『若おかみは小学生!』が大傑作アニメ映画である「3つ」の理由!一生のお願いだから観て!

 (C)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

一生のお願いがあります。今すぐ、お近くの映画館の上映時間を調べて、アニメ映画『若おかみは小学生!』を観に行ってください。

タイトルやパッと見のイメージで子供だけが観る映画かな?などと侮ってはいけません(もちろん子供に向けた作品ではあるのですが)。Twitterでは絶賛に次ぐ絶賛で一時は映画のツイートランキングで2位に浮上、映画評価サービスFilmarksでは5点満点中4.1点という高評価かつ初日満足度ランキング1位を記録、『君の名は。』の新海誠監督も絶賛ツイートを投稿しており、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭のコンペティション部門にも選出され喝采を浴びていたのですから。間違いなく『若おかみは小学生!』は大人も感動できる、『この世界の片隅に』に次ぐ日本のアニメ映画の大傑作なのです。

しかしながら興行的にはかなり苦戦しているようで、多くの劇場で公開2週目の時点で1日1回のみの上映、しかも朝の回のみになっています(元々も子供をインターゲットにしたためか夜の回がほとんどありませんでした)。つまり、今週もしくは来週中に映画館に駆けつけないと、映画館という最高の環境で、最高の映画を観る機会を失ってしまう可能性が高いということ……! 『この世界の片隅に』や『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』はSNSを中心とした口コミもあってヒットをしましたが、『若おかみは小学生!』はその口コミが十分に広がる前に上映が終了してしまうかもしれないという、もったいなさすぎる事態になっているのです!(だから早く観に行って!)

そして、本作は予備知識が全くなくても楽しめる、しかも観る人を選ばない、老若男女におすすめできるということも重要です。“家族を描いた映画”でもあるので親子で観ればきっと忘れられない思い出になりますし、“仕事をしている全ての人”にも響く内容でもあるのですから。

この2018年に、“誰が観ても絶対におもしろい映画”を観たいのであれば『カメラを止めるな!』か『若おかみは小学生!』のどちらかを選べばいい、と断言できるくらいです。他に事前に知るべきことはありません。以下の劇場情報から、お近くの映画館の上映時間を調べて、駆け付けてください。少なくはありますがお昼や夕方、ごくごくわずかですがお仕事帰りに行ける夜の回が用意されている劇場もありますよ!

□映画館に行こう! Theaters

さて、ここからは『若おかみは小学生!』がいかに素晴らしいのか……大きなネタバレのない範囲で、その魅力を以下にたっぷりと紹介します!(ただし、序盤の展開に一部触れていますし、項目3.ではクライマックスとラストの物語の核となる部分に触れているのでご注意を)

1:ジブリ映画を彷彿とさせるアニメとしての魅力が満載!
高坂希太郎監督の“こだわり”を感じて!

本作には“絵が生きているように見える”という、アニメの根源に立ち返ったような、アニメでしか成し得ない魅力とおもしろさに満ち満ちています。

具体的には、“お神楽の見事な舞”や“クルクルと窓の鍵のつまみを回す”や“ちゃぶ台の上のお茶をこぼしてしまう”や“瓦の屋根から落ちてしまった女の子を受け止める”といった動作そのものに感動できますし、その他のシーンでも細やかな描写の1つ1つに何度でも観たくなるほどの豊かさがあるのです。それは、『この世界の片隅に』の主人公のすずさんが「本当に存在している」と思えたことや、故・高畑勲監督作品の「実際の人間の動きもこうなんだよなあ」と気付けたことも彷彿とさせました。

特筆すべきは、冒頭の“高速道路の交通事故”。アニメ作品でここまで「怖い!」と思えた事故のシーンは観たことがありません。判断の余地もなく、一瞬で命が奪われてしまう……そのトラウマになりかねないほどの恐ろしさは、(後述しますが)物語上も重要な意味を持っていました。

