『ズートピア』解説、あまりにも深すぎる「12」の盲点

6.ニックは記憶力が抜群だった!

キツネのニックは、じつは記憶力がとてもよかったりします。

ジュディが“ジュディ・ホップス”というフルネームを告げたのは、免許センターのナマケモノのフラッシュと、豹変してしまったカワウソのオッタートンに名乗ったときのみで、ニック自身には“ジュディ”という下の名前を言っていなかったりするのです。

しかし、……ニックとジュディがともに川に落ちたとき、ニックは「にんじん、ホップス、ジュディ!」と、しっかり名前を告げています。
このシーンは、“にんじん”とばかりジュディを呼んでからかっているニックが、“大切なとき”にはちゃんと名前を呼んでいるということも示しています。

そのほかにも、ニックは一度しか言っていなかった捜査の残り時間を覚えていましたし、その記憶力のよさは交通カメラを使った捜査でも大いに役に立ちます。ジュディが警官としての才能を見抜くのも、当然ですね。

そういえば、ヒッピーっぽいヤクのヤックスが「ゾウは記憶力がいい」と言って、ヨガ教室を開いているゾウのナンギの所へ行くと、ナンギのほうは全然覚えていなくて、ヤックスのほうが記憶力が抜群だった、というシーンがありましたね。
これは“自分では記憶力がいいという長所に気づいていない”ということも示しており、それはニックにも当てはまっていたのですね。

また、ニックはもともとジュディと同じ努力家であったのに、幼いころにトラウマにより、自分を卑下してしまっていましたね。彼は記憶力がいいからでこそ、そのような悪いこともなかなか忘れられなかったのかもしれません。

7.ニックとジュディは相性が抜群!

ニックは皮肉屋な性格で、マジメなジュディとは対照的なようでしたが……その相性が抜群であることがわかるようになっています。

たとえば、ジュディは終盤の列車でのアクションシーンで、とにかくスピードを上げることをニックに告げていましたが……彼女はスピードの上げすぎで線路を曲がりきれないこと、列車そのものが爆発して証拠がなくなることを見抜けませんでした。

だけど、ニックはそのことを見越して、列車内から証拠品のバッグを持ち出していた! これまでも捜査において連携プレーをみせていたふたりでしたが、ここにきてその関係性がより強固になったようですね。

そして、ラストシーンでは“皮肉を言い合いつつ、お互いが好き合っている”ことを示している会話までもがあるんですよね。なんていうか、もうこいつら結婚してしまえばいいと思います。

ズートピア ジュディ・ホップス ニック

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8.ニックのサングラスの意味とは?

大好きだったのが、ニックがサングラスをかけているシーンです。

彼は肉食動物たちが見つかったとき、“俺は警官じゃないし、関係ないからね”と訴えているかのように、ニックはサングラスをかけて、ひょうひょうとしていました。

肉食動物が危険視されるようになったとき、詐欺仲間のフィニックは車にバットを持って隠れていましたが、ニックはサングラスをかけてドリンクをチューチュー吸ってくつろいでいました(笑)。
だけど、ニックはジュディがやってきたのを見て、すぐにサングラスを外していました(ここでのトンネルの“影”の表現も素晴らしすぎる!)。

このニックのサングラスは、彼自身の“皮肉屋な性格”そのもののようです。それが外されるということには、彼の“本質”があらわれる、ということを示しているのではないでしょうか。

この後にジュディは自分の過ちを認めて泣いてしまうのですが……ニックはやさしく抱き寄せてくれました。
この前にサングラスを外していたということは、もうすでにジュディはニックに許された、とも考えられるのです。

また、ニックが警察に就任したとき、ここでも彼はサングラスをしていましたが、ちょっとだけサングラスをずらして、壇上にいたジュディを見るというシーンもあったりします。
ニックは皮肉屋だけど、ちゃんとジュディのことを見てあげているのですね。

9.ふたりをつなげる“にんじん型のペン”

録音機能つきの“にんじん型のペン”が示しているものも、じつに奥深いですね。その使いかたが、どんどん変化していっているのですから

(1)ジュディがニックの脱税の証拠を録音して、捜査に無理やり協力させる

(2)ジュディがツンドラタウンの私有地の柵の中にペンを投げて、それを取りに行ったニックについていくことで、“許可がなくても入れる状態”をつくってしまう

(3)捜査を協力してくれたニックにペンを渡す。しかも警察の応募書類といっしょに!

(4)ニックは、ジュディの“私は間抜けなウサギよ”というセリフを録音して、ジュディと同じように「ちゃんと消してやるよ、48時間後にな」と皮肉を言う

(5)ニックとジュディはベルウェザーの思惑を録音して証拠にする!

(1)と(2)ではただの“捜査に協力するための道具”だったけど、(3)では信頼する友だちへの贈り物となり、(4)ではふたりの仲直りを示し、(5)では相性抜群の彼らが巨悪を倒すための道具へと変わる!
この脚本の素晴らしさは、もう「ブラボー!」と言うほかないです。


    ライタープロフィール

    ヒナタカ

    ヒナタカ

    ヒナタカ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」運営中のフリーライター。All Aboutでも映画ガイドとして執筆中。映画に対しては毒舌コメントをしながら愛することをモットーとしています。

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