『マッドライダー』80年代カルトアクション幻の名作が、都内初公開!



©2T Produczione e Distribuzione Films D.r.l.,Roma & Globe Film,Madrif-1983



今年の夏に新宿シネマカリテで開催された特集上映「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2018」。そのラインナップの1本として上映された、イタリア製『マッドマックス2』モドキ映画の名作『マッドライダー』が、1週間限定のレイトショーながら、ついに12月22日から都内で正式公開された。

実は1984年の日本初公開時は、地方公開用の併映作品としての扱いだったため、今回が東京では初の正式公開となる本作。

実に34年の歳月を経て、未だに映画ファンの人気を集めるこの『マッドライダー』。果たしてその内容とは、どんなものだったのか?



©2T Produczione e Distribuzione Films D.r.l.,Roma & Globe Film,Madrif-1983



ストーリー


紀元三千年。地球は核戦争の影響で荒野と化し、オゾン層破壊のために地球上の水分が皆無となる寸前の状態だった。運よく生き残ったトミー(ルカ・ヴェナンチーニ)は、父を探そうと第二次探水隊に紛れ込んだ。しかし、彼の行手には、極悪非道の集団“クレージー・ブル”一味が立ちはだかった。あらゆる手段で挑んでくる“クレージー・ブル”の攻勢にあわや命が危ないという時、どこからともなくコツコツという音が聞こえた。車が転覆し、その中で一人の男が瀕死の状態であがいていたのだ。その男の名はエイリアン(ルト・ジャンヌッチ)。砂漠に住む一匹狼のならず者だ。こうしてトミーに手を貸すという条件で、二人は一緒に旅することになるのだが…。


予告編


近未来バイオレンス映画ブームの中、ひっそりと公開された本作



1981年12月に日本で公開された、近未来SFバイオレンス映画の傑作『マッドマックス2』。その世界的な大ヒットにより、これ以後『マッドマックス2』によく似た内容の作品が、続々と製作されることになる。

更には、急成長を遂げていたレンタルビデオ市場にも、当然の流れとしてイタリアやアメリカ製の低予算『マッドマックス2』モドキ映画が、ユーザーの需要に応えて上陸することになった、この頃の映画業界。

ちなみに、この『マッドライダー』が日本で初公開されたのは、そのブームの真っただ中の1984年2月。時期的には、あの近未来バイオレンス物の代名詞「北斗の拳」連載開始から半年が経った頃に当たる。



©2T Produczione e Distribuzione Films D.r.l.,Roma & Globe Film,Madrif-1983



実は筆者も日本初公開時に劇場で鑑賞しているのだが、本作のチラシやパンフの類は置いてなく、唯一ポスターだけが売店で200円で販売されていたので、記念に買って帰った記憶がある。ちなみに同時上映の香港製カンフー映画『水滸伝』の方が目当てだったのは言うまでもない。

こうして全く知らないキャスト、しかもストーリーも不明のままで観た『マッドライダー』だったが、実際これが予想外に面白い内容で、ラストシーンには正直「おお、これは観て得した!」、そう思ってしまったのも事実。

今回、個人的にも34年ぶりの再鑑賞となったわけだが、果たしてその時の印象は正しかったのか?

雑多な要素を盛り込んだB級映画だが、意外にもラストで感動が!



荒れ地と廃車寸前の車があれば、とりあえず核戦争後の地球に見えるため、低予算映画の題材には最適だった、これら近未来SFバイオレンス映画の数々。

テレビ放映された物や、ビデオソフトとして店頭に並んだ無数の作品群と比べても、地方での併映とはいえ日本で劇場公開されたこの『マッドライダー』は、やはり良く出来ていて面白い!

確かに色々なヒット作の要素を盛り込みすぎた感はあるが、それも観客へのサービス精神の表れと考えれば、むしろ好意的に思えてくるから不思議なものだ。



©2T Produczione e Distribuzione Films D.r.l.,Roma & Globe Film,Madrif-1983



どう見ても『マッドマックス2』そのままにしか見えない、悪役のクレージー・ブルやラストの見せ場となるカーチェイスの展開に加えて、近未来SF感を出すためとしか思えないトミーの驚愕の秘密など、とにかく飽きずに最後まで楽しめる本作。

文明が崩壊して再び弱肉強食の世界に戻った人類に、再び希望を与えるラストが感動を呼ぶ本作。あの時代の空気が味わえる作品なので、若い観客にも全力でオススメします!



©2T Produczione e Distribuzione Films D.r.l.,Roma & Globe Film,Madrif-1983



最後に



今回この『マッドライダー』が上映されるのは、「マカロニ・エンタテインメント傑作選」という特集企画によるもの。

実は60年代から70年代当時、日本の映画興業界の人気ジャンルだったのが、これらのイタリア製アクション映画たち。

思えば、西部劇やスパイ物、ホラーにアクションなど、アメリカでヒットした作品の要素をいち早くマネして、観客の需要に応えようとするその商売根性には、つくづく感心させられたものだった。



©2T Produczione e Distribuzione Films D.r.l.,Roma & Globe Film,Madrif-1983



あくまでも今回は、「爆走カーチェイス編」として2作品が公開されるだけだが、これ以外にもまだまだ、更なるカーチェイス物や刑事アクション、そして動物パニック物やホラーなど、その魅力を再評価しなければならない作品が山ほど存在する。

幸い『マッドライダー』に続いて、イタリア製カーアクション映画の名作『フェラーリの鷹』も、12月29日から同じ劇場で1週間限定上映されるそうだ。

まずは今回上映されるこの2作品をきっかけに、今後も更なる名作・怪作がリバイバル上映されることを、願って止まない。

(文:滝口アキラ)

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