監督を務めた高坂希太郎は、過去に『茄子 アンダルシアの夏』という自転車ロードレースを題材としたアニメ映画も手がけており、こちらも“肉体を駆使して漕ぐ自転車の動き”のリアリズムに並々ならぬこだわりがありました(しかも高坂監督は『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』や『風立ちぬ』など名だたるジブリ映画の作画監督を務めています)。さらに、作画監督には『君の名は。』の廣田俊輔、美術設定には『思い出のマーニー』の矢内京子など、まさにアニメ映画界の精鋭が揃っているのです。この時点で、アニメとしてのクオリティは保証済みと言っていいでしょう。

高坂監督のこだわりは、今回は旅館で女将さんとして仕事をする時の“作法”にも存分に現れています。それは、“畳のヘリは踏まない”、“部屋に入る時は床の間にお尻を向けて入らない”、“客人を迎える時には真正面からお辞儀しない”といったことなどの、実際の旅館へ取材にも基づいたもの。果ては、その畳のヘリを踏まないための“横は3歩、縦が5歩から6歩で歩く”という決まりまでも意識していたというのですから、恐れ入るとしか言いようがありません。

演出や背景作画も素晴らしく、冒頭での主人公のおっこが家を出て行く時の部屋の暗がり、おっこが歩く東京の中野と温泉街、電車の窓に映り込む幸せな家族の姿など、シーンの1つ1つを思い返すだけで泣きそうになってしまいます。さらにさらに、「料理がおいしそう!」というジブリ映画で誰もが感じていた魅力までもがあるのですから! アニメの豊かさとおもしろさを再確認したいという方も、『若おかみは小学生!』は必見と言えるでしょう。

さらに、もう1つ重要なこととして、主人公のおっこをはじめとしたキャラクターがとってもかわいいということがあります。もちろんデザインとしてのキュートさもありますが、こちらもアニメとしての力が大きいのは間違いありません。高坂監督は“大人には考えられない子供の動き”や“無駄とも思える声の大きさ”や“エネルギーの塊でぴょんぴょん跳ねる動作”などを特に意識して描いていたそうで、主人公の子供らしい良い意味でのオーバーリアクションを見ているだけでついつい笑顔になってしまいました。ライバルキャラとなるピンクのフリフリ衣装を着ている女の子、友達になる幽霊の男の子と女の子、旅館に来るお客さんたちも、みんなが愛おしく(悪人はひとりもいない!)、誰もがすぐに大好きになれることでしょう。

 (C)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

2:映画オリジナルの展開に感動!
吉田玲子による原作を尊重した脚本が完璧だ!

原作である令丈ヒロ子による児童向け小説は、基本的には1話完結式(話が続く場合もある)かつ、20巻にも及ぶ長編でした。そのため、休みなく続けて観るアニメ映画にするためには、エピソードの取捨選択と、一定のダイナミズムがある物語の再構築が必要不可欠と言えるでしょう。結論から言えば、その点でも映画版『若おかみは小学生!』は完璧であると断言します。

各エピソードはそれ単体でおもしろいうえに、ただ乱立されているのではなく、それぞれが有機的に絡み合っており、1つとして無駄なシーンはありません。「どういうことだろう?」とその時は思ってもしっかり伏線が回収されるという気持ちよさ、そして終盤のとある“真実”の提示の仕方は見事という他ありません。

特筆すべきは、その“真実”が原作やテレビアニメ版でも描かれてはいなかった、映画オリジナルであるということ!  冒頭で披露された“お神楽”や、度々挿入される“主人公の両親”の描写も(こちらも原作やテレビアニメ版にはない!)重要な意味を持っており、原作にあったエッセンスを十分に拾いながら、映画独自の解釈を提示することにも成功しているのです。

この超絶技巧とも言える脚本を手がけたのは、『ガールズ&パンツァー 劇場版』や『聲の形』などで、アニメファンのみならず映画ファンからも絶賛されることが多い吉田玲子。 同じく2018年に公開された映画『リズと青い鳥』や『のんのんびより ばけーしょん』も大好評を博していましたが、今回の手腕はもはや神がかりと言っても良いほど。吉田さんが、これからも注目されなければならない脚本家であることは言うまでもありません。

ちなみに、原作者である令丈ヒロ子も、映画版の物語を「オリジナルの部分も大変よく考え、工夫してくださって、原作にあってもおかしくないようなものばかりです」「あまりの完成度の高さ、キャラクターへの愛情と配慮に、感動しかありませんでした」などと絶賛をしています。ここまで原作を尊重し、単体の映画として最高のクオリティに仕上げたアニメ映画はなかなかありません。

