第88回アカデミー賞最大のハイライトとだいぶ早い第89回アカデミー賞の展望

今年も大いに盛り上がりを見せた、第88回アカデミー賞授賞式。皆様それぞれ気になる作品や好きな俳優の受賞で喜んだり、応援していた人が受賞できなくて悔しんだりと、楽しんだことかと思います。


受賞一覧や今年のメインを飾った作品については、当サイト編集長の興奮冷めやらぬ記事でご確認いただければと思います。

こちらでは、幾つかの受賞結果にフォーカスを当てて、主に今年誕生した記録や、来年以降のオスカーの展望について触れていきたいと思います。

今年最大のハイライト


まず今年一番の目玉となったのが、なんといっても『レヴェナント 蘇えりし者』で主演男優賞を獲得したレオナルド・ディカプリオ。

レヴェナント:蘇えりし者


(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation.  All Rights Reserved.


これまで『ギルバート・グレイプ』で助演男優賞にあがり、以後『アビエイター』『ブラッド・ダイヤモンド』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』といずれも主演男優賞候補に挙がるも、惜敗を喫してきた彼が、5度目の正直でようやく悲願のオスカー受賞にこぎつけたのです。

『タイタニック』や『ディパーテッド』(同じ年に『ブラッド・ダイヤモンド』があった)、『ギャング・オブ・ニューヨーク』(助演と思われていたダニエル・デイ=ルイスが主演でノミネート)で候補入りできなかったことを考えると、とことんオスカーとの相性が悪いのでは、とも言われておりました。

今年は運良く主演男優賞部門のウィークイヤーと言われており、誰が受賞してもおかしくないと言われながら、年末の劇場公開後から徐々にその評価を固めてきての受賞。もうノミネートが発表されたあたりからは、ディカプリオに受賞させようという映画界の雰囲気が伝わってきたりもしました。

結果として、グレン・クローズに並ぶ6度目の空振りになることなく、悲願を達成。さあ2度目のオスカーを、と行きたいところですが、現時点で公式に発表されている次回作の予定は未定。次はいつになるのだろうか……。しかし、ベン・アフレックの監督最新作『Live by Night』でプロデューサーとして名を連ねており、早々に今度は作品賞でオスカーを受賞する可能性も充分。(作品賞はプロデューサーに与えられる賞ですので)

一方で、今年悔し涙を飲んだ名優といえば、やはりシルヴェスター・スタローン。
10年ぶりのロッキー・バルボア役で、40年ぶりのオスカー候補にあがった彼は、今年のもうひとつの注目でした。結果は『ブリッジ・オブ・スパイ』のマーク・ライランスにオスカーが行くことになりましたが、ここ何十年もの間アカデミー賞とは正反対のゴールデン・ラズベリー賞の常連俳優となっていた彼が、この機会に再評価されるのか期待したいところ。

グローバル化が進んだアカデミー賞


ハリウッド最大の映画イベントであるということは、つまり世界最大の映画イベントと言っても間違いのないこのアカデミー賞。

アレハンドロ・G.イニャリトゥが史上3人目の連覇を果たしたことで、監督賞は6年連続アメリカ人以外に渡ることになりました。2009年に初の女性監督の受賞となったキャスリン・ビグローが受賞しているので、アメリカ出身の男性監督の受賞は2007年のコーエン兄弟以来無いということです。

さらに、同じ主要部門では助演女優賞を『リリーのすべて』のアリシア・ヴィキャンデルが受賞。スウェーデン出身女優の受賞はイングリッド・バーグマンが『オリエント急行殺人事件』で受賞して以来41年ぶり。この部門を非英語圏出身女優が受賞するのは、一昨年のルピタ・ニョンゴ以来8人目ということになる。ちなみに今年はメイキャップ&ヘアスタイリング賞にスウェーデン映画『100歳の華麗なる冒険』が候補入りしてましたね。

