新海誠監督も興味シンシンのワキ毛青春アニメ映画『こんぷれっくす×コンプレックス』は見逃し厳禁!

■「キネマニア共和国」

(C)PANPOKOPINA

日本で初めてアニメーション映画が作られて(1917年)、今年で100周年を迎えます。

その記念すべき年にふさわしい快作!

しかも、描かれているモチーフは、何とワキ毛!

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.202》

青春わき毛胸キュン映画『こんぷれっくす×コンプレックス』!

とにかく面白い映画を見たい人は、これを見ろ!
(しかも最後には泣けてくる!)

ワキ毛フェチの女の子の繊細な心を捉えた青春映画

『こんぷれっくす×コンプレックス』は、中学2年生の女の子・小谷ゆいちゃんが主人公です。

(C)PANPOKOPINA

一見、普通そうな彼女ですが、実は人に言えない秘密がありました。

それは……男の子のワキ毛を見ると、いてもたってもいられないくらいときめいてしまうのです!

特に、クラスで一番ワキ毛の濃い武尾マサトくんから目が離せません。

そんなある日、ひょんなことからふたりは急接近!

はたしてふたりの関係性の行き先や、いかに?

本作はいわゆるフェチを主題にした、およそ24分の短編フラッシュ・アニメです。

思春期と毛をモチーフにしたものと言えば、最近でも実写映画で『スイートプールサイド』がありましたが(こちらは毛深い女の子の毛を剃る役割を請け負う男の子のお話でした)、こちらは女の子のワキ毛フェチを通してユーモラスに、しかし実は繊細に揺れ動く少女と少年の感性を巧みに救い上げた至極の青春映画として屹立しています。

最近のフラッシュ・アニメはシンプルな中にも芳醇な演出が施されたものが多く見受けられますが、本作の場合、一見記号的に描かれがちな表情などにも細かいこだわりが見え隠れしており、特にほっぺたがほのかに赤くなる過程とか、まばたきなどさりげないところに気が配られています。

また本作は先に声を録り(プレスコ)、それに応じて絵を作っていますので、主演の林奏絵や上妻成吾、春名風花といった若手声優の個性もうまく引き出されながら、絵との調和も巧みにとられているのも特筆事項でしょう。

もちろん、かなりの割合で笑えます。

カンフー映画を見ても、偉大なるブルー・スリー(ブルース・リーではない?)の神がかりなアクションそのものよりも、ワキ毛のしょぼさが気になってしまう、そんなゆいちゃんは実に素敵なのです。

しかし、そんな彼女だからこそ、やがておかしくも哀しい……おっと、その先に待ち受けている展開は、ぜひともご覧になっていただきたい!

少なくとも本作を見ると、かつて青春時代、何でもないことに妙にこだわり、独りで悶々としていたことや、それゆえの後悔、切なさ、その他思春期特有の感情を呼び起こされ、思わずホロリと涙をこぼしてしまうことでしょう。

笑えます。

でも泣けます!

それが『こんぷれっくす×コンプレックス』なのです!

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追加上映も決定!これからもますます面白くなっていく国産アニメ!

リミテッド・アニメの伝統を湛える国産アニメの担い手たちは、必要最低限の絵を動かすだけで、あたかも俳句のような奥深い表現を可能とする術を身に着けているのかもしれませんが、本作のふくだみゆき監督の感性も相当なもので、そのキャリアを紐解くと、大学時代から自主アニメ制作を始め、2013年には実写映画『マシュマロ×ぺいん』を監督し、国内のさまざまな映画祭で5冠を達成。

そして彼女にとって5年ぶりのアニメーション監督作品となった本作は、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016アニメ部門グランプリ&観客人気投票第1位をはじめ、こちらもさまざまな国内の映画祭の賞を前作以上に受賞し続けています(すでに9冠くらい?)。

また本作を上映している下北沢トリウッドは、『君の名は。』で時の人となった新海誠監督を発掘した映画館でもあり、かつてここで新海監督の出世作『ほしのこえ』が上映されたのです(そして今も新海監督特集を上映中!)。

思えば『ほしのこえ』も25分ほどの短編自主アニメだったわけですが、時を経て同じく24分の『こんぷれっくす×コンプレックス』が上映されているのも、単なる偶然や否や? 

この映画館からまたまた新たな才能が巣立っていく可能性は大!
(いや、私たち観客がどんどん積極的になって、新たな才能を応援していくことこそが肝要なのです!)

そういえば新海誠監督も先日ツイッターで『こんぷれっくす×コンプレックス』を見たい! とつぶやいておられました。やはりクリエイターとしてなにかしら共通する「血」みたいなものが騒いでしまっているのでしょうね。

なお本作は、2月17日まで上映の予定(平日20時~/土日12時~&18時30分~)でしたが、あまりの好評につき、追加上映が決定しました!

●2月18日(土)12時
●2月19日(日)12時
●2月25日(土)12時
●2月26日(日)12時
(いずれも当日一律900円)
詳しくはhttp://tollywood.jp/まで

おそらくこの作品は今回の上映にとどまることなく、この後も引き続き展開されていくことが予想されます。

全国各地での上映も大いに期待できますし、映画ファンもアニメファンもまた新たな才能にいち早くチェックしておく、またとない機会です。

まずは下北沢トリウッドへGO!

……あ、忘れてはいけない! 

本作はふくだ監督によるおよそ2分ほどの新作短編フラッシュ・アニメ『許されたがーるズ』が併映されています。

(C)PANPOKOPINA

女子高生の何気ない日常会話を描いたものですが、こちらもまたまた女の子のコンプレックスをさりげなくも露にしていく快作。

全3話を日替わりで上映していますので、ぜひともコンプリート目指してみてください!

それにしても、本当に日本のアニメーション界はメジャーもインディーズも等しく面白いことになってきているようです。

この波に乗り損なうことなく、今後とも見守り続けてゆきたいものです。

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(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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