インタビュー

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2023年10月13日

注目の若手俳優・林裕太が主演映画『ロストサマー』で示した“現在地”と“これから”

注目の若手俳優・林裕太が主演映画『ロストサマー』で示した“現在地”と“これから”

中澤梓佐・麻美・椿弓里奈・関口アナンの同い年の俳優4人が設立した「889FILM」が、結成6年目にして初めて長編映画を手がけた。

題して、『ロストサマー』。舞台は、人情味あふれる高知の街。メインキャラクターは3人。他人の金品を自分のものにしながら、当てもなくふらつく若者・フユ。妻に先立たれるも、生前の彼女が自分に課したルーティーンを律儀にこなす老人・秋。立派な一軒家に住んでいながら、夫には見向きもされず寂しさを抱く主婦・春。年代も立場も違う男女が、移ろう季節の中で偶発的にめぐりあい、いつしかそれぞれ微かにして確かな希望を抱きはじめるさまをきめ細やかに描く滋味深き一篇が、堂々の完成を見た。

本作で主人公・フユを演じた林裕太は、若き実力派と脚光を浴びているネクストブレイク候補の1人。気づけば姿を目で追っている不思議な魅力を放つ彼に、作品についての話はもちろん、芝居との向き合い方や役者として今後目指す地平など、じっくりと多々語ってもらった。

年上の役も「自分の経験や感じ方の延長線上で芝居をしたい」

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──髪の色が違うだけで、全然印象が変わりますね。

林裕太(以下、林):あ……黒い髪のほうが幼く見えますか?

──いえ、『ロストサマー』で演じた主人公・フユの金髪姿のほうが、あどけなく見えました。

林:あっ、本当ですか? 役でそういう風に見ていただけると、うれしいです。

──わりと林さんご本人は実年齢よりも年下に見られることが多いですか?

林:そうですね、結構若く見られがちです。でも、特にそこに対して何か思うわけでもなくて。むしろ、学生役をできる間にたくさんやっておきたいなと思っているので、そう考えると有利なのかな、と──(笑)。

──なるほど。ただ、役者さんはご自身の年齢に対して無自覚だったりしませんか? 役によって年齢も変わりますし……。

林:そうかもしれないです。ただ、『ロストサマー』のフユに関しては明確な設定がされていて、撮影していた当時の僕と同じ年齢ということになっていました。ちょうど、22歳になったばかりだったんですけど。

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──そうだったんですね。そういった細やかなディテールは、お芝居に作用したりするものなのでしょうか?

林:どうだろう……年齢的なもので言うと結構ざっくりというか、『ロストサマー』のフユの場合は、あんまり年齢を意識しなくてもいいのかなっていうふうに捉えていました。でも、普段ほかの役を演じるときは──16歳から22歳ぐらいまでの間で言うと、どの年齢にもそれぞれハイライトがあるんですよ。高校に入った年、高校を卒業するタイミング、大学生活を過ごしているとき、周りが就職し出した時期……と、その時々で焦りがあったり、考え方も変わってくるので、その辺の年齢設定が細かくあると役に入るにあたっては助かったりしますね。

──人生で通ってきた年齢であれば、経験の引き出しから芝居に反映させることもできるでしょうけれども、『アクターズ・ショート・フィルム3』(WOWOW)で中川大志監督が演出を手がけた『いつまで』では、年上の役でした。そういう場合は……?

林:自分の中で大人びているところであったり、先輩の話を聞きつつ「自分がもう少し大人になったら、こういう考え方になるんじゃないかな」と想像したり考えながら、演じようと心がけてはいて。なるべく、自分の経験や感じ方の延長線上で芝居をしたいんですが、どうしても難しいときは想像して、大人っぽい所作だとか自分の子どもっぽい動きを隠そうと意識して演じます。

林裕太が現場で一番大切にしていること

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──なるほど。あの…初出演した映画『草の響き』(21年)の斎藤久志監督から「演じるな、芝居をするな」と言われたそうですが、その言葉が今も心に残っていたりします?

