今年のハロウィン、なに観ようかと迷っている人にこそ贈りたい。
ゾッとするのに笑ってしまう、笑ったのに忘れられない、そんな“クセになるホラー映画”がある。
今回は、観る者の心に深く刻み込まれるような“トラウマ級”恐怖を与えてくれる5本を厳選。
テーマはズバリ、「B級だけどクセになる80年代ホラーの魔力」。
ただ怖いだけではない、奇妙で、愛おしくて、どこか懐かしい。
そんな映画たちが、今ふたたび注目されている。
今観ても面白い、ホラーの“旨味”が詰まった5本を一挙紹介。
『悪魔のいけにえ』(1974)──恐怖は日常のすぐ隣にある

(C)MCMLXXIV BY VORTEX,INC.
ホラー映画の金字塔にして、今なお“観る者の神経をすり減らす”傑作。
1974年、トビー・フーパー監督が世に送り出したこの作品は、あまりにも衝撃的だった。
暑さにうだるテキサスの田舎道。
若者たちは一軒の古びた家に足を踏み入れ、そして一人また一人、姿を消す。
やがて彼らがたどり着くのは、人肉を食らう“家族”の晩餐会。
鎖、チェーンソー、吊るされた肉体。
そして仮面をつけた大男──レザーフェイス。
本作が恐ろしいのは、残酷な描写よりも、音と空気感。
血しぶきよりも、骨のきしむ音と乾いた笑い声が脳裏にこびりつく。
夕陽の中でレザーフェイスがチェーンソーを振り回す、あのラスト。
観た者すべてが言葉を失う。
低予算、素人同然のキャスト、そして“事実に基づく”というテロップ。
すべてがリアルで、嘘くさくて、だからこそ怖い。これぞB級ホラーの頂点だ。

(C)MCMLXXIV BY VORTEX,INC.
『ゾンビ』(1978)──欲望の牢獄に閉じ込められた者たち

(C)1978 THE MKR GROUP INC. All Rights Reserved.
ロメロ監督が描く“ゾンビ社会”の真骨頂。
1978年作の『ゾンビ』は、前作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の延長線上にありながら、ホラーの枠を超えた“終末の寓話”でもある。
舞台はショッピングモール。
感染が広がる世界から逃れた4人の男女が、物資と娯楽が詰まった商業施設で生活を始める。
しかし、次第にゾンビが群れをなして押し寄せ、外からも内からも人間関係が崩壊していく。
モールの中に流れる軽快なBGM「The Gonk」と、ゾンビたちの生臭い徘徊が奇妙にマッチし、観ているこちらの神経がざわつく。
青白いメイクのゾンビ、妙に長い間の“静けさ”、銃声の反響。
全体に漂うのは“自分たちは本当に生きているのか?”という問いだ。
“B級に見えるのに哲学的”。
それが『ゾンビ』の凄さ。
ゾンビが怖いのではなく、人間が怖いのだと知る作品だ。

(C)1978 THE MKR GROUP INC. All Rights Reserved.
『ガバリン』(1986)──怖いのに、どこか笑ってしまう

House © 1986 Sean S. Cunningham Films, Ltd. All Rights Reserved.
もしも『死霊のはらわた』と『ホーム・アローン』が合体したら──そんな一風変わったホラー・コメディがこの『ガバリン』だ。
作家のロジャーが亡き叔母の屋敷に住み始めたことで、家そのものが狂気の巣窟と化す。
冷蔵庫から触手が飛び出し、剥製が暴れ、戦死したはずの戦友がゾンビ化して現れる。
理不尽、だけど楽しい。
そんな恐怖体験が90分間ノンストップで続く。
注目すべきは、80年代的な特殊メイクと物理的ギミックの多彩さ。
ドアの向こうに広がる異空間、釣竿で異世界に突っ込むシーンなど、ワクワクと不安が同居する演出が光る。
ホラー映画の中でも、ここまで“家”を自由に遊んだ作品は他にない。
低予算っぽさは否めないが、だからこそアイデア勝負。
笑えるのに妙に怖い。
“クセになるホラー”とはまさにこのこと。

House © 1986 Sean S. Cunningham Films, Ltd. All Rights Reserved.
『レザーフェイス 悪魔のいけにえ』(2017)──怪物はどうやって生まれるのか?

(C)2017 LF2 PRODUCTIONS
2017年に公開された本作は、『悪魔のいけにえ』シリーズのスピンオフにしてオリジンストーリー。
あのレザーフェイスが“ただの少年ジェド”だったころの過去が描かれる。
一見平穏な田舎町で、精神病院から脱走した若者たちが逃避行の末に辿るのは、血と狂気に彩られた運命。
警官、看護師、そしてジェドを取り巻く“家族”。暴力は、どこから始まり、どこで終わるのか?
フランス産ホラーで名を馳せた監督コンビが手掛けた本作は、実写と特殊効果をミックスした荒々しい演出で“倫理が剥がれていく感覚”をじわじわと積み重ねる。
首を傾げたくなる唐突な展開やロードムービー風の構成も、B級ホラーとしての愛嬌。
血塗られたマスクが生まれる瞬間を見届けた時、あなたは「本当に怖いのは、何だったのか」と立ち止まることになる。

(C)2017 LF2 PRODUCTIONS
『パペット・マスター』(2018)──ナチ人形が暴れ出す、悪趣味すぎるカルト作

(C)2018Cinestate Puppet Master,LLC
『パペット・マスター』シリーズ30周年を記念して製作されたこの作品は、1989年のオリジナルをベースにしつつ、設定を大幅に再構築した異色作。
監督はスウェーデン出身のトミー・ビクルンド&ソニー・ラグーナ。
脚本は『ボーン・トゥ・キル』のS・クレイグ・ザラーが手がけた。
今作では、ナチスの狂信的科学者アンドレ・トゥーロンが操る“ナチ人形”たちが、人種・宗教・性的マイノリティを無差別に襲撃するという過激な設定。
展示イベントで復活した殺人人形たちがホテルを血の海に変えていく。
最大の見どころは、実写特殊メイクによる徹底したゴア描写。
臓物が吹き飛び、首が飛び、妊婦までも襲う衝撃のシーンが続出。
人形のデザインも一新され、過剰な武装をまとった“拷問兵器”のような造形にゾッとする。
にもかかわらず、ブラックユーモア満載。
軽妙な会話とバカバカしさで観客を翻弄する。
これはもう、B級を超えた“Z級グラインドハウス・エンタメ”だ。
80年代ホラーやトロマ作品へのオマージュも随所に光り、音楽はイタリアのファビオ・フリッツィが担当。
レトロなシンセ音が作品世界を引き締める。悪趣味ギリギリの恐怖と笑いを堪能したい人におすすめ。

(C)2018Cinestate Puppet Master,LLC
今観るからこそ面白い、“ホラーの不思議な旨味”
今回紹介した5作に共通しているのは、「怖いのに、もう一度観たくなる」不思議な魅力だ。
それは、作品の作り手が“ホラーを愛していた”という空気感、あるいは制約の中で最大限の恐怖を絞り出そうとする創意工夫の賜物かもしれない。
血の色が派手だったり、演技がぎこちなかったり、今では考えられない演出もある。
けれど、そこに宿る手触りのある恐怖、笑ってしまうほどリアルな不条理、そして観終わった後も尾を引く後味は、むしろ今だからこそ新鮮だ。
このハロウィン、ぜひ“ちょっと古いホラー”を手に取ってほしい。
あなたの中に眠っていた恐怖の感覚が、きっと目を覚ますはずだ。
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『悪魔のいけにえ』
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