グローバル化で当たり前だろうとツッコミを入れられるかもしれませんが、外国語映画賞も今年はかなり多国籍化しております。40回目のノミネートとなるフランスはさておき、コロンビア(『Embrace of Serpent』)とヨルダン(『ディーブ』)から初めてノミネートされたのです。そして受賞を果たした『サウルの息子』は27年ぶりのハンガリーからの候補作で、『メフィスト』以来となる34年ぶりの受賞となりました。

他にも、短編アニメーション賞で受賞した『ある熊の物語』は3年前の『NO』以来となるチリ映画のオスカー候補で、初受賞。短編ドキュメンタリー賞に輝いた『A Girl in the River : The Price of Forgiveness』はパキスタン映画であり、惜しくも受賞を逃した短編実写映画賞の『Shok』は初めてオスカー候補にあがったコソボ映画でした。

さらに記録を伸ばせるか


『レヴェナント 蘇えりし者』で撮影賞に輝いたエマニュエル・ルベツキは、『ゼロ・グラビティ』、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』に続いて同部門3連覇を達成。アカデミー賞史を振り返ってみると、短編アニメーション賞をウォルト・ディズニーが8連覇しているというとんでもない記録がありますので、比較はできませんが、当然のように撮影賞の中では新記録。

レヴェナント:蘇えりし者


(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation.  All Rights Reserved.


今回8度目の候補で3回目の受賞ということですので、レオン・シャムロイとジョセフ・ルッテンバーグが持つ4回という記録に王手。過去に『ニュー・ワールド』『ツリー・オブ・ライフ』で2度候補入りを果たしているテレンス・マリック作品が、2016年は2作控えている(うち一本は年内公開なるか微妙なところですが)だけに、すぐに記録を更新する予感も……。

また、『ヘイトフル・エイト』で作曲賞を受賞したエンニオ・モリコーネは史上最高齢の87歳でのオスカー受賞。まだコンスタントに映画音楽を手掛けているので、90代での候補入りも夢ではない。同じく作曲賞といえば、『スターウォーズ/フォースの覚醒』で候補入りを果たしたジョン・ウィリアムズは今回で記念すべき50回目のノミネートとなった。

一方、名誉ではあるが釈然としない記録を更新し続けているのが撮影賞候補に入ったロジャー・ディーキンスと、作曲賞候補に入ったトーマス・ニューマンである。両者ともに13回目のノミネートとなった今回も、受賞には至らなかった。ロジャー・ディーキンスの方は、ジョージ・J・フォルシーに並ぶ、撮影賞の受賞なしでのノミネート回数のタイ記録となったのだ。

はやくも気になる第89回アカデミー賞


かなり気が早いと言われるかもしれませんが、次のアカデミー賞で有力視されるであろう作品をいち早く紹介しようと思います。

まずは現時点での最有力候補と言われているのがクリント・イーストウッド監督の最新作『Sully』。主演にトム・ハンクスを迎え、2009年に実際に起こった航空事故「ハドソン川の奇跡」を映画化。

対抗株には延期に次ぐ延期で2016年公開となった、マーティン・スコセッシ監督の『Silence』でしょうか。日本でも1971年に映画化された遠藤周作の原作を、リーアム・ニーソン主演で再映画化。制作が難航した作品は敬遠されがちな傾向があるオスカーで、どこまで好勝負できるか気になるところ。

他にも、『レッズ』で旋風を巻き起こしたウォーレン・ビーティの久々となる監督作や、サンダンス映画祭で高評価を獲得して、フォックスサーチライトが高額で配給権を獲得した話題作『The Birth of Nation』、昨年『ジュラシック・ワールド』を大ヒットに導いたコリン・トレヴォロウ監督の新作で、今年『ルーム』で高評価を獲得した名子役ジェイコブ・トレンブレイが出演する『The Book of Henry』などにも注目。

これからまた一年間、次々と変動を繰り返すオスカー戦線から目が離せない。

(文:久保田和馬)

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