俳優・映画人コラム

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2015年09月10日

“KING OF MONSTER”ゴジラを生んだ男 『本多猪四郎監督の映画史』を体感しながら……

“KING OF MONSTER”ゴジラを生んだ男 『本多猪四郎監督の映画史』を体感しながら……


天国の本多監督は、今の日本をどう見るか?




誰もがその温厚な人柄に魅せられ、どの撮影現場でも和やかな空気を崩すことがなかったと、常にその人徳を讃えられている本多監督ですが、実は私も今から30年近く前の80年代後半、まだ映画ライターとして駆け出しだった頃、本多監督のご自宅まで赴いて取材させていただいたことがありました。
そのとき、あろうことかテープレコーダーが壊れてしまい、筆記での取材をせねばならなくなったのですが、本多監督はこちらがちゃんとメモを取れるよう、ゆっくりと穏やかな口調で、いろいろな話をしてくださいました。

結果、1時間の取材予定が倍くらいにはなったでしょうか。
「時間は気にしなくて大丈夫だよ」と、優しくおっしゃった本多監督の笑顔は、今も忘れられません。

取材中、印象に残っているのは、監督は新聞などの科学記事を見つけては、映画のヒントにできないものかとスクラップするのを日課にしているというお話で、たとえば『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』(65)は、新聞で遺伝子工学の記事を見つけたことが、企画に大きく役立ったのだそうです。
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また、このとき監督は「まもなく、すべての映画は裸眼で見られる立体映画になることでしょうね」とおっしゃいました。
正直、そのときは「はあ…」とおぼろげな返事をするのみだったのですが、今やNINTENDO 3DSのように裸眼で立体視プレイできるゲーム機器が、当たり前のように子どもたちの間で遊ばれている時代です。
また、今は4Kテレビが話題になっていますが、これが8K、16Kあたりまで発展すれば、その映像は裸眼で立体視を体感できるのだそうです(つまり、もう3Dメガネはいらなくなる)。

こういった科学の未来を楽しそうに予見されつつ、一方ではそういった技術が戦争や政治に悪用されることだけは絶対に避けなければならないということも、監督はさりげなく強調されていました。

今、この日本を真の当たりにして、天国の本多監督は何とおっしゃるだろうか?

そういったこちらの想いにも、本書は本多監督に代わって応えてくれているように私には思えました。

ぜひとも一読し、本多監督作品そのものの魅力や、映画作家としての想いに触れてみてください。

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:増當竜也)

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