映像作家クロストーク

SPECIAL

2023年08月31日

俳優・柳楽優弥と長久允 監督が語り合う、幽霊たちとの楽しい暮らし。

俳優・柳楽優弥と長久允 監督が語り合う、幽霊たちとの楽しい暮らし。


死後の世界を描くことで浮かびあがる“現代社会のスピード感”


ー死後を見つめた世界が舞台でしたが、逆に生きることについて考えたことがあれば教えてください。


長久:今回のテーマにも近いと思うんですが、日々の暮らしにユーモアを持ってなるべくコメディッシュに生きていくことが大事だと感じています。今まで作ってきた作品は、『そうして私たちはプールに金魚を、』のような、その瞬間のエモーショナルさを生きると捉えながら色々作ってきたんですが、その前提としては長く永続的に続く暮らしをどう楽しく生きるかが大事だと思っていて、この作品もそういうところに基づいているんです。それを改めて形にしながら自分でも自身の人生に反映できるようにしたいと思いながら作りました。

柳楽:この作品に参加して、長く続いていく持続可能性や、他者を否定しない考えがやっぱり好きだなと思いました。自分もそうでありたいし、きっと世の中もそうでありたいと思っている人が実は多い気がします。現代社会は、早いペースで物事が進んでいくので、僕たちもスピーディでいなければならないとつい思ってしまうけど、実はこのドラマの幽霊たちみたいなペースで、不器用ながらもひとつずつクリアしていくことが自然なことだと思うんですよね。死後の世界が描かれているのに、観た後にちょっとホッとできたり、落ち着いてゆっくり過ごそうと思えるような感覚になったので、ドラマを観た方にはその部分を感じてもらえていたら嬉しいです。「オレは死んじまったゼ!」というタイトルからは感じられない世界が広がっていると思います(笑)。

長久:生き死にの話で、ましてや幽霊たちの話とは思えないほど内容は真逆ですよね(笑)。

柳楽:そこがまた長久さんのユーモアなんだよな。

長久:ゆるくへらへらと生きるべきだと。それを幽霊でやってもいいかなっていう。

柳楽:絶妙ですよね。絶妙なファンタジー感。これが幽霊だという設定ではなかったら、普通に完結していたと思うし、深みが出るなと思いました。


ー最後に、お二人が最近「生きてる」と、実感したことを教えてください。

長久:昨日のことなんですけど、子どもと公園に行ったときに感じた緑の匂い(笑)。生きてるな〜って実感しました。

柳楽:この現場に入るくらいのタイミングでトランペットを始めたんですが、吹いてるときが楽しいですね。ちなみにそのタイミングで川栄さんは韓国語を勉強し始めて、加賀(壮也)さんもトランペットをやるとか話してたけど、多分やってない気がします(笑)。

長久:ちなみに現場にピアノが置いてあって、柳楽さんが出ないシーンのとき、「カット〜」って声がかかると、柳楽さんがピアノを弾き始めるんです。

柳楽:「戦場のメリークリスマス」練習してました(笑)。

長久:柳楽さんが撮らなくてもいいシーンでもずっと近くにいて(笑)。とにかくずっと弾いてたんですよ。賀屋さんにもよくちょっかい出してました。

柳楽:長久さんはサックスを吹くんですよね。いつか一緒にジャズバンド組めたら面白そうですね!

Profile


柳楽優弥
俳優
1990年3月26日生まれ。2004年公開の是枝裕和監督作「誰も知らない」で、第57回カンヌ国際映画祭の男優賞を受賞。2016年公開の「ディストラクション・ベイビーズ」では第38回ヨコハマ映画祭と第90回キネマ旬報ベスト・テンの主演男優賞を獲得。ディズニープラスで配信中のドラマシリーズ「ガンニバル」に主演。WOWOWのドラマ「オレは死んじまったゼ!」にも主演。出演した映画『ゆとりですがなにか』が今年の10月13日に公開予定。

長久允
映画監督
東京都生まれ。監督作品に『そうして私たちはプールに金魚を、』(第33回サンダンス映画祭短編部門グランプリ)、『ウィーアーリトルゾンビーズ』、『DEATH DAYS』など。近年ではドラマ『FM999』や、GUCCI『Kaguya By Gucci』、KID FRESINO+Aマッソ『QO』の演出なども手掛け、活動は多岐にわたる。 https://nagahisa.mystrikingly.com/

(撮影=持田薫/取材・文=小倉冬美香)

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