北村匠海の魅力——圧倒的な信頼感で作品に引き込む



さまざまな映画やドラマで主要な役を演じ、活躍する北村匠海。

公開中の映画『法定遊戯』では、ロースクール就学中に司法試験に合格した天才・結城馨を演じている。本記事では、彼の過去作品を振り返りつつ、その魅力に迫りたい。

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『君の膵臓をたべたい』

(C)2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会
(C)住野よる/双葉社

北村が演じる“僕”は、周りと壁を作っている読書好きの高校生。病院で偶然クラスの人気者・咲良(浜辺美波)の闘病日記・共病文庫(きょうびょうぶんこ)を見つけてしまい、それがきっかけで彼女と親しくなる。

“僕”は咲良の秘密を知っている者として、スイーツの食べ放題や福岡など、さまざまな場所へ連れていかれたり、宝探しのようなことをさせられたりする。

病気で長く生きられないとわかっているのに、元気で明るく生き生きとしている咲良が印象的だ。観客は“僕”と一緒に振り回され、引き込まれていくような感覚がある。とてももうすぐ死んでしまう人には思えなくて、「君はさ、本当に死ぬの?」と“僕”が聞くとき、全力で同意していた。笑顔で「死ぬよ」と答えた咲良だが、徐々にそうではない面も垣間見えてくる。



“僕”は少しずつ心を開き、外と向き合おうと成長していく。咲良が印象的な作品ではあるが、多くの人の心に残ったのは“僕”のシーンではないだろうか。

咲良が亡くなり、共病文庫を渡されて彼女の本心を知った“僕”が「もう泣いてもいいですか」場面に胸を打たれた。それまでどちらかというと「静」だった“僕”の感情が一気に溢れ出すシーンだ。

原作でも圧倒的に心を揺さぶるところだったが、映画の“僕”はすでに泣きながらそう聞くのだ。原作をすでに読んでいてもなお、北村のこのシーンで泣かされた。あの瞬間の一気に感情が渦巻く感覚は、ぜひ作品を観て味わってほしい。

▶︎『君の膵臓をたべたい』を観る

「隣の家族は青く見える」

かわいくてあざとい北村匠海を見るならこの「隣の家族は青く見える」だ。コーポラティブハウスに集うさまざまな関係性のカップルや夫婦を描いた作品で北村が演じたのは、男性同士のカップルのひとり。一級建築士・渉(眞島秀和)のもとに転がり込んだ恋人・朔。2人は“わたさく”と呼ばれて話題となった。

朔は小悪魔っぽさと若者っぽさのある役で、初対面で渉に「わたるんて呼んでいい?」と言う。印象的なのは初めてキスするシーンで、泥酔した朔を渉が起こしたら、酔っていたはずの朔が渉を壁に押し付けてキスするのだ。

“わたるん”に甘えたりキス待ちしたりする姿がかわいい。身長が低くはない北村匠海の上目遣いをたくさん堪能できる貴重な作品でもある。

しかし楽しいことばかりではなく、中傷ビラで二人の関係をバラされ苦悩したり、勇気を出して渉の母親の元を何度も訪れるシーンもあり、二人が一緒にいるためにさまざまな問題に向き合っていく様子にもじーんときた。放送から5年、あらためて見返したい作品だ。

▶︎「隣の家族は青く見える」を観る

『思い、思われ、ふり、ふられ』

(C)2020映画「思い、思われ、ふり、ふられ」製作委員会 (C)咲坂伊緒/集英社

北村演じる理央は、告白するつもりだった相手・朱里(浜辺美波)と、親同士の再婚で姉弟になってしまうという役どころ。モテる人気者の役で、立っているだけでかっこいい。地味目な高校生役も結構演じているなかで、印象の違いを出せるのがすごいなと思う。

女子にモテまくるが、いくら大勢にモテようが自分が好きな相手・朱里は立場的に恋をしてはいけない相手になってしまったというかなり切ない役で、自分とは違って前に進もうとしている朱里への苛立ちもあり複雑だ。



