「主人がカマキリに殺されて3年が経ちました」映画で答える人生相談

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読者の皆様から寄せられたお悩みにアンサーしつつ、相談内容に沿って一本の映画を処方する当コラム。映画以外はすべてがでっち上げ、牽強付会という名のセメントを塗りたくった完全なる嘘八百、出たとこ勝負の見切り発車もついに3回目。今回のお悩みはこちら。

主人がカマキリに殺されて3年が経ちました

今回のお悩み

いきなりのメール失礼いたします。

3年前の夏、主人を亡くしました。

主人はよく出張していたのですが、それは会社の仕事ではありませんでした。
病気しがちだった私のために収入を得ようと、危険な出稼ぎをしていたのです。

ある日、同僚と名乗る身体の大きな方が主人の遺品を持って訪ねて来てくれたことがあります。そのとき聞いた話によれば、主人はカマキリに似た巨大な生物に殺されたとのことでした。

とても信じられないお話でしたが、あれから3年、ようやく受け入れられると言いますか、前向きに生きていこうという気持ちにもなってきました。

しかし、カマキリへの恐怖と憎しみは未だ消えないままです。

私はこの先もずっと悲しみを背負って生きていかなければいけないのでしょうか?

(東京都:35歳女性 未亡人)

 

旦那がカマキリに殺されて3年が経ったあなたに処方する映画は

ご相談ありがとうございます。

ご主人は巨大カマキリに殺されてしまったとのこと。お気持ちよく……わかりませんが、先ずはお悔やみ申し上げます。

にわかには信じられないお話ですが、宇宙はもとより地球にも未だ未開の地はたくさん存在します。もしかしたら、未発見の巨大昆虫もいるのかも知れませんね。というか、居るのでしょう。居るという前提で話を進めていきましょう。

巨大な昆虫に関しては、

「ノミが人間サイズになった場合、そのジャンプ力はビルをも飛び越える」

だとか

「人間サイズの蚊に血を吸われたら、3匹でお陀仏」

など「昆虫を人間サイズにしたらいかにヤバいか」といった楽しい想像の遊びがありますが、これが現実になった場合を考えると、恐ろしくて夜も眠れません。

あなたのように、間接的にでも巨大カマキリの恐ろしさを味わってしまったならばなおさらのこと、恐怖と憎しみがなかなか癒えないのも仕方がないことなのかもしれません。

今回、この事実は映画より奇なりといったご相談にどんな映画をすすめるべきか、いろいろと考えたのですが、一種のショック療法的な映画を選んでみました。

処方する映画の名前は『スターシップ・トゥルーパーズ』です。
 

『スターシップ・トゥルーパーズ』

スターシップ・トゥルーパーズ  (吹替版)

『スターシップ・トゥルーパーズ』は1997年に公開されたアメリカ映画で、監督はポール・バーホーベン。『ロボコップ(1987)』や『トータル・リコール(1990)』などの傑作SF映画を手がけた名匠であります。

本作は、民主主義が崩壊した後の世界を舞台として、昆虫型宇宙生物(アラクニド・バグズ)と人類の戦いが描かれます。

人種・性別関係なく平等な社会が築かれていますが、地球連邦軍での軍歴がある者のみが市民権を獲得できる世界で、政治に関しては軍部がかなりの力を持っています。

人類は銀河系での植民をはじめており、その先で遭遇したアラクニド・バグズと戦っている状況ですね。新天地を求めて旅立った人々が先住民に対して難癖つけて武力で追い出す。どこかの国というか、人類の歴史と完全に被りますが、これは監督の仕掛けたアイロニーです。

ちなみに、アラクニド・バグズは巨大なクモで、厳密に言うとカマキリではないのですが、最も一般的な個体であるウォリアー・バグは巨大カマキリを想起させるにじゅうぶんなフォルムなので問題ないでしょう。

このウォリアー・バグ a.k.a 巨大カマキリは、地面を埋め尽くすほどの勢いで地球連邦軍機動歩兵部隊に襲いかかり、硬く、鋭く尖った脚で機動歩兵部隊の面々を圧倒していきます。

