インタビュー

2017年01月19日

『東京ウィンドオーケストラ』 中西美帆インタビュー、お気に入りのセリフは「ギャラ泥棒」

『東京ウィンドオーケストラ』 中西美帆インタビュー、お気に入りのセリフは「ギャラ泥棒」

『東京ウィンドオーケストラ』で初主演を務めた、いま注目の女優・中西美帆。本人はよく笑う笑顔の似合う女性ですが、役柄は打って変わってぶっきらぼうで全然笑わない女性。そんな中西さんに役作りやお気に入りのシーンなどについて伺いました。





ー初主演はどんなキャラクターですか?

中西 同世代の女の子で、淡々としていて日常に苛立ちやもどかしさを抱えつつ抜けだせない日々を送っている子。上司とも不倫とか怪しい関係にある、リアルな今時の女の子です。
この映画は最近の映画のように情報量が多いわけではなく、難しいことを考えず、肩の力を抜いて見られて笑える作品。物語は単純だけど、いい意味で裏切っていく展開になっています。最終的に楽団の演奏が上手くなるわけではなく、劇的にヒロインの樋口詩織が変化するわけでもないですが、日常の面白さがある映画で、最後は暖かい気持ちになれます。

ー何か役作りはされましたか?

中西 横浜の町役場に行って実際に話を聞いてみました。屋久島についてからも役場で話を聞いたりしました。また坂下監督から楽団員役の人と仲良くならないようにと言われました。ぶっきらぼうな役なので突き放すというか、理由もなくこういう子もいるけど、役作りする上では理由があったほうが納得ができます。島の人たちに話を聞くと、若い人や都会の人とのコミュニケーションの取り方がわからないと仰ってました。それが腑に落ちて、詩織も楽団の人と初対面のときにどういう風にコミュニケーションを取っていいか分からないのじゃないのかと思いました。
また屋久島で撮影が始まる前にドライブする時間を頂いて、島の印象や土地に住む人々の印象、空気感などを肌で感じることができました。
ロケ地になった役場の周りに水が流れているのですが、その水がきれいで30分くらいポ〜と中西美帆としてではなく、樋口詩織として座り、どんなことを考えて座るのかと思いを巡らせていました。

ー撮影中、共演者さんと何か面白かった出来事はありましたか?

中西 詩織と楽団員は対立する役柄なので仲良くいならないでと言われていたけど、2週間同じホテルに泊まり、一緒に食事をしていたので仲良くなってしまった。詩織は笑わないけど、私は笑上戸でツボが浅いです。皆仲良くして、本番回っていないときは面白いことをやりあったりしているのに、カメラが回ると楽団員全員が私を睨んだりするのですが、それがおかしくて吹き出しそうになりながら演じていました。

ー劇中のように、もし注文していたものと違うものが届き、直前まで気がつかなかった場合どうしますか?

中西 台本読んだときに、真っ先に自分ならどうしようかと考えてみると、上司に相談するタイプだと思います。しかし、詩織のこのまま本物としていっちゃうなどの行動は、肝が座った女性と感じました。
完成披露試写などのアンケートでは、自分だったらどうするかと考えたという感想を多くいただきました。私自身は本物としていきましょうというのはないんですが、多分中にはやる人がいると思うし、なさそうでありえそうな絶妙なところを突いた映画だと改めて感じました。

ー普通なら上司に相談しますよね。

中西 どんどんヒロインが招いたトラブルで嘘に嘘を重ねて追い込まれていくのですが、そういうところも人間臭くて愛おしいと感じました。詩織がバレて吹っ切れる瞬間が好きで、きっと上司に別れましょうといったのも、好きで付き合っていたわけではなく、惰性でダラダラとした生活を続けていて、自分が招いたトラブルがきっかけで、吹っ切れもういいやと思った瞬間だと思います。そういう意味で上司の一歩先をいって成長した瞬間で好きです。

ー好きなシーン、お気に入りのシーンは

中西 さっき言った詩織の心情が変わる瞬間のシーンが好きです。あと冒頭と最後の屋上のシーンのセリフも気に入ってるシーン。最後のセリフの「屋久杉になってしまうわ」というセリフはちょっと吹っ切れた感じで言おうかと思ったけど、最初と同じテンションでいうことになった。でも最後に鼻歌を歌うので、一気にほっと暖かい気持ちになったというか、日常の小さな小さなことを描いた映画ですが、見終わったあとに暖かいほっこりとした気持ちになる映画だと、鼻歌で感じることができると思います。
あとは、「ギャラ泥棒」というセリフが大好きです。普通に生活してたら言わないセリフですよね。




ー映画の見所は

中西 大きく何かが激変するわけではないけど、日常のおかしみというか、そこが見所だと思います。楽団員がわちゃわちゃやっていても詩織だけは冷めて氷のようなのも面白いです。私にとっても初主演だし、ヒロインとして映画を撮影するにあたり、ここまで仏頂面でぶっきら棒にやるのは勇気が必要でした。ヒロインをやるからには見てくれる人に愛されるキャラでいたいし、不安でもありました。でも楽団員と詩織のギャップが面白いし、女性の方に共感してもらうことが多くて、リアルな女性像だと思います。媚びてないというか、腰掛けで仕事をしながらめんどくさいと思いつつこなしている。この方が見てる人には分かる分かると感じてもらえると思う。ある意味ギャラ泥棒って酷いと思うけど、「普通気がつくでしょ」ってセリフも、本当にその通りだと思う。これってオリジナルストーリーだから坂下監督ってすごい。

ーこれから映画を見る方、楽しみにしている方に一言

中西 撮影から公開まで長いようであっという間だった。私も初主演ということで思い入れがあり、愛おしい作品。キャスト全員がこの作品を愛しているのが嬉しくて、公開前から皆で集まって宣伝活動をしていて、居酒屋や喫茶店にポスターを貼らせてもらえるか交渉したり、知り合いに前売り券を買ってもらったりしています。映画がヒットするかどうかは分からないけど、手作りでやってきたのが嬉しいし、その思いは見る人にも伝わると思う。作品自体も楽しいし、皆さんに楽しんでもらえると信じています。




インタビュー後記


初主演を射止めた中西美帆さん。本当に仏頂面で笑わないヒロインとは対照的によく笑う女優さんでした。「1日1本は名作映画を見る」という中西さん。最近見て気に入った映画は何かと質問すると、『アデル、ブルーは熱い色』を挙げられました。映画館で3回見て、さらにDVDも買われ、主人公の恋人役を演じたレア・セドゥに惚れ込み、何回も鑑賞されているそうです。

『東京ウィンドオーケストラ』は都内では1月21日から、順次全国公開。

(取材・文・波江智)


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