インタビュー

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2023年11月08日

「しおれている花が開くイメージ」『大奥2』愛希れいかが体現する徳川家定の“初恋”

「しおれている花が開くイメージ」『大奥2』愛希れいかが体現する徳川家定の“初恋”

静謐な美しさの中に、凛とした強さがある。目の前にいる愛希れいかは、女将軍“家定”の生き写しだった。

よしながふみの漫画を原作に、若い男子のみが罹患する奇病・赤面疱瘡の蔓延で男女の立場が逆転した“江戸パラレルワールド”を描くNHKドラマ10『大奥』。11月7日放送の第16話から「幕末編」が開幕し、愛希演じる13代将軍・家定が登場となる。

老中の阿部正弘(瀧内公美)、大奥総取締の瀧山(古川雄大)、正室の胤篤/天璋院(福士蒼汰)と多くの人に支えられた生涯を送る家定。「すごく多面的で複雑な人」と語る彼女を愛希はどう演じたのか。役づくりはもちろんのこと、共演者との撮影や現在に至るまでのキャリアを振り返ってもらった。

愛希れいかが思う『大奥』の魅力とは

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――改めて、家定役でオファーを受けたときの率直な思いをお聞かせください。


愛希れいか(以下、愛希):よしながふみさんの原作が素晴らしいのはもちろん、ドラマのシーズン1も大変好評と伺っていたので、私で大丈夫なのかなという不安が大きかったです。また私は普段、舞台を中心に活動させていただいていて、映像作品はまだまだ不慣れなので、そういった意味でもすごく緊張感がありました。

――漫画自体がすごく大作ですもんね。愛希さんは初めて読んだときにどのような感想をいだきましたか?

愛希:もう率直に悲しく苦しいお話だと思いました。でも、その中に今を生きる人々に希望を与える前向きなメッセージが込められていて。赤面疱瘡という奇病が蔓延するという状況がコロナ禍と重なる部分もありますし、ジェンダーの観点でも現代に通じる部分があって、多くの人に受け入れられる理由がよくわかります。

――構成や設定も緻密で、感情を大きく揺さぶられるので1冊読み終わるのに時間がかかりますよね。

愛希:そうですね。一冊ごとにかなり体力を削られました(笑)。

――シーズン1をご覧になっていたとのことですが、実際に映像になったものを観られていかがでしたか?

愛希:本当に原作をリスペクトされていて、ギャップみたいなものを全く感じなかったです。キャラクターのイメージを崩さず、そこに役者さんそれぞれが持つ個性もプラスされ、より『大奥』の世界が魅力を増す素敵な作品に仕上がっていました。

――その中でも愛希さんお気に入りのシーンや登場人物を教えていただきたいです。

愛希:やっぱり大奥といえば、将軍が御鈴廊下を歩くシーンが印象的ですよね。特に8代将軍の吉宗を演じられた冨永愛さんの着物姿は迫力があり、現代的な要素もありつつ、ちゃんとその時代を生きていてかっこいいなと思いました。

実際の家定と世間が持つイメージとのギャップ

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――それぞれの登場人物には史実も織り交ぜられていますが、ご自身が演じる13代将軍・家定についてはどのようなイメージを持たれていましたか?


愛希:正直、私はそこまで歴史に詳しくはないので、オファーをいただいてから家定について自分なりに調べ直しました。そのときに思ったのは世間から持たれているイメージと、実際の家定とではギャップがあったのではないかということ。『大奥』の家定もそうですし、すごく多面的で複雑な人なんですよね。だからこそ、演じるのはすごく難しいだろうなと思いました。

――家定はあまり表舞台に出てこなかった人で、どちらかといえば正室の篤姫(天璋院)のほうが歴史では有名ですもんね。だからこそ、ドラマや映画で描かれる家定の人物像は作品によってバラバラですが、愛希さんは何か参考にされたものはありますか?

