インタビュー

インタビュー

2023年06月22日

「ここに居てもいいんだ」30歳を迎えた神木隆之介が10代の頃の経験から心がけていること

「ここに居てもいいんだ」30歳を迎えた神木隆之介が10代の頃の経験から心がけていること

浅田次郎氏原作、映画『大名倒産』が6月23日(金)に公開される。

本作は、越後・丹生山藩の鮭売りだった松平小四郎が、ある日、徳川家康の血を引く大名の跡継ぎだと告げられ、借金100億円を抱えるワケありビンボー藩で返済を迫られる物語。

小四郎役を務めるのは、本作が時代劇初主演となる神木隆之介だ。芸歴28年、現場では座長として振る舞い、後輩を先導することも多いであろう神木。若き藩主・小四郎にちなんだリーダー論を聞くと「ここに居てもいいんだよ」と示すように工夫していることがあるそう。撮影中のエピソードや先月30歳を迎えて感じることなどについて、たっぷりと語ってもらった。

時代劇の難しさを痛感


――時代劇で初主演を務めた神木さん。挑戦してみての感想を教えてください。


神木隆之介(以下、神木):時代劇といえども「マジで?」という言葉が出てくるような作品だったので、リアクションやセリフ回しは現代的で何なくできました。ただ、所作が難しかったですね。頭の下げ方だったり、角度だったり、座り方とか、手の付き方、歩き方、袴のさばき方……そこが時代劇ならではで、すごく難しいなと感じました。

――今回演じたことで、時代劇や大河ドラマに挑戦したい欲は沸きましたか?

神木:すみません……沸きませんでした(笑)。僕、所作が苦手だなって思って。本当に難しかったんです。ただ、ありがたいことにその後、(NHKの連続テレビ小説「らんまん」で)酒屋の当主を演じた際に生かされたのでよかったですけどね。それに非常にポップな作品だったので、演じていて楽しくもありました。

――どんなところにポップさを感じましたか?

神木:時代劇って、人によっては結構構えてしまうと思うんですよね。単語が難しいし、刀を持っている人がいて命に関わるような出来事も多い。だから、見ていて落ち込んでしまう人もいらっしゃると思います。

ただ、この映画で小四郎たちがぶつかっていること、借金や節約の問題って現代にもかなり通ずるなと感じました。だから、時代劇だと思わずに見ていただけると思います。

小四郎に尊敬を感じた理由


――神木さんが今回演じた小四郎は、借金100億円を抱える藩の藩主になってしまうという役柄でしたが、絶望や暗さを感じさせないキャラクターでしたよね。


神木:そうですね。(前田哲)監督からの「リアルとコメディの曖昧なところを行きたい」というオーダーをいただいたからかと思います。非常に表情がコロコロと変わる役だったので、あまりコメディになりすぎないように、あるいはリアルになりすぎないように監督と話し合いながら進めました。

――小四郎を演じていて、自分と似ているなと感じたところはありますか?

神木:平和主義者なところですかね。小四郎のほうが僕よりも、さらに平和主義者だと思いますけど。それから、小四郎は器の大きさや、人に寄り添えるような人間性で、僕にはまだまだ足りないところを持っているので、尊敬しながら演じていました。だから、似ているというよりは「こんな優しい人になりたいな」という憧れが強かったですね。



――以前より、神木さんは自分自身のことを「おめでたい性格」とおっしゃっておりますが、小四郎からもおめでたさを感じました。そういうところに共感は?

神木:たしかに! 小四郎って優しいだけじゃなくて、すぐ騙されそうというか、見ていてクスッと笑える、「こいつ大丈夫かな」と周りを笑顔にさせるようなキャラクターですよね。ちょっとバカなやつだけど、精いっぱい頑張っている姿を伝えたいなと思っていたので、そういう印象を抱いていただけて、すごく嬉しいです。

――一方で、藩主というポジション上、リーダーとしての一面も持ち合わせています。神木さんにとって、リーダーってどんな人だと思いますか?

神木:支持される面もあるけど、めちゃくちゃ嫌われる存在でもあるなと思います。反対意見を押し切ってでも、信念を貫かなきゃいけないこともあるし、効率的に利益のために動かなきゃいけないことでヘイトを買うこともある。

その一方で、小四郎は人に寄り添うことができるリーダーという印象を受けました。元々リーダーではなかった人間なので、みんなを動かしたり、先陣を切って行動したりするよりも、とにかく必死に頑張って、それを見た周りの人が「この人のために頑張りたい」って思えるような存在。どちらがいいとかではなく、どちらもあるのかなと感じます。

――神木さんにはそういったリーダー気質があるのでしょうか?

