いてもらうか、プロデューサーと話し合いを重ねました。最初は若いアーティストに描いてもらおうと思ったのですが、撮影の都合上、様々な課題が出てきました。そこで、有名なギャラリストである小山登美夫さんに相談したところ、長きに渡って日本映画の美術を監督なさっている林田裕至さんを推薦していただきました」

映画の現場を知る林田さんでしたら話も通りやすいし、何より画風が松永監督の望む絵に近かったというのが決め手となったとのことでした。

いよいよ2015年6月6日から公開


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司会「この作品は2015年6月6日に新宿ピカデリーをはじめ、日本中で公開されますので、みなさま宣伝よろしくお願いします。また、6月下旬から7月上旬にかけて開催される台北映画祭にも出品されることが決定しています。そして今回の試写会が、英語圏では初の上映となったことを非常に光栄に思います」



映画『トイレのピエタ』は、2015年6月6日(土)から全国各地でロードショーとなっております。ぜひ、野田洋次郎さんの俳優姿と、杉咲花さんの演技力、そして松永監督の紡ぎ出す美しい映像を観に、劇場まで足を運んでみて下さいね。

(取材:大場ミミコ)

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