映画コラム

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2016年06月02日

「ディーン・フジオカさんのスタミナと集中力に驚嘆」、『NINJA THE MONSTER』落合賢監督インタビュー

「ディーン・フジオカさんのスタミナと集中力に驚嘆」、『NINJA THE MONSTER』落合賢監督インタビュー

いよいよ本日6月2日よりDVDセル&レンタルスタートとなった、ディーンフジオカ主演の『NINJA THE MONSTER』


海外マーケット向けに製作をされるも、国内での熱い声もあり2月に急遽劇場公開された話題作です。シネマズではDVDセル&レンタルスタートに合わせて落合賢監督へインタビューを行いました。作品への声の率直な感想や主演を務めたディーンフジオカさんについての印象やエピソードなど様々伺うことができました。

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ー映画が公開されてからご覧になられた方からの声(感想)は耳に入ってこられましたか。

落合賢(以下 落合):モントリオールのファンタジア国際映画祭でワールドプレミアを行った時の反響はすごかったですね。700席のシアターが満員で、上映後に割れんばかりの拍手を頂いたのは、本当に嬉しかったです。また、日本での劇場公開後、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを通してたくさんの方からコメントを頂きました。主演のディーンさんの人気もあって女性ファンの方のコメントが多く、ディーンさんの忍者姿がかっこよかった、森や湖の映像が美しかった、アクションがドキドキ、ハラハラしたというお客さんもたくさんいたようです。


ーアクション映画、ではなくアクションも含まれたヒューマンドラマに仕上がっていました。監督に決まるまでのエピソードや演出の方針などについて教えてください。

落合:松竹のプロデューサーである秋田周平さんは、アメリカの大学を卒業しており何年も前から一緒に映画を作ろうと話をしていました。ちょうど「太秦ライムライト」の準備中に、松竹で海外市場をターゲットにした時代劇を企画している、というお話をいただき、秋田さんと脚本家の土橋さんと三人で一からストーリーを練りました。

過去の監督作では、短編・長編含めほぼ必ず『主人公が自分の居場所を探し求める』という普遍的なテーマを根底に描いています。今回の作品も例外ではなく、忍者禁止令の中、存在すら否定された忍びと、藩を救うために半強制的に江戸に行かされる姫が、短い旅路の間で寄り添いあっていきます。日本で生まれ育ち、19歳からアメリカに住んでいる僕にとって、“居場所を求める旅”というのは、人生を通しての問いかけであり、それが色濃く映画に反映されていると思います。

また、従来の忍者映画のように、「主人公がモンスターと戦って勝つ」という王道のストーリーからはあえて外して、忍者と姫のほのかな恋模様を主軸にしているため、モンスターに「勝つ」ということよりも「負けないで、姫を守る」ということが忍者の最大の目的となっています。そのため、演出もディーンさんと森川さんの感情の機微に重点をおきました。作り込んだお芝居にならないようリハーサルをなるべく行わずに、ぶっつけ本番でカメラをできるだけ回しました。


ーファンタジーに寄せること無く、リアルな世界観を大切にされていたように感じました。その着地点にした意図を教えて下さい。

落合:秋田さんと土橋さんと、今回の作品のトーンについて、企画開発の段階から念入りに議論しました。最終的には、地球外からの得体の知れないモンスターが村人を襲うという設定があるため、ファンタジーであることは避けられないのですが、忍者やモンスターを出来るだけリアルな方向で描こうという結論になりました。忍者と姫の一行をドキュメンタリークルーが追いかけるような撮影方法にしたので、僕と撮影監督の二人でカメラを同時に回しました。

また、レンズもワイドレンズを使わず、すべてロングレンズで撮ることによって、カメラと役者さんたちとの距離をある程度離したことで、役者さんたちが自然な演技ができるような方法も取りました。

そして、照明も出来るだけ自然光のみにしたことで、夜のシーンのダークな雰囲気が作品の現実感を与えました。ただ、映像があまりに現実的すぎると、CGのモンスターと合成した時に違和感が生じてしまうので、グレーディング(色調整)では、森や衣服の色彩が現実とは違った雰囲気を醸し出すように特殊な加工をしました。


ー映画の中で大切にされた日本らしさ(映像の美しさ)などはありますか。

今回の作品は、忍者と姫が長野藩から江戸へ向かうロードムービーでもあります。そのため、撮影のほぼすべてのシーンは、京都近辺の森で行いました。江戸時代の美しい日本の景色を出来るだけ再現出来るようCGで現代的な建造物を消しました。また、僕は宮崎駿監督の「もののけ姫」が大好きなのですが、あの映画に出てくる少しファンタジックな日本の景色を作り上げるために、VFXスーパーパイザーと試行錯誤しながら複数の日本の景色の映像を一枚の絵に合成して作りました。

また、今回の作品では森の中の移動が多いということもあって、森という設定そのものがキャラクターのような面を持つよう、陽の光、月明かり、また霧などを最大限に利用して、その怖さや不気味さを最大限に引き出そうと試みました。