神木:高校時代、学級委員長だったのであると思います。別に嫌われても、何言われてもいいタイプなので、場をまとめることに興味があって。本当は生徒会長をやってみたかったのですが、それは学校にいないことが多いからなれなかったんですけど……。ただ本当はサポート役、副学級委員長的なポジションのほうがあっているんじゃないかなとも思いますね。

「らんまん」東大生チームでカラオケへ


――映画を拝見して、印象的だったことの1つが小四郎の表情の豊かさです。普段の神木さんは、表情が豊かなタイプですか?


神木:そうですね。僕としては隠しているつもりなのですが「顔に出る」ってよく言われるので。

――最近1番表情筋を使った出来事はなんでしょうか?
 
神木:「らんまん」の東大生チームで一緒の、前原滉くんと前原瑞樹くんと3人でカラオケに行ったときですかね。もうめちゃくちゃ楽しくて、めちゃくちゃ笑いました。特に前原滉が井上陽水さんのものまねをしながら歌う『少年時代』がめちゃくちゃ上手で(笑)。彼らのおかげで現場でもたくさん笑わせてもらっていて、笑うほうの表情筋が痛いです、ここ最近は。

――かなりお忙しいと思うのですが、オフの時間はだらだらするのではなく、カラオケに行かれるんですね。

神木:第1候補はぐうたらしたいんですけどね。寝たいだけ寝て、YouTubeを見ながらダラダラして。でも、定期的に歌いたくなっちゃう。しばらくカラオケに行けないと歌いたくなっちゃって現場で歌っちゃうこともあるんです。それで、2人を誘ってみたら来てくれて!

――そうだったんですね。オフの日は仕事関係の人に会いたくないという方もいますが、神木さんはそんなことないのでしょうか?

神木:そうですね。お芝居の現場は、協力体制というか、プライベートな話をする時間も多いので、友達みたいに接している人が多く、誘いやすいんですよね。

僕の場合、役を背負うのはできれば本番だけでいたいんです。もちろん役に引きずられるときもありますけど、できれば役から離れて本番だけ集中したいので、合間の時間もたくさんお話ししちゃいますね。

30歳「まだまだ学生服を着るつもり」


――先日、お誕生日の際に行った生配信イベント『30祭』の事前配信で、昔から現場で大人の人に囲まれている中で、30歳というのはすごい大人のイメージがあったとお話しされていました。実際、30歳を迎えられた今の心境を教えてください。


神木:実感はないですね。それこそ、カラオケで名前の横に30と書いたときは「あ、30か……」と不思議に思いましたけど。ただ、動いた後で疲れたら「もう30だから」と言い訳として使っていますね。

――(笑)。まだ30歳になってから1ヶ月もたっていませんが。

神木:活用できるものはしたいじゃないですか(笑)。

――昔は大人に囲まれていた一方、今は年下の方に囲まれることも増えたのかなと思います。たくさんの大人に囲まれていた経験があるからこそ、意識していることはありますか?

神木:たしかに増えましたね。だから、僕からたくさん質問をしちゃっています。学校のこととか、最近流行っていることとか。僕自身、学生の頃って緊張していたこともありましたし「話しかけたら失礼かな」と考えちゃうことがあったんですよね。「僕が話しても、大人の方からしたらつまらないだろうな」とも思っちゃいましたし。

そういうことを思い出して、聞いてくれたり、話せたりすることで「ここにいてもいいんだよ」って示してもらえたら嬉しかったなと思うので、僕から話しかけちゃいます。きっと「話しかけないで欲しいな」って人もいるかもしれませんが、僕は僕で今の若い子の話を聞いて情報を更新するのが好きなので。

――そうなんですね。一方、今もなお実年齢よりも年下の役を演じられることも多い印象です。そろそろ大人の作品や、大人の役をやりたいという願望はありますか?

神木:いや、たぶん僕には無理だと思います。それに、僕にそういう役をやらせたい人がいないんじゃないかなと。まだまだ学生服を着るつもりでいますよ(笑)。

(取材・文=於ありさ)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

© 2023映画『大名倒産』製作委員会

RANKING

SPONSORD

PICK UP!