愛希:あまり事前に情報を得てしまうとそれはそれで良くないと思ったので、家定が出てくる他の作品についてはチェックしていません。基本的には原作を第一に、あとは現場でご一緒する監督さんや役者さんたちから受け取ったものを大事にしようと思いました。

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――本作における家定は女性ですし、これまで別の作品で描かれてきた家定とはまた全然違うかもしれないですね。実際にご自身が演じられて、女将軍である家定のどういう部分に魅力を感じられますか。

愛希:人の意見を最初から否定せず、きちんと耳を傾けて受け入れるべきところは受け入れる心の広さが魅力だと思います。彼女のように人の上に立ってみんなを先導していく立場になると、どうしても「こうあるべき」とか「こうしなければならない」というものに縛られてしまいがちじゃないですか。私も主演を務めさせていただくときにはがんじがらめになってしまうタイプなので、そうではなく冷静に物事を判断できるところが彼女のすごいところだなと思いました。

――歴代将軍の中でも家定はかなりフラットに人と接する方ですよね。お菓子づくりが好きというのも将軍としては意外性があります。愛希さんは、お菓子づくりは好きですか?

愛希:料理はすごく好きでお菓子もたまに作ります。家定は将軍なのに、生活感があって少し身近な存在に感じられるところも素敵ですよね。

家定は反抗期の娘? 古川雄大と作る瀧山との関係

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――本作では家定と、老中の阿部正弘、大奥総取締の瀧山の3人の関係が見どころとなってきます。正弘役の瀧内公美さん、瀧山役の古川雄大さんとは現場でどのように関係性を作られていかれたのでしょうか?


愛希:瀧内さんとは初めてご一緒させていただいたのですが、家定と正弘が絡むシーンって実は本当に数えるくらいしかないんですよね。正弘は公務で忙しく、その間、家定のことを瀧山に任せているので。そんな中で絆を深めていく家定と正弘の関係性をどうすればこの短い撮影期間で表現できるかということを最初は私自身とても悩んでいました。ですが、実際に撮影がスタートすると瀧内さんが正弘としてすごく心を寄せてくださって。撮影以外の時間に頑張って仲良くなろうとしたわけでもなく、自然と撮影を重ねるたびに関係性がどんどん近づいていった感じで、最後の別れのシーンも集中して気持ちを作るまでもなく涙が溢れてきて、本当に家定が正弘に対して思ったであろう感情がそのまま湧き出てきました。それは瀧内さんのおかげだと思っていますし、とても感謝しています。

――舞台『エリザベート』での共演経験がある古川さんとはいかがでしたか?

愛希:古川さんに関しては、舞台で長い間ご一緒させていただいたので、そこにいてくださるだけで安心感がありました。なので、変に関係性を作ろうとしなくても、お互いの扱いがどんどん雑になっていく家定と瀧山のやりとりというのは自然にできたような気がします。

――家定と瀧山はどこか兄と妹、父と娘のような関係性になっていきますよね。

愛希:家定が反抗期の娘みたいな感じですよね(笑)。お父さんのことが本当は好きなんだけど、つい反発しちゃうみたいなところが面白くて。撮影を進めるうちに監督も「二人のやりとりを増やしてみようか」とおっしゃって、脚本に後で付け加えたシーンもちょくちょくあると思うので注目してみてください。

――愛希さん自身は、古川さんに対してどのような印象を持たれていますか?

愛希:古川さんと『エリザベート』で初めてご一緒させていただいたときは宝塚を卒業したばかりだったので、自分のことで一杯いっぱいで共演者の皆さんとコミュニケーションを取る余裕がなかったんです。なので、稽古も含め3ヶ月ご一緒させていただいたのですが、古川さんともあまりお話できず……。ですが、古川さん自身もすごくストイックな方で、ご自身のやるべきことを黙々とされているイメージがありました。そこから何度か共演させていただいた今でもその印象は変わらず、ご自身の世界を持っている方なのだなと。また本人は否定されるのですが、天然だなと感じる部分もあります(笑)。

監督から言われた「初恋を楽しんでほしい」

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――「幕末編」は「医療編」を経て赤面の脅威も少し収まり、2代男性の将軍が続いたことで実権を握る女性への風当たりが強くなっていきます。そんな中で、同性として愛希さんは家定や正弘に共感する部分はありましたか?


