『妖怪ウォッチ』、今回は面白コワくて、ゲゲゲのゲ!

(C)LEVEL-5/映画「妖怪ウォッチ」プロジェクト 2017

ゲームにテレビアニメにと、子どもたちに大人気の『妖怪ウォッチ』。大人が接しても結構楽しいこのシリーズ、毎年冬にお目見えする劇場用映画も好評を博しています。

そして今回、劇場版第4作『映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活』なのですが……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.276》

これが何と今までとはガラリと趣を変え、ダークでちょっと怖くて、しかも面白い野心作に仕上がっているのでした!

30年後の世界を舞台にした
新たなる妖怪ウォッチ・ワールド!

『映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活』の舞台は、現在放送中のTVシリーズ、もしくはこれまでの劇場用映画シリーズの主人公ケータたちの世界から、何と30年ほど経った未来の世界です。

(C)LEVEL-5/映画「妖怪ウォッチ」プロジェクト 2017

数千年に一度、地球を襲うといわれる最悪の妖怪ウイルス“鬼まろ”がついに現れました。

鬼まろは、孤独な闇を抱える少年トウマ(声/千葉雄大)と契約を交わし、彼の心の中の悪意を増殖させながら、次々と人の心を喰らっては化け物にしていきます。

こうした一大事をいち早く察知したエンマ大王によって、少女ナツメ(声/上白石萌音)が新たなる“妖怪ウォッチエルダ”に選ばれし者となり、妖気をあやつることができるアキノリや伝説の妖怪ジバニャンたちとともに、この世界の危機に対峙していくのです。

今回、いきなり30年後の世界を舞台にした新展開にまず驚かされますが、同時に今回は従来のシリーズが提示していた妖怪たちの愛らしさなどを一転させ、どこかおぞましく怖い、それこそ本来の“妖怪”という恐怖の象徴ともいえる響きを重視した作りになっています。

もちろんファミリー映画として極端にグロテスクな描写などがあるわけではありませんが、それでも従来のシリーズのファンの子どもたちはかなり仰天するのではないでしょうか。

(C)LEVEL-5/映画「妖怪ウォッチ」プロジェクト 2017

特に鬼まろによって家族や友人たちが次々と化け物化されていく描写など、小さい子どもが見たら泣き出すのでは? とあらぬ心配をしてしまうほどなのですが、それにしてもなぜ今回このような異色の設定を設けたのか。

そこで大きなカギとなるのが、妖怪漫画の代名詞ともいえる水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』です。今回は鬼太郎をはじめとするゲゲゲの妖怪キャラたちがゲスト出演し、ナツメたちに事態の解決の手助けをするのですが、ここに何やら象徴的なものを感じずにはいられません。

(C)LEVEL-5/映画「妖怪ウォッチ」プロジェクト 2017

『ゲゲゲの鬼太郎』もこれまで幾度もTV&映画でアニメ・シリーズが作られてきていますが、特に第1(モノクロ版でした)&第2シリーズはかなり怖く作られていて、当時小学生だった私など大いにトラウマになったものですが、しかしそれゆえに恐怖もまたエンタメの一種であるという、作り手からのメッセージをうまくキャッチすることもできました。異形のものに対する理解みたいなものも、ここで教わったような気がしています。

つまりは今回、妖怪は可愛いだけではなく怖い面もあるのだぞということを子どもたちに改めて強調しつつ、そんなダークさゆえの愉悦みたいなものを体験させようとしているのだなと理解した瞬間、俄然この作品を面白く見ることができた次第なのです。

毎回実験精神に満ちた
意欲シリーズの最新作

もともと『妖怪ウォッチ』の劇場版は、第1作『映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』(14)では『スター・ウォーズ』など映画オマージュを隠し味にしたお遊びが楽しかったのですが、2作目『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』(15)ではまったく別個の物語をオムニバスで描き、最後にそれらが一つにまとまるという実験を披露。

さらに第3作『映 画妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』(16)ではなんと通常のアニメ世界と実写世界(ケータくん曰く、“毛穴社会”!)を行き来するという大胆不敵な趣向で迫る快作でした(実写側のヒロインは『君の膵臓をたべたい』の浜辺美波ちゃんでした)。

つまりはこのシリーズ、毎回実験的野心を持って攻めに攻めて攻めまくっている意欲シリーズでもあるのです!

今回も先に記した大胆な設定の変更や前半部の恐怖の描出、そして後半はシリーズ最大といえる妖怪たちのアクション・スペクタクル・シーンが見る者を圧倒してくれますが、やはりちょっと怖い体験をした後のバトルの爽快感も加味されて、観賞後のカタルシスも最大級のものといえるでしょう。

声優陣も、『君の名は。』で今や国民的な声の持ち主となった『上白石萌音が今回もすがすがしくも元気で明るいヒロインを好演。また“邪”を担うことになるトウマ役の千葉雄大も、つぶやくような喋りが効果的に映えています。

さらには鬼太郎の声を初代の野沢雅子が演じているというだけでも涙ものですし、ねずみ男の声を初代・大塚周夫の実子で今や大ベテランの大塚明夫が扮しているあたりも嬉しい限り。

またラストにはシリーズのファンならあっと驚く真相も隠されていますので。そちらもお見逃ししなく!

『スター・ウォーズ』に『仮面ライダー』と強敵ひしめく今年の冬の映画界ではありますが、こちらもかなりの出来ばえです。

単なるファミリー映画ということだけでなく、1時間半強の上映時間、極上の映画的体験を子どもたちに(そして結構大人たちにも!)味わってもらう格好の好機であるともいえるでしょう!

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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