Ⓒ五十嵐律人/講談社 Ⓒ2023「法廷遊戯」製作委員会
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2023年11月10日

声が直接脳と心を揺さぶる——杉咲花の役としての「言葉」

声が直接脳と心を揺さぶる——杉咲花の役としての「言葉」


声が、スッと耳に入ってきてそのまま脳に溶ける。杉咲花が出演している作品を観るたびに思う。

近年では映画、ドラマでは欠かせない存在となっている杉咲。過去の作品から彼女の魅力について紐解いていきたい。

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令和を代表する俳優といっても過言ではない



さて、少しばかり杉咲花の歴史について振り返ってみよう。「あなたの杉咲花はどこから?」と聞いたらさまざまな作品の名前が上がりそうだ。それだけ出演作が多い。

子役としてのキャリアもあり、2007年にはドラマ「まるまるちびまる子ちゃん」、映画『吉祥天女』に出演。

もしかしたら、CMのイメージが強い人もいるかもしれない。おいしそうに回鍋肉を頬張る姿は間違いなく売り上げに貢献していたはず。

代表作を挙げるとしても片手では収まらなそうだ。

2018年にはドラマ「花のち晴れ~花男 Next Season~」に主演。平野紫耀や中川大志と共演した。2020年には朝の連続ドラマ「おちょやん」でヒロイン竹井千代を務めた。「いだてん~東京オリムピック噺~」で大河ドラマ出演も果たし、まさに今の映画界・ドラマ界に欠かせない存在だ。

テンポの良さが心地よい『大名倒産』 


そんな杉咲の直近作品が映画『大名倒産』だ。浅田次郎の同名原作小説を実写映画化。監督は前田哲が務めた。

物語は江戸時代。三万石の越後丹生山藩。その実態は借金だらけで、金額は25万両(現在の約100億円分に当たる)。返すあてもない、そしてあまり返す気もなさなそうな領主。そんなときにすでに隠居していた十二代当主の一狐斎(佐藤浩市)が考えたのは、諸子である四男・小四郎(神木隆之介)に家督を継がさせ、計画倒産をさせること。そして、小四郎に全ての責任をなすりつけ、腹を切らせようとしていた。

小四郎には腹を斬るか、借金を全て返すか、ふたつにひとつしか選択肢はなかった。

命がかかったミッションに思えるが、実はコメディ。神木隆之介演じる小四郎が仲間たちと共に状況の大逆転を目指して奮闘する。


杉咲が演じるのは小四郎の幼馴染のさよ。家督を継いだ小四郎と偶然再会し、一緒に借金返済のために奮闘する。

100億の借金返済という途方もない金額だが、めげることなく小四郎は返済計画を進めていく。そもそも、それだけ莫大な借金ができるということは、藩の政策に無理があったから。というか無駄遣いがあったから。個人の無駄遣いは恐ろしいほどに責められるのに、国の無駄遣いとなると、どうも無駄遣いしたほうが強気になるのは何故か。

人の良い小四郎だが、自分の命がかかっているものだからガンガン改革を行っていく。しかし迫るデッドライン。すでに丹生山藩は江戸幕府に目をつけられているのだ。



そして、小四郎の心が折れそうになったときに支えるのがさよだ。時に尻を叩き、時には笑い飛ばし、静かにそっと寄り添う。

明るい笑顔が小四郎の心を、そして作品自体も明るくしていく。この作品の肝となっているのが小四郎とさよのテンポ感の良さだ。

共演経験が多い神木と杉咲だが、実はがっつりと演技するのは初めて。しかし、互いの演技勘というのが分かっているのかもしれない。「ここにこのセリフが入ると気持ちいいだろうな」というところに互いのセリフがピタリとハマる。観ている側の爽快感もある。経験値というより、神木と杉咲の役者としての天才ぶりが感じられる。

▶︎『大名倒産』を観る

【インタビュー】30歳を迎えた神木隆之介が10代の頃の経験から心がけていること

言葉が直接刺さってくる



“テンポの良さ”という意味では、「おちょやん」で演じた千代もそうかもしれない。口がよく回り、貫禄さえも感じさせた。

また、ドラマ「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」もそうだろう。

ヤンキーな黒川(杉野遥亮)と弱視で白杖を手放せないユキコ(杉咲)の恋模様を描くラブコメディだ。見た目だけで誤解されてしまいそうな黒川とテンポの良い掛け合いを繰り広げていく。

驚くのが早口——ではあるが、びっくりするほどにその言葉が聞き取りやすいこと。声の通りやすさも然り、言葉のひとつひとつが躍動している。

きっと、杉咲は憑依型の俳優と言われるタイプなのだろうけれど、その言葉の細部に気持ちがこもっているから、観ている側の心にダイレクトに伝わる。それは小さな囁きでもそうで、杉咲が発する言葉の威力を感じる。

▶︎「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」を観る

新作映画は『法廷遊戯』

Ⓒ五十嵐律人/講談社 Ⓒ2023「法廷遊戯」製作委員会

2023年から2024年にかけて公開作品が4本控えている杉咲。最新作が『法廷遊戯』だ。五十嵐律人による同名のミステリー小説を映画化。

同じロースクールに通う清義(永瀬蓮)、清義の幼馴染・美鈴(杉咲)、馨(北村匠海)。馨は学生たちが行う「無辜(むこ)ゲーム」と呼ばれる模擬裁判を司る天才と呼ばれていた。

そしてロースクールを卒業し、弁護士となった清義のもとに馨から「無辜ゲームをやろう」誘いが来る。呼び出された場所に清義が向かうと、そこには血のついたナイフを持った美鈴とすでに死んでいる馨の姿があった。

公式サイトには「二転三転する真実」という煽り文句もある。一体どのような展開を見せていくのか。

間違いなく、言葉が大事な役目を果たしそうな作品で、杉咲がどのような声を発するのか、耳を澄ませたい。

(文:ふくだりょうこ)

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