なお、吉田さんは脚本執筆にあたり、「原作の中で監督が重要と思われていることは、現実を受け入れる、そのうえで誰かに喜んでもらうために何かをする、前向きな毎日が自分も他人も幸せにするということ」であると考えていたそうで、まさにその通りの物語が紡がれています。次の項で詳しくは書きますが、“現実を受け入れる”ことと“自分も他人を幸せにする”物語としても、本作は高い完成度を誇っているのですから。

余談ですが、冒頭の交通事故の直前のシーンでは、お母さんを演じた鈴木杏樹が「両親が旅館のことに興味を持ってなさそう」ということで、急遽セリフを変えたこともあったのだとか。高坂監督は90分弱の映画に収めるために、元々の脚本からもかなりの取捨選択も求められていたそうで……物語の構築には多くの苦労があり、スタッフやキャストがより良い作品のために様々な意見を出し合い、これ以上のない工夫が凝らされてたのは、言うまでもありません。

 (C)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

3:涙腺決壊必至のクライマックスとラスト! 
“現実を受け入れて生きていく”物語だった!

※以下は具体的な展開は書いていませんが、映画版『若おかみは小学生!』の物語の核となる部分に触れているところがあります。まだ観ていない方で、予備知識なく楽しみたい方はこの項目を読み飛ばすことをおすすめします。

本作の主人公であるおっこは、映画の冒頭で両親を交通事故で失ってしまってしまいます。その悲しみとトラウマとどう向き合うか……これだけを拾いあげると子供向けとは思えないほどの、ハードな物語にもなっていると言ってもいいでしょう。

事実、原作者の令丈ヒロ子は「小さい読者がコメディ的な楽しい部分を楽しめなくなるのではないか」という理由により、事故の詳細とトラウマは意識的に提示していなかったのだそうです。それも子供向けの作品としては正しい選択ではあるのでしょうが、今回のアニメ映画では前述したようにその交通事故のシーンをはっきりと描きだしている(重ねて書きますが本当に怖い!)ため、その悲劇的な現実から“目を逸らさない”という気概があるのです。

原作では魔界というファンタジー設定を踏まえた、おっこが両親の死を受け止め、乗り越えていく姿が描かれていたのですが、このアニメ映画版では極めて“現実的”にその問題(前述した“真実”)と向き合うという事態になります。この時のおっこの心情の苦しさは、(これもまたアニメならではの繊細な描写も相まって)誰もが胸が痛くなるでしょう。

そして、物語は“現実(大切な人の死)を受け入れて生きていくにはどうすればいいか”という普遍的な問題に一つの回答を導き出します。それは誰もが癒しを求める“旅館”という舞台を踏まえたものでもあり、脚本家の吉田玲子が目指した“自分も他人を幸せにする”ための尊いメッセージも前面に押し出されており、劇中の様々なエピソードで提示された価値観もこのクライマックスに集約されているのです。(同じく吉田さんが手がけた『聲の形』の、とあるメッセージにもつながるところもありました)

この涙腺決壊のクライマックスから続く、“これからも生きていく”という肯定感に満ち満ちた、これまた今まで積み上げられた伏線が結集するラストシーンは、もうバスタオルで溢れまくる涙を吸収しないといけないレベルとしか言えません。大切な人を亡くしてしまったという方にとって、一生大切にしたい作品になるのではないでしょうか。

 (C)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

おまけその1:いくら褒めても褒め足りない! 
さらなる奥深い要素とは?