対する歩兵たちは、とりあえずデカい敵には小型の核爆弾を打ち込み、全員で突っ込んでライフルを乱射。ヤバくなってきたら撤退というシンプル・イズ・ベストな戦術で、どんどん死んでいきます。

この戦闘シーンの絶望感は、巨大カマキリと相対したご主人と少なからず近しいものがあるのではないでしょうか。巨大化した昆虫の前に、人間はあまりにも無力です。

 

憎しみを止める唯一の手段は「罪を憎んで巨大カマキリ憎まず」

虫がいっぱい、死傷者も盛りに盛られる作品ですが、実は戦闘シーンは少なめで、学校生活や、地球連邦軍に入隊してからの訓練や、仲間たちとのやり取りに多くの時間が割かれています。とくに高校生活は、もうベッタベタにベッタベタなハイスクール恋愛青春映画だと言っても言い過ぎではないでしょう。

ですので、あなたがご主人と出会ったときのことや楽しかったこと、辛かった思い出を追体験できる仕掛けにもなっています。記憶を追体験できるというのも、また映画の醍醐味です。

しかし、記憶を掘り起こしているだけでは巨大カマキリに対する恐怖や憎しみは消えません。むしろ強まるばかりでしょう。

あなたは今、本作に影響を受けすぎて「殺ってやるぜ」と勇ましく、武装をはじめているかもしれませんが、ちょっと待ってください。武装はいったん解除してください。この映画の言いたいことは「いい虫は死んだ虫だけだ」ということではありません。

劇中、ただの高校生だった少年や少女は地球連邦軍に入隊し、教育されます。温い世界から社会への参画をはたした彼等は徐々に大人になり、「地球人を守る、害を成す虫は殲滅すべし」といった使命に目覚めていきます。

「大事なものを守るんだ」という使命感は立派なものですが、その出処は、ほぼすべて復讐心から来ています。主人公であるジョニー・リコ(キャスパー・ヴァン・デーン)は、故郷であるブエノスアイレスを昆虫どもに壊滅させられてしまったことにより、怒りをあらわにし、奴らを皆殺しにせんと決意を新たにします。

高校の先生たちも同じで、腕が無かったり、目が見えなかったりといった傷痍軍人ばかりです。全員がアラクニド・バグズに対して憎しみを抱えています。つまり、あなたと同じですね。みんな大事な何かを無くしてしまったり、大切な人を失ってしまったりしているのです。

さて、個体でなく総体を憎んだ挙げ句、復讐心に燃える人類が巨大昆虫と戦った結果何が残るのか。それはさらなる悲劇であり、大いなる喪失です。

本作は、戦争は悪である、憎しみの連鎖からは何も生まれないといった、今や牧歌的でさえもあるクリシェがわかりやすく提示されます。

そして、じゅうぶんなほど提示されるクリシェとは反対に、敵に対する「赦し」は決定的に欠けています。最後の最後まで、人類がアラクニド・バグズに対して燃やす復讐心は消えません。徹底的に憎むべき敵として描かれます。

結果として、人類は局地戦に勝利します。けれども、その先もまた戦いが、大きな犠牲が待っています。それを止める方法はひとつしかありません。戦うことを放棄することです。しかしやめられない。復讐の炎は消えず、呪いは拡大し続けます。

あなたがもし巨大カマキリのことを「赦せる」のであれば、この憎しみは治まります。しかし、なかなかそうもいかないのが現実でしょう。ですが、万が一、巨大カマキリを発見し仇を討ったとしても、あなたの心は決して浄化されません。再び憎しみの連鎖が生まれるだけです。

では、どうすればよいのか。これに関しては本作ではなく、私自信が明確な答えをもっています。

やり方は実に簡単です。本作鑑賞後に、必ず『スターシップ・トゥルーパーズ2』『スターシップ・トゥルーパーズ3』、さらに『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』を観てください。

そうすれば、きっとあなたは怒り狂い「デカい虫なんかどうでもいいわ、映画をなんとかせい」と、別の憎しみが湧いてきて、巨大カマキリへの憎しみは嘘のように消え去っていることでしょう。

スターシップ・トゥルーパーズ2 (字幕版) スターシップ・トゥルーパーズ3 (字幕版)

スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン(字幕版)

(文:加藤広大)

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