映像作家クロストーク

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2023年08月31日

俳優・柳楽優弥と長久允 監督が語り合う、幽霊たちとの楽しい暮らし。

俳優・柳楽優弥と長久允 監督が語り合う、幽霊たちとの楽しい暮らし。

俳優・柳楽優弥がホストの幽霊で主人公・桜田を演じた9月1日からWOWOWで放送・配信の連続ドラマW-30『オレは死んじまったゼ!』。その監督は『DEATH DAYS』(2021)『そうして私たちはプールに金魚を、』(2017)など様々なユーモラスで衝撃的な作品を生み出してきた長久允。

今回は二人に集まってもらい、このドラマで描かれる楽しくてぬるい幽霊たちの暮らしについて、長久監督のクリエイションが好きだと語る柳楽優弥が本作に参加した心境などを聞いた。

https://wod.wowow.co.jp/content/135850
「オレは死んじまったゼ!」の第一話はこのリンクでも視聴可能

長久允のフィルターから見る、生と死の世界線

長久允

ー長久監督は、これまでも「生と死」をテーマにした映像作品が多いですが、まず今回の作品を作ったきっかけを教えてください。

長久允(以下、長久):「生と死」を狙って書いてきたわけではないですし、例えば、それ以外のジャンルでいうと「恋愛もの」とかに興味がないわけではないんです。けど、もし恋愛の話を書いたとしても生き死にのなかにおける恋愛を書いてしまうというか。どうしても「生と死」について考えてしまうんですよね。前作『DEATH DAYS』(2021/*1)を作ったときに、死んだらどうなるかという話をしているシーンがあるんですが、こんなにテクノロジーが進化している現代でも、誰もわからないことじゃないですか。だからこそ、興味が湧くし、面白いなというのを日々思いながら過ごしていて、そんなときに去年、谷川俊太郎さんの『ぼく』という絵本を読んだんです。ひとりの少年が自死してしまう話なんですが、自死に関して良いも悪いも断定しておらず、「死」というものについてどこか宇宙的だったり、不可思議な部分と真摯に向き合って表現されていたんです。それにちょっと衝撃を受けたのもあって、日頃から考えていた死後の世界はどうなっていくのかという部分をストーリーとして書きたいなという気持ちが芽生えました。

*1……長久監督の短編作品。自分が死ぬ日(デスデイ)に向き合っていく20歳から40歳までの主人公を森田剛が一人で演じる。

ドラマ『オレは死んじまったゼ!』より、幽霊になったものたちが、蕎麦をすするシーン

長久:どうしても死んだあとっていうのは、死んだ人がある種被害者ではないけど、基本的には悲しいことが待っていると思われますよね。けど、これは誰もわからないことで、悲しいとも限らないというか、今回の話みたいに、幽霊になったその先は、楽しくゆるくぬるく暮らしている可能性もあるじゃないですか。作家としては、その部分を掲示したいと思いました。ある種、人間と同じような葛藤が幽霊にもありつつも楽しく暮らしているコメディを書きたいなっていうのがスタートです。

なので今回、幽霊ってこうかもしれない、死んだらこうなるかもしれないというのを、あくまでもゆるく作ることで、残された側はもっと気楽に死を捉えて、気負いせずに過ごせるようになるといいなと思ったりしています。死んだってこんなもんかもしれないなっていうくらいのテンションで考えてもらえたらなと。

柳楽優弥

ー柳楽さんが長久監督の作品に参加した感想を教えてください。

柳楽優弥(以下、柳楽):長久監督の作品を知ったきっかけは、サンダンス映画祭で賞を受賞していた『そうして私たちはプールに金魚を、』(2017/*2)でした。この作品を劇場で観て、長久監督のクリエイションがすごく好きだなと思っていたんです。なので、今回こうして『オレは死んじまったゼ!』で、お話をいただいたときは、長久組の作品に出られるというので、まずはテンションが上がりましたね。幽霊の設定というのも、怖いサスペンス的なものではなくて、長久監督ならではの世界観で自分がどう幽霊を演じられるのかをとても楽しみにしていました。

*2……サンダンス国際映画祭ショートフィルム部門の日本人初グランプリを受賞した長久監督作品。中学校のプールに400匹の金魚を放った4人の女子高生に迫る25分。

長久:仰ってくださっているように、自分の映画も劇場で観てくださっていると聞いていましたし、僕自身も柳楽さんが出ているフィルムグラフィーを色々観てきて、立ち居振る舞いが好きだったので、今回こうしてご一緒できて嬉しかったです。

柳楽さん演じるホストの「桜田」が事故死するシーン

長久:いつも人物像をイメージしながら脚本を書いていくんですが、柳楽さんに演じてもらうことで、想像してなかったノイズが生まれたなと思います。桜田というホストの役柄をお願いしましたが、結構難しかったと思うんです。ホストでかっこいいのに、どこかチャーミングな要素があったり、現代社会に沿った価値観にアップデートされてなかったり。だけど、そんなところに桜田の憎めなさがある。柳楽さんが桜田になると、そういった人間の不安定さや偏った部分が、セリフだけでなく、身体の動き方や表情、スピード感など、言葉では表現できないところまで、バンっと定着してもらえた気がしました。なので、桜田自体も思っていなかった方向に転がっていき、撮影中も「ああ、桜田はそっちにいくんだ」と、柳楽さんに桜田というホストを演じてもらえて、すごく面白かったですね。

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