以上に挙げた3つのポイント以外も、褒めたりても褒め足りないことばかりです。

声優陣は全員が全員とも素晴らしく、主人公のおっこを演じた小林星蘭のかわいらしく健気さを感じさせる声と演技は、高坂希太郎監督に「奇跡的な作品になった」と言わしめたほど。バナナマン設楽統、ホラン千秋、鈴木杏樹、薬丸裕英という芸能人配役も抜群の上手さで文句のつけようがありません。水樹奈々、小桜エツコ、てらそままさき、小松未可子、花澤香菜、折笠富美子など人気と実力を併せ持つ声優も多数出演しており、それぞれがバッチリと役にはまっていました。

原作小説ファンへの嬉しいサービスも行き届いています。例えば、中盤の“ファッションショー”は、原作の青い鳥文庫のカバーでおっこが着ていたものばかりなのだそうです。この衣装は、当時の読者から衣装デザインを募集して、原作のイラストを手がけた亜沙美が描いていたものでもあったのだとか。

奥深い要素は他にもあります。高坂監督によると、中盤から登場するグローリー・水領という占い師のお姉さんは、同じく接客を生業としているという点で“未来のおっこ”と意識して描いていたそう。しかも、おっこと似た境遇のあかねという男の子は“こうなっていたかもしれない“という意味での”今のおっこ”であり、最後のお客の子供には“過去のおっこ”を重ねていたのだとか。

本作が老若男女におすすめできるのは、“周りのキャラがおっこの成長を見守る存在”にもなっていることも理由の1つです。それぞれのお客さんに自分の姿を重ね合わせることで、“自分のための物語”と感じられたという大人も、決して少なくはないでしょう。

さらに、映画オリジナルの“お神楽”には、映画本編で全ては紹介されなかったとある“物語”があります。これについては高坂監督が以下の動画で語っていますので、映画を観た方はぜひチェックしてみてください。冒頭の映像や、キャストへのインタビューも合わせて観られますよ。

おまけその2:決して児童労働を推奨するような内容ではない!
 『魔女の宅急便』が大好きという方こそ必見!

本作は文部科学省選定作品となっており、そのためでもあるのか「児童労働を推奨しているのでは?」という意見もあるようです。それは映画本編を観れば全くの誤解であり、主人公のおっこは強制的に働かされる訳でもなく、女将の仕事を始めるにあたっては“小学生が働く”ことに対しての疑問もしっかり提示されています。

映画で描かれているのは、“(子供の視点を通した)普遍的な仕事への向き合い方”と言っていいでしょう。この(幽霊が登場するという)ファンタジーを交えながらも、実は現実的にある仕事を真摯に描いているというのは、宮崎駿監督の『魔女の宅急便』に通じています。ジブリ映画ファンにおすすめしたいという意見も多い本作は、特に『魔女の宅急便』が大好きという方こそ必見と言えるでしょう。

※『魔女の宅急便』の解説記事はこちら↓
□『魔女の宅急便』、「4つ」の盲点!これは“仕事”と“才能”の物語だ!

おまけその3:『若おかみは小学生!』のテレビアニメ版や、
同じく旅館を舞台にした人情劇の『DTC』も要チェック!

前にも少し触れましたが、『若おかみは小学生!』には映画版と並行して制作されていた、スタッフの異なるテレビアニメ版があります(制作に着手したのは映画版のほうが先だったのだとか)。こちらは1話につき10分ちょっとの、気軽に観られるフォーマットに適した内容になっており、映画版にはないエピソードやキャラ描写も盛りだくさんで、見比べてみると新たな発見があることは間違いないでしょう。ナレーションを人気声優の能登麻美子が担当しているのも大きな魅力です。Amazonプライムビデオなどの配信サイトでも観ることができますよ。

そして、完全に偶然ではありますが、同時期に『DTC 湯けむり純情篇 from HiGH&LOW』という、『若おかみは小学生!』と同様の旅館を舞台にした人情劇が展開する映画が公開されています。クスクスと笑えるコメディやミュージカル映画さながらの歌と踊りも魅力的で、監督が『男はつらいよ』を観返して脚本を書いたと語っているところもおもしろいところ。しかも、“誰かのために力を尽くす”という喜びと尊さも『若おかみは小学生!』と一致していました。ぜひぜひ、合わせて観てみてください!

※『DTC 湯けむり純情篇 from HiGH&LOW』の紹介記事はこちら↓
□『DTC 湯けむり純情篇 from HiGH&LOW』の3大魅力はこれだ!最高のスピンオフ、ここに誕生!

(文:ヒナタカ)


    ライタープロフィール

    ヒナタカ

    ヒナタカ

    ヒナタカ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」運営中のフリーライター。All Aboutでも映画ガイドとして執筆中。なぜか中高生向けの恋愛映画もよく観ています。

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