愛希:共感するところはたくさんありました。実際の江戸時代の女性たちは子どもを産む道具として扱われていた部分が多くあったと思いますが、少し趣向を凝らし男女の立場を入れ替えることで、女性も意思を持った人間だということが伝えられる。一方で、社会の状況が少し変化すれば、正弘のように女性という理由だけで馬鹿にされる人も出てくるもどかしさもあって。そんな中でも戦っている彼女の姿に励まされる女性も多いのではないかなと思います。

――家定自身も女性として傷つけられた過去がありますが、その傷が福士蒼汰さん演じる胤篤(天璋院)との出会いで少しずつ癒えていきます。家定と胤篤の夫婦関係についてはどう思われますか?

愛希:家定にとって胤篤は初恋の相手であり、同志のような存在でもあるなと思いました。相手に何かを求めたり、依存したりするのではなく、「そなたの人生だからそなたの思うように生きよ」と言える関係がすごく素敵で。夫婦や恋人に限らず、他者の人生を彼女のように尊重できたら、自分自身の心も楽になるだろうなと思いました。

――それでいて、心が冷めきっていないんですよね。離れているときでも互いを思い合っている関係が素敵です。

愛希:そうなんですよね。家定にとって胤篤は人生で初めて好きになった人で、監督さんからも撮影にあたり、「本当に辛いシーンばかりだけど、家定の初恋を楽しんでほしい」と言われたことが心に残っています。なので私としては、しおれている花が少しずつ息を吹き返して、最後は花開くようなイメージで演じられたらいいなと思いました。

 

コロナ禍で実感した“当たり前”への感謝

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――家定は黒船来航の年に就任した将軍です。愛希さんも2018年に宝塚を退団され、翌年に初舞台を経験。ですが、その直後に新型コロナウイルスが流行して……という家定同様に時代の大きな変化を経験されたと思います。改めてこの5年間を振り返って何か思われることはありますか?


愛希:コロナを経験して人ってあっけなくこの世からいなくなっちゃうんだ、命って本当に儚いなと思いましたし、だからこそ日々をしっかり大切に生きようという気持ちにもなりました。また日頃、舞台に立たせていただいているので、無事に初日の幕が開き、一度も幕が下ることなく千秋楽を迎えられるのが決して当たり前ではないということを強く実感しましたね。舞台を観に来てくれるお客様やファンの方にも感謝しかありません。

――エンタメ業界は特に大きな打撃を受けましたもんね。そのエンタメがコロナ禍を経て、これから再び花開いていく中で愛希さんがチャレンジしてみたいことを教えてください。

愛希:これからも舞台に立ち続けたいですし、映像作品にもどんどん挑戦していきたいと思っています。映像作品でいえば、私は現代劇をやったことがなくて。どんな形でもいいから現代に生きる女性を演じてみたいです。

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――やはり舞台と映像作品とでは、演じる上での感覚が違いますか?

愛希:そうですね。もちろん違いはたくさんありますし、それぞれに魅力があると思っています。映像作品は、舞台ではどうしても制限されてしまう繊細な表現ができるところに強みがありますよね。例えば、この役だったらボソボソとした喋り方をするだろうなと思っても、舞台では遠くのお客さんにも伝わるようにしなくてはいけません。そういう意味では、舞台よりも映像作品の方が役をよりリアルに演じられると言えるかもしれないですね。ただ、逆にそこが難しいとも言えます。

――最後に見どころや読者へのメッセージをお願いします!

愛希:まだ完成した映像を観ていないので正直不安もありますが、私自身とても心を込めてこの作品に挑みました。しっかりと家定として生きられていたらいいなと思っていますので、原作、ドラマのシーズン1に続いてシーズン2も一緒に楽しんでいただき、ぜひ感想を聞かせてください!

(撮影=渡会春加/取材・文=苫とり子)

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