『宇宙でいちばんあかるい屋根』レビュー:清原果耶の魅力炸裂の、今年の大収穫!

(C)2020「宇宙でいちばんあかるい屋根」製作委員会

今、日本映画&演劇界の若手女優の中で演技力と存在感を両立され得る最有力候補の一人に清原果耶がいます。

2015年にNHK連続テレビ小説「あさが来た」で俳優デビューして以降、次々と話題作や問題作に出演。

特にNHKでは「精霊の守り人」シリーズ(16~17)や「透明なゆりかご」(18)などで注目を集め、2019年は「なつぞら」(19)では少女時代から子持ちの母までを見事に演じたかと思うと、「螢草 菜々の剣」で時代劇、「マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~」で戦争の惨禍を描いたドラマに主演、2021年のNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」ヒロイン役も既に決定しています。

映画デビューは2016年の『ぼくは明日、昨日の君とデートする』で、その後『3月のライオン』2部作や『ユリゴコロ』(17)など順調にキャリアを伸ばし、『ちはやふる―結び―』(18)で共演した広瀬すずとは、翌年「なつぞら」で姉妹を演じることにもなりました。

2019年には、人間の善悪について深く鋭く問いかける問題作『デイアンドナイト』のヒロインに抜擢され、難しい役柄と見事に対峙しながら鮮烈な印象を見る者に残してくれました(ちなみにここで役名の大野奈々名義で主題歌を歌い、歌手デビューも果たしています。野田洋次郎が作詞&作曲&プロデュースした、切なくも心潤わせる良い歌です)。

そして本作『宇宙にいちばんちかい屋根』は、その『デイアンドナイト』の藤井道人監督が再び清原果耶を起用した作品なのでした。

意外にも今回が彼女の映画初主演作!

で、その内容は? といいますと……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街500》

これがもう清原果耶ならではの10代少女の爽やかで清楚な魅力を存分に活かしながら、そんじょそこらのキラキラ映画など優に凌駕しつつ、しかも何と日本映画界を代表するベテラン大女優・桃井かおりと堂々渡り合いながら思春期の深く繊細な感情を好もしく描出していくという、もはや驚異的ともいえる青春メルヘン・ファンタジー映画の快作なのでした!

繊細な少女と謎の老婆“星ばあ”
両極端な二人の心の交流

『宇宙でいちばんあかるい屋根』は野中ともその同名小説を原作にしたものです。

主人公は14歳の少女つばめ(清原果耶)。

現在、お隣に住む大学生・亨(伊藤健太郎)に片想い中です。

父(吉岡秀隆)も再婚した義母(坂井真紀)も優しく、何不自由ない生活。

ただ、もうすぐ赤ちゃんができるということで妙に浮足立ってる両親を目の当たりにしながら、つばめはどことなく複雑な思いが芽生え始めています。

学校へ行くと、以前少しだけつきあっていた元カレの笹川(醍醐虎汰朗)との悪い噂が流れていて、これまた居心地悪いご様子。

そんな中、つばめは足しげく通う書道教室が入ったビルの屋上で独り佇むのを心の拠り所としていましたが、ある日、その屋上に謎めいた派手な装いの老婆(桃井かおり)が……。

しかもその時、つばめの目には彼女が星空を舞っているかのように見えました。

いつのまにか、つばめは“星ばあ”と呼び、何とはなしに付き合っていく羽目になります。

「トシくったら何でもできるようになるんだ」と、はしゃぎウソぶく自由奔放な星ばあに翻弄されつつ、いつのまにかつばめは彼女に心を開き、少しずつ自分の悩みなどを打ち明けるようになっていくのでした……。

本当に、とんでもなく
ものすごい若手女優が現れてしまった!

(C)2020「宇宙でいちばんあかるい屋根」製作委員会

いやはやなんとも、これはすごい。

本当にすごい! としか言いようのない映画です。

何がすごいって、とにもかくにも清原果耶がすごい! すごすぎる!

明るく爽やかな風情を保ちつつ、心の奥底のモヤモヤとした想いを思春期特有の不安定感と結びつけながら全く不快感なく、またそこに“演じました”的な意気込みを何ら示唆させることなく、ごくごく自然に、しかも卓抜と醸し出していくという、まさに“ミラクル”といった言葉が頭をよぎるほどの存在感なのです。

またそんな10代少女に心地よく胸を貸しつつ、彼女の魅力を増幅させながらも、自らの個性まで巧みにアピールし得ている桃井かおり!

こうした両者のコラボレーションは“演技合戦”というよりも、お互いがお互いを信頼して初めて醸し出されるものとしか思えないほど清々しいもので、その意味でも大ベテランの桃井かおりと堂々対峙しきった清原果耶に驚かされっぱなしなのです。

また『デイアンドナイト』で清原果耶の資質を見抜いて本作に挑んだ藤井道人監督も、昨年の力作『新聞記者』を経て今回は良い意味で肩の力を抜いた演出が施されており、本当に銀幕の中を心地よい風が吹き抜けているかのようです。

つばめと星ばあの交流から導かれていく数々のミラクルも実に自然な流れで、見る側のリズムを好もしく盛り上げ、最終的には青春映画であり、ファンタジー映画であり、家族の映画であり、これぞ真のキラキラ映画ではないかと断言したくなるほど逸品のアイドル映画であり(因みに今回も彼女が主題歌を歌っています)、それらを合わせると即ち“映画”そのものである! といった結論に達する他はありません。

さらにはラストのシークエンスを直面しながら、偶然ながらもコロナ禍の今にまで想いを馳せさせてしまうという奇跡まで目の当たりにして「溜飲が下がるとは、まさにこのことか!」といった深い感動に胸を締め付けられてしまったほどでした。

いやはや、本当にとんでもない若手女優が現れてしまったものです。

本作の後も来年の朝ドラはもとより、映画だけでも『望み』(10月公開予定)『まともじゃないのは君も一緒』(11月公開予定)、『譲られなかった君たちへ』(冬公開予定)『砕け散るところを見せてあげる』(2021年4月公開予定)と立て続けに新作が劇場公開!

今年の12月25日にはアニメーション映画『ジョゼと虎と魚たち』のヒロインの声も担っており(彼女は2015年のアニメ短編映画『台風のノルダ』でもヒロインの声を真摯に務めていました)、本当に「目が離せない」といった言葉は彼女のためにあるのではないかと思わせるほどです。

まずは手始めに本作『宇宙でいちばんあかるい屋根』をご覧ください! 日本映画界の未来を担う(などと、本当はこういった大仰な言葉も似合わないほど清冽な)清原果耶の魅力が炸裂する、ささやかながらも2020年度の日本映画の大収穫の1本です!

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画レビュー・コーナー『戯画日誌』を連載中。近著に『映画よ憤怒の河を渉れ 映画監督佐藤純彌』(DU BOOKS刊)がある。

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