繊細に演じられる心の揺れに注目したい。憧れていた王子様そっくりな理央を好きになる由奈(福本莉子)・由奈の幼なじみで朱里の気になる人となる和臣(赤楚衛二)との四角関係のなかで、理央はどう変わっていくのか。

個人的には、『君の膵臓をたべたい』の2人が別の形で高校生役をしているのにもグッときた。

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『さくら』

(C)西加奈子/小学館 (C)2020 「さくら」製作委員会

西加奈子の名作を実写化した本作品。ヒーローだった兄・一(吉沢亮)の死後2年経ち、再び集まった家族の物語。北村が演じるのは一とわがままな妹・美貴(小松菜奈)の間で家族を傍観する薫。彼の目線で、子どもの頃からこれまでの出来事が振り返られる。

愛情深い両親と人気者の兄と美しい妹、少々地味だが頭もよく優しい主人公。幸せな家族になぜ悲劇が起こってしまったのか、一のことを知っている状態で観るので、家族の仲睦まじい様子が微笑ましいと同時につらい。

薫は基本おだやかで大人しいが、そのぶん一と美貴に対して強い感情を出すシーンがそれぞれ印象に残った。演技はもちろん、北村の声によるモノローグにも注目だ。優しく穏やかな声で、さらに物語に引き込まれる。

悲しいけれど悲しいだけで終わらない物語の結末をぜひ見届けてほしい。ちなみに犬のサクラがものすごくかわいい。

▶︎『さくら』を観る

『東京リベンジャーズ』

(C)和久井健/講談社 (C)2020 「東京リベンジャーズ」製作委員会

あまりにも有名すぎる人気漫画の実写化。北村が演じる元ヤンキーのフリーター・タケミチは、最愛の人・ヒナ(今田美桜)を救うためタイムリープを繰り返し、鍵を握るマイキー(吉沢亮)率いる不良集団・東京卍會と関わっていく。

第一報を聞いた際は少し意外な気もしたが、同じくらい「彼なら大丈夫だろう、うまくやってくれるだろう」という気持ちもあった。ともすれば実写化で失敗しかねない作品だったと思うが、北村をはじめとした俳優陣、英勉監督の力により、素晴らしい説得力のあるものになった。

本人にとってもターニングポイント的な作品となったようで、初めて本格的なアクションに挑戦した作品であり、主演として作品を背負う気持ちが強くなったと語っていた。

また、個人的にタケミチは原作を読んでいるともどかしく思える場面もあったのだが、北村が時にはボコボコに殴られた顔で、時には涙を流しながら演じるタケミチは、応援したい気持ちが大きくなった。「主人公力」のある人なのだと思った。

▶︎『東京リベンジャーズ』を観る

『とんび』

(C)2022「とんび」製作委員会

北村演じる主人公・旭(アキラ)の幼少期、彼を庇って母・美佐子(麻生久美子)が亡くなって以来、父親の安男(ヤス・阿部寛)と父一人子一人で生きていた父子の数十年を描いた物語。北村は高校生から中年期までを演じ、そのときどきの心境の変化や成長、父子の関わりが伝わってきた。

アキラは基本的に優しくいい子なのだが、思春期にはヤスに反発して言い合いになったり殴られたりというシーンもあるし、母の死の真実を聞かれたヤスが「お母ちゃんは俺を庇って亡くなった」という優しい嘘から、その後腹を立てたときにひどい言葉をヤスに投げかけてしまったりもする。大人になってからは、7つ年上のシングルマザー・ユミ(杏)の結婚をめぐって対立してしまう。

さまざまなことがありつつも、根底には父と子の深い愛情と周りの人々の温かさがあり、心が洗われるような気持ちになる。ヤスとアキラだけでなく、さまざまな“親と子”の関わりを感じられる名作だ。

▶︎『とんび』を観る

「星降る夜に」

©️テレビ朝日

生まれつき耳が聴こえない遺品整理士・柊一星を演じた。「耳が聴こえないことは悲劇ではない」という作品にしたかったという制作陣の意向もあり、耳が聴こえないながらも人生を楽しんでいる自由で愛に溢れた一星が魅力的だった。こんな風にいろいろなことに縛られずに生きてみたいなと思わせる魅力がある。