林:今、僕が現場で一番大切にしているのは、「自分に起こることに対して正直であること」なんです。それが斎藤さんがおっしゃっていた「芝居をしないこと」に通じるのかな、と思っていて。もちろん事前に準備をしますが、それは現場に立ったときに準備段階でできるはずのことを考えながら芝居することを避けたいからなんですよ。考えずに演じるためには、現場に立つ前に準備できることをできる限りしておいて、本番では無意識に動けるような状態にまで持っていくことが必要なんじゃないか、と。そこで初めて「演技をせずに芝居する」域に足を踏み入れられるのかなと思っているんです。

ただ、準備したからといって緊張してしまったり、「自分は、こうしたい」と芽生えた作為がなかなか払拭できなくて苦戦したりする場合もあって。準備したことを一度捨てて本番に臨むというのは、そのくらい難しいことですが、忘れずに心がけていることの1つではありますね。

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──そういう意味では、おそらく『ロストサマー』の芝居は難しかっただろうなと想像していて。というのは、セリフが高知の方言で構築されていたから、どうしてもアクセントやイントネーションを意識せざるを得なかったんじゃないかな、と……。

林:おっしゃる通りで、実際そこが大変でした。「ここでアドリブでひと言足して、新しいことを起こしてみたい」という気になっても、「でも……土佐弁では何て言うんだろ!? 言っちゃって大丈夫かな?」って躊躇してしまうという──。そういう事情から、『ロストサマー』ではセリフでのアドリブはあんまりないんです。ただ、方言を話すことによって役の輪郭がハッキリするので、スラスラと話せるようになっている自分をイメージしながら覚えていく時間は楽しかったですね。で、自分では完璧のつもりで本番に臨んでみたら、中澤(梓佐=メインキャストの1人・春役にして『ロストサマー』のプロデュースを手がける。高知出身で、方言指導も担当した)さんから「全然違う」とダメ出しされて、「うわっ、マジか……」って落ち込むという(笑)。イントネーションを直すことはできても、芝居になるとまたニュアンスが変わってきてしまうので、そういった面で苦労しました。

──意識下から離れた芝居をしたいのに、意識下に置く必要がある……みたいな矛盾を抱えている、と?

林:だからこそ、地方が舞台の作品で準備に時間を掛けられる場合はできる限り事前に現地に入って、住んでいらっしゃる人たちとたくさんお話をすることで、“生活の中で生きている言葉”を身につけることが大事なんだな、と今回の作品では実感しました。

「100%の気合いを監督の作品に寄り添わせることが大事」

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──確かに……。なお、『ロストサマー』の麻美監督の演出や言葉で、印象に残っていることはありますか?

林:麻美さんはありがたいことに、僕のやることに対して信頼を置いて、基本的には自由に演じさせてくださったんです。それを僕の芝居に対するリアクションや態度で示してくれたので、心強かったですね。カットが掛かった後に「よかった」「最高だった」と言葉を掛けてくれることが、フユを演じる上で力になったと言いますか……。なので、「ここはこういうふうにしてほしい」「ここは、こういう気持ちで」といった演出は、ほとんどなかったと記憶しています。すごく大事なシーンを撮ったとき、フォロー的な意味合いで少し言われたぐらいで、とにかく自由度が高い現場だったなという印象ですね。

──それはオーディションではなく、『草の響き』での芝居を評価されて、フユのイメージにピッタリだとキャスティングされたことも大きかったんでしょうね。

林:そうだったとしたら、ただただありがたい気持ちしかないですね……。

──ただ、役者さんの性(さが)として「演じたく」なってしまう、表現欲がむくむくと首をもたげてくる場合もあると思うんです。

林:確かにそこは難しいんですけど、自分はどの作品でも気合いを入れて取り組むことを前提としていて。気合いを入れることと自我を見せることは、意味合いが違うじゃないですか。僕の場合は100%の気合いを監督の作品に寄り添わせることが大事だと考えていて、その方向性で芝居をしていけば空回りしなくて済むのかな、と──けっして多くはない経験ながらも感じていたりもするんです。それは現場の環境だったり、監督やスタッフの方々、俳優部のみなさんとの関係値によって変わってもきますが……。

──「こういうことをすれば、盛り上がるんじゃないか」みたいに欲をかくと、かえって空回りする……的な感じですか?

林:要求されたら精一杯応えようとしますけど、それも準備をしていなければできなかったりするので、「もしかしたら、こういう要求があるかも」と予測して、こっそり準備をすることも必要なのかなと思ったりもします(笑)。

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