ー『太秦ライムライト』の経験は何かプラスに働きましたか。

落合:『NINJA THE MONSTER』を作るにあたって、『太秦ライムライト』での経験は様々な面で活かされました。「太秦ライムライト」は時代劇を制作する職人さんたちを描いた現代劇でしたが、その過程の中で、時代劇を制作する大変さを勉強させていただきました。鬘をつけるにも、着物を着るのにも、現代劇の倍近くの手間と時間がかかりますし、それによって出てくる制作時間の制限なども考慮しなければならないこと。立ち振る舞いや、殺陣についても『太秦ライムライト』で、一度経験していなければ、『NINJA THE MONSTER』は違った作品になっていたと思います。どちらの作品に共通して言えるのは、太秦の経験豊富な職人さんに支えられて、やっとこの作品が出来たということです。


ー主演のディーンフジオカさんに決まった経緯を教えて下さい。

落合:僕がディーンさんと初めてお会いしたのは、5年以上前になります。第一印象は、物腰が柔らかいのに、非常に芯の強い方だなという感じでした。それからしばらくして、ジャマイカ料理を一緒に食べることになり、ディーンさんの生い立ちや人生観を知れたのですが、中国、台湾、インドネシア、アメリカなど様々な国を股にかけてご活躍されていることもあり、幅広い知識や様々な武芸の嗜みなどを本当に引き出しの多い人なんだな、と感動しました。その時、必ず一緒に仕事をするためにお互い頑張ろう、と約束したのですが、この映画は、お互い努力すれば夢は叶えられることの証なのかもしれません。


ー主演のディーンフジオカさんについての印象や撮影中のエピソードを教えて下さい。

ディーンさんは感覚だけに頼るのではなく、リサーチやトレーニングをしっかりと行い、時間をかけて丁寧に役作りをしていくタイプの役者さんで、撮影前にも伝蔵の背景や心意について様々な可能性を語り合いました。現場でも色々なアイディアを出してくれるので、次のテイクはどんな伝蔵の一面を見せてくれるのだろう、とモニターの前で一観客として、ワクワクしていました。

狂気じみた村人たちとのバトルシーンでのディーンさんは特に活き活きとしてましたね。深夜の撮影にもかかわらず、疲れを見せるどころか、回数を重ねるごとに完成度を上げていき、難しい殺陣をほぼNG無しでこなしていくディーンさんのスタミナと集中力は驚嘆しました。 また、ろうそくの光がどんどん消えて暗くなっていく設定だったので、終盤ではほぼ真っ暗になっており、足場の悪い小屋で鋭い立ち回りをするディーンさんの運動神経はアクションチームも感心してました


ー森川葵さんについての印象や撮影中のエピソードについても教えて下さい。

落合:幸姫役のオーディションに来て頂いた星の数ほどの女優さんの中でも、森川さんのお芝居は一番輝いていました。森川さんが演じられる幸姫を観客の一人としてぜひみてみたい、と感じ、プロデューサーの秋田さんや脚本家の土橋さんとも意見が一致しました。京都の凍える寒さにもかかわらず、薄着で必死に耐えながらお芝居をする葵さんの毅然とした姫姿は、ディーンさんの忍者姿に負けず劣らずかっこよかったです。

作品上で紅一点の女性キャラでしたが、男性スタッフの多いこともあり、現場でも姫、と呼ばれていましたね。感情的なお芝居が素晴らしかったのはもちろんのこと、ただ歩くだけのシーンでも姫の感情の機微が手に取るようにわかるような繊細なお芝居をされていたには感動しました。ディーンさん演じる忍者に少しずつ惹かれていくのが、森川さんの大きな瞳を通して観客に伝わっていったのではないか、と思います。撮影時はまだ10代でしたが、作品が完成してからお会いして、すごく大人になっていたのにも驚きました。またお仕事をご一緒させて頂きたい素敵な女優さんの一人です。


ーモンスターという言葉で鑑賞を躊躇されている方も一定層いらっしゃると思いますがもったいないなと思います。そういった方々へ何か一言お願い致します。

落合:たしかにタイトルで、モンスターという言葉は出てきますが、前述したようにこの映画はモンスターと忍者のバトル映画ではありません。どちらかというと、忍者と姫の悲哀の物語にモンスターが登場するという感じです。なので、いわゆるモンスター映画、みたいな演出はしていませんし、ドキドキ、ハラハラはするかもしれませんが、人が血だらけになってモンスターに殺されるといった表現は全くしていません。

ホラー映画やモンスター映画が苦手な方な方はたくさんいらっしゃるとも思いますが、どちらかというと「ボディーガード」のような恋愛映画に近いと思います。タイトルの印象のみで喰わず嫌いをせず、ディーンさん演じる斬新な雰囲気の忍者と森川さんの演じる繊細な姫との恋物語を素直に楽しんでいただきたいです。


ー映画の公開が終わり、いよいよソフト化です。これからご覧になられる方へ一言お願い致します。

落合:この映画は、企画の立ち上げからかからわせて頂いたオリジナル映画ということだけでなく、初めての時代劇監督作ということもあって、感慨もひとしおです。主演のディーンさんや森川さんの他作品で見られない新たな一面を描いた作品で、本来の時代劇とは一風変わった忍者映画に仕上がったと思います。都市によっては、残念ながら劇場公開が行えなかったこともあり、ソフト化によって全国の皆様のご家庭で楽しんでいただけるのは本当に嬉しいです。引き続きご声援していただきますよう心よりお願い申し上げます。


『NINJA THE MONSTER』は本日6月2日よりDVDセル&レンタルスタート。限定上映で鑑賞できなかった方はこの機会に是非ご覧ください。

(取材:柳下修平

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