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映画コラム

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2024年03月08日

【岡田将生すごすぎ】映画『ゴールド・ボーイ』をとにかく観てほしい“5つ”の理由

【岡田将生すごすぎ】映画『ゴールド・ボーイ』をとにかく観てほしい“5つ”の理由

(C)2024「ゴールド・ボーイ」製作委員会
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お願いしますから、今すぐ劇場の上映時間を確認し、観に行ける回を予約して観てください

そう心から頼み込む映画はごく少ない。そうそうあるわけがない。

しかし、筆者にとって2023年における『BLUE GIANT』『窓ぎわのトットちゃん』がそうだった。そして、2024年に早くもそう言える映画が誕生した。3月8日より劇場公開中の『ゴールド・ボーイ』だ。

前置き:とにかく、ネタバレ厳禁



本作は何よりもネタバレを踏まないまま観ていただきたい

中盤以降は何ひとつ言えないほどの、しかも安易な予想を軽々と超えてくる、多重的かつ衝撃的な展開が待ち受けている。筆者は「とんでもないものを観てしまった……!」と呆然とし、「こんなに面白い映画をありがとう!」と心から作り手に感謝できたからだ。

予備知識もまったく必要ない。後述するわかりやすい構図もあって、誰が観ても一定の面白さは保証済みとさえいえるし、それを超える二転三転する面白さがミルフィーユのように重なっていくからだ。あえて言えば、PG12指定納得の刃物での殺傷シーン(ただしごくわずかであるし短い)がある、刺激的なクライム・サスペンスであるという「心構え」をしておくといいだろう。

ここからは具体的な作品の魅力を記していこう。もちろんネタバレに触れないように書いたつもりではあるが、前情報なしままで観たいという方は<劇場情報>を確認して、先に劇場へと駆けつけてほしい。

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1:「人殺し」VS「3人の少年少女」の対決カード

本作のあらすじは、実業家の婿養子である青年が、義理の両親を崖の上から突き落として殺害するも、中学生の少年がその現場を偶然にもカメラで捉えていた……というもの。彼とその2人の友達はそれぞれ家庭に重い事情を抱えていたため、殺人の証拠を青年に突きつけて脅し、大金をせしめようとするのだ。

(C)2024「ゴールド・ボーイ」製作委員会

シンプルに言えば、「サイコな人殺しの青年」VS「殺害現場を目撃した3人の少年少女」の対戦カードによる心理バトルが勃発する。その両者の一触即発の会話劇や駆け引きが、まずべらぼうに面白い、というわけだ。

また、その駆け引きをする子どもたちの心理や、そこから巻き起こるまさかの展開は、人によっては「飛躍し過ぎている」「そんなことになるわけがない」と思うかもしれない。

だが、それに至る伏線は周到に用意されているし、後述する俳優それぞれの熱演もあって、思春期特有の不安定さや危うさがつきまとう子どもには「こういうこともあり得る」のだと、個人的には一種の寓話(ぐうわ)として存分に納得できたのだ。

2:平然と悲劇の人物を装う、人殺し役の岡田将生

本作の目玉は、やはり岡田将生が主人公の1人、それも人殺しの青年を演じていること。

以前から純粋無垢な善人から、本気で嫌いになれそうな悪党まで、演技の幅が広いとはもちろん思っていたが、今回は「殺人を犯しても平然と悲劇の人物を装う」悪どさを見事に表現。その「演技が上手い役の演技」への説得力も想像以上という、俳優としてネクストステージにあがったような衝撃を受けた。

(C)2024「ゴールド・ボーイ」製作委員会

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そんなサイコ感および、完全犯罪を成し遂げたような自信をも漂わせる岡田将生が、年端もいかない少年少女に脅迫され、「平静を保っているようでいて内面では苛立ちをつのらせている」様は、半ばブラックコメディー的でもある。

中盤での「犯罪行為をベラベラとしゃべってしまう」ことや、さらに終盤のとある展開では、もはや恐怖や狂気といった枠組みを超えて笑ってしまうほどに極端で滑稽な岡田将生を見ることができるのだ。

3:三者三様の特徴を持つ子どもを演じた俳優たち

劇中に出てくる3人の少年少女が、本当に幼い子どもに見える、ということもとても大きい。だからこそ、経験でも腕力でも敵うはずのない「危険な大人」との対決構図の恐ろしさと危うさがある。

もしも、ただ商業性を優先して、20代の人気俳優を起用などをしてしまっていたら、作品の魅力やリアリティは半減どころではなかっただろう。

(C)2024「ゴールド・ボーイ」製作委員会

そして、400人以上のオーディションを経て選ばれた、三者三様の特徴を持つ子どもを演じた俳優それぞれの演技がまた素晴らしかった。

もう1人の主人公である少年を演じたのは映画『リボルバー・リリー』にも出演していた羽村仁成。年齢にそぐわない冷静さと聡明さで、岡田将生演じる人殺しと「互角に渡り合う」様は、本作のいちばんの見どころといっても過言ではない。

ドラマ「テセウスの船」「レンアイ漫画家」に出演した星乃あんなも可憐でありながら強い意志を持つ少女を完璧に演じ切っており、『ラーゲリより愛を込めて』で主人公の次男役を演じた前出燿志も暴力的な一面を見せながらも人懐っこく憎めない少年に文句もつけようもないほどハマっていた。