下ネタや、ほとんどの人がわからないのをいいことに友人とぶっちゃけた会話を手話でするシーンもあり、当事者の方からも自然な手話だと讃えられていたし、耳が聴こえない人がメインで出てくる作品として新しい形だったと思う。

作中の一星のセリフは、目から鱗が落ちた。

「俺はいい言葉も聞こえないけど、嫌なことも聞こえない。だいたい『耳が聞こえないからかわいそう』とか『医者だから金持ちで幸せだ』とか、みんな決めつけすぎなんだよ。それに俺が聞こえないのはちょっと見てればすぐわかる」

「目で見てわからないものを抱えて生きてる人のほうが、俺よりずっと大変だ」

この前の、落ち込んだ主人公・鈴(吉高由里子)の前にいつもとは違うスーツ姿で現れ「行きますか、姫」とドレスの試着に付き合っていちいちリアクションするシーンも最高だった。

いつでもまっすぐ愛を伝える情熱的なところも、どちらかというとシャイな役が多いと思うので新鮮だったし、鈴に逆恨みして嫌がらせしてきた伴(ムロツヨシ)に対して取った行動も、想像がつかないもので驚いた。みんな一星のようだったら世界はもっと幸せになるのにと思う。

▶︎「星降る夜に」を観る

『法廷遊戯』

Ⓒ五十嵐律人/講談社 Ⓒ2023「法廷遊戯」製作委員会

彼が演じる結城馨は、ロースクール就学中に司法試験に合格し、「無辜(むこ)ゲーム」と呼ばれる模擬裁判を司る。オールバックで無表情、何を考えているのかわからないが、主人公のセイギ(永瀬廉)と仲良さげに微笑み合うシーンでまず一度印象が変わる。

予告を観ても分かる通り、結城は物語の中盤で死ぬ。にもかかわらず、痛烈に印象を残す役だった。結城を殺した疑いをかけられた美鈴(杉咲花)と、弁護することになったセイギ。死者・犯人・弁護士として事件に関わることとなった同級生3人の真実と、明かされていく過去に息を呑む。



死してなお、物語は結城に支配されている。観ていてうまく言い表せない感覚になった。冒頭でよくわからない怖い人物だったのに、本当のことがわかるにつれ切なくなってきてしまう。

この作品は真実が明らかになったと思ったら新たな真実が出てきて、エンドロールを迎えても、これがすべてとは思えない気がする。

「どうして結城はこんなやり方をしたのだろう?」「セイギとあんなに仲が良さそうだったのはすべて演技だったのだろうか?」と観終わってしばらく経った今でも考えてしまう。彼の撮影期間はわずか5日だったそうだが、観る者に余韻を残している。

「幽☆遊☆白書」に期待

これから配信される作品として期待大なのが、名作少年漫画「幽☆遊☆白書」の実写化だ。北村は『東京リベンジャーズ』とともに、主人公として作品を背負う気持ちが芽生えたとこの作品を挙げている。



正直はじめ、幽白の実写化ってどうなの?と筆者も思ったが、先日公開された予告編を観たら、楽しみになってきてしまった。

さらに、予告編をメインキャスト4人が観る動画では彼らがどんな気持ちで撮影に臨んだかまで垣間見えて、もはや待ち遠しい。

北村匠海なら安心だ!

Ⓒ五十嵐律人/講談社 Ⓒ2023「法廷遊戯」製作委員会

北村匠海の演じる役は幅広い。物静かな役高校生からヤンキーまで、他の登場人物に振り回される役もあれば周りを自分のペースに巻き込んでいく役もある。どんな役だったとしても、北村匠海の役を媒介に観る者を作品に巻き込んでいくような力がある。

これまでさまざまな作品で彼に心打たれてきたし、この役はいまいちと思ったこともないから、キャストが発表された時点で意外だなと感じる役だったとしても、「でも北村匠海なら大丈夫だろうな」と思わせてくれる信頼感がある。

彼が出る作品に名作が多いのか、彼が出ると名作になってしまうのか、今回改めて観返した作品もあったが、いい作品ばかりだ。これからも彼がどんな名作を生み出してくれるのか、期待しかない。

(文:ぐみ)

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