長編アニメ映画『屍者の帝国』の さまざまな意欲的試み


建設的な賛否両論が飛び交う
理想的ともいえるエンタテインメント


監督は、亡き恋人そっくりのロボットとの愛を描いた中編SFラブストーリー映画『ハル』でデビューした牧原亮太郎。

ファンタジーを自分たちの等身大の世界のものとして扱う牧原監督独自の淡々とした瑞々しい感覚は本作にも健在で、およそありえない虚構の世界観に説得力を与えています。
また『ハル』に引き続いての精巧かつ気品のある作画も、この監督ならではのこだわりでしょう。
『屍者の帝国』イメージビジュアル


もっとも、全体を通してのストーリーの複雑さと、それに対する作画の淡々とした味わいは、不可思議な魅力を放ってはいますが、それゆえの難解さを増幅させてしまう弱点も伴ってしまっているようで、ドラマがクライマックスに進むに従い、わかりにくくなっていくのは残念な限りではあります。

とはいえ、ファミリー向けか深夜TVアニメの劇場版などが幅を利かして久しい日本のアニメ映画事情の中、こういったマニアックな題材が映画化の対象になるのは非常に喜ばしいことで、しかも今回の上映時間はおよそ2時間!

最近のアニメ映画は50分以内の中編や、長編でも70分から90分強といったプログラムピクチュア的上映時間のものが主になりつつありますが、個人的には本作のように堂々と長尺で勝負していただきたいもの。
もちろんそれは題材にもよりますし、この『屍者の帝国』に関しては2時間半くらいかけてもよかったのでは? と思ってしまう瞬間も正直あったりしますが、いずれにせよこういった試みは大歓迎なのです。

実際のところ、本作は賛否両論真っ二つに分かれてはいますが、双方の意見ともに建設的なものが多いのには、作り手としてもある種のカタルシスがあるのではないでしょうか。

賛であろうが否であろうが、そのことで創作に対する意識を向上できてこそ真のエンタテインメントといえるでしょう。
その意味では、映画『屍者の帝国』は見事なエンタテインメントであると断言しておきます。

なお、Project Itoh第2弾は当初『虐殺器官』となっておりましたが、制作体制見直しのため公開を延期し、代わって『ハーモニー』が11月13日より公開されることになりました。
引き続き興味をもって鑑賞していただければと思います。
Project Itoh 屍者の帝国 虐殺器官 ハーモニー



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(文:増當竜也)
Project Itoh公式サイト http://project-itoh.com/
https://www.youtube.com/watch?t=7&v=x6wB6V7jwxk
(C)Project Itoh & Toh EnJoe / THE EMPIRE OF CORPSES

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