さらに、本作の監督は『ガメラ』三部作や実写映画版『デスノート』などで知られる金子修介。『1999年の夏休み』や『学校の怪談3』でジュブナイルものを手がけていたこともあり、そちらでの子どもへの演技演出、時に恋心を甘酸っぱく描く手腕が、今回も生かされていたのではないか。『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』での少女の心理の危うさも、今回に通じている部分は確実にある。

(C)2024「ゴールド・ボーイ」製作委員会

さらに、他の大人たちを演じるのは、黒木華北村一輝松井玲奈江口洋介と、これ以上は考えられないほどに豪華であるし、演技力と役へのハマりぶりも、やはり想像を軽く超えてくる。それぞれが、岡田将生や羽村仁成との掛け合いで、どのような化学反応を見せるのかにも注目してほしい。

4:見事な「日本映画」への置き換え

この『ゴールド・ボーイ』の原作は中国の小説「悪童たち」。そのドラマ版「バッド・キッズ 隠秘之罪」(Amazonプライムビデオで現在見放題配信中)は、レビューサイトで絶賛の嵐が吹き荒れ、配信開始からわずか2ヶ月で総再生回数10億回越えを記録するなど、中国で社会現象級の超大ヒットとなっていたそうだ。

原作小説では上下巻、ドラマ版では全12話となるほどの話のボリュームを、映画では2時間前後の尺に収めなければならない、というのは大きな課題ではあっただろう。そして、直近で『アナログ』『正欲』と同様に小説原作の映画を手がけていた、脚本家の港岳彦が見事にやってくれた。

原作から取捨選択をしてタイトにまとめつつも、重要な要素を忠実に拾い上げ、さらには映画独自のとてつもない衝撃を用意するという、「映画化」のための脚本の工夫はいずれも的確、いや完璧と言っていいほどだったのだ。

その脚本を、特にクライマックスの「音楽」「編集」「カメラワーク」などで、「映画」としてこれ以上なく昇華させた金子修介監督およびスタッフの尽力も、とてつもなく大きかった。

(C)2024「ゴールド・ボーイ」製作委員会

また、中国の作品を「日本映画」へと置き換えるにあたって、舞台を沖縄にしているのも重要だ。金子修介監督によると「マスコミがすぐに駆け付けられない(犯罪者がすぐに追い詰められない)少し離れた地域」であることも沖縄を選んだ理由だそうだが、それ以上に米軍基地がすぐそばにあると意識させる画があったり、経済格差にまつわる問題が言及されるなど、爽やかなイメージの沖縄とは真逆の「負」の要素にも果敢に踏み入ることで、メインの物語にある「大人と子どもの戦い」の危うさが強調されている。

もちろん、それは沖縄という場所をいたずらに貶めるようなものでもないし、その街並みや美麗な風景も含めて魅力的な舞台に思えてくる。

ちなみに、この『ゴールド・ボーイ』は、中国アニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』の豪華な日本語吹き替え版を配給してくれた企業「チームジョイ」が、映画製作に本格進出した作品でもある。そちらに続き、「中国の作品を最高の形で日本に届ける」試みそのものを応援したくなるではないか。

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5:「人を信じる」こととは何かを考えさせる

物語構造の面白さ、岡田将生を筆頭とする俳優の演技、中国の作品を日本映画にするための工夫と尽力、それぞれが最上級というわけだが、筆者がこの『ゴールド・ボーイ』に身震いするほど感動した理由は、「その先」にあった。

それはクライマックス以降で提示されることだ。

もちろん具体的に言うとネタバレになってしまうのだが、それでもなんとかギリギリの範囲で表現するのであれば、この物語が「人を信じるということは何か?」ついて、究極的な問いを投げかけている、ということだろう。

(C)2024「ゴールド・ボーイ」製作委員会

その答えは短絡的に提示させることもなく、おかげでこの映画を観るこちら側が「考える」立場になれる。それは原作のエッセンスを大切にしつつ、この映画がさらに際立たせたことでもある。

そして、その問いかけは大げさではなく、普段の身近な人間関係や、もっといえば世界の見かたをも、ガラリと変えてしまうほどに重く鋭いものだった。

『ゴールド・ボーイ』のタイトルの意味は?

最後に、『ゴールド・ボーイ』というタイトルの意味についても記しておこう。制作総指揮を務める白金(バイ・ジン)によると、そこには皮肉の意味を込めつつ、同時にスティーブン・キングの小説のひとつ「ゴールデン・ボーイ」も意識しているそう。

そのあらすじは「成績優秀な高校生がナチスの教官だった老人の秘密を知り脅迫をしかける」というもので、なるほど今回の冒頭部に似ている。

また、名詞を並べた『ゴールド・ボーイ』は文法的には間違っている。だが、それは意図的なもので、「as good as gold, as bad as gold(いいものはゴールドみたいにいいもの。悪いものもゴールドみたいに悪い)」と考えつつ、やはり小説家スティーブン・キングへのリスペクトを込めて、あえてこのタイトルにしたのだという。

筆者個人の解釈を述べるのであれば、「極端な考えや行動の恐ろしさ」を、この『ゴールド・ボーイ』のタイトルは示していると思う。ギンギラと輝く「金」は人を魅了し、また大きな価値があるが、その輝きや価値ばかりに固執すると、人は道を誤ってしまうのではないか。

精神的に未熟な少年(BOY)であると、その危険な領域へと足を踏み入れてしまう可能性は、より高いのだと……。

(文:ヒナタカ)

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