続・朝ドライフ

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2024年03月21日

「ブギウギ」大野さん(木野花)の東北弁の「ラッパと娘」がすてきだった<第120回>

「ブギウギ」大野さん(木野花)の東北弁の「ラッパと娘」がすてきだった<第120回>


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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。

「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第120回を紐解いていく。

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逃げ恥?

スズ子(趣里)アユミ(吉柳咲良)との歌勝負に不安を抱えています。
同じころ、愛子(このか)は体育の授業でクラスメイトと徒競走をやって負けるのがいやで、学校を休みたいと言い出します。

母と娘がそれぞれ、勝負を前に悩んでいました。

スズ子は、あたかも愛子を励ますように話しながら、おそらく自分に言い聞かせているのでしょう。負けそうな勝負をわざわざして傷つくよりも、逃げてもいいのではないかと。でもその一方で、逃げたことは一生つきまとい、結局自分を苦しめることになるのもわかっていました。

 花田家の食卓ではスズ子、愛子、大野(木野花)小田島大(水澤紳吾)、一(井上一輝)、タケシ(三浦獠太)は食事をしながら、逃げるか、立ち向かうかについて語り合います。タケシは「逃げるが勝ち」という言葉もあると言い、自分なんか逃げて逃げてここまで来たと自慢します。

全然、威張れることではありません。が、勝負に挑んで勝つことがいいこととも言い切れません。大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を思い出すような場面でした。さすがに「逃げるは恥だが……」の文言は出しませんでしたが。「やられたらやり返す」は出したのに。

話を戻しましょう。
結局、答えは出ません。どちらでもいいという感じで収まります。

タイトルバック明け。スズ子はもう一度、羽鳥(草彅剛)を訊ね、「ラッパと娘」を改めて聞いていい歌だと再認識したこと、この歌をアユミがどう歌うか「ズキズキワクワクした」と言います。劇伴は高らかに鳴るラッパのメロディ。

歌合戦で、アユミと歌うことを楽しみたいと前向きになったスズ子。

 浮かない顔をしていた羽鳥もようやく、明るい顔になりました。羽鳥はもともと、音楽を楽しむ主義者です。楽しい気持ちになれば万事OKなのです(たぶん)。

 スズ子が「ラッパと娘」を他人に手渡してしまうのがいやだったのでしょう。それをスズ子が「ラッパと娘」が最高の歌だと認め、スズ子以外の人にも歌ってもらい、歌の可能性を広げることにズキズキワクワクすると言って、羽鳥を刺激し、機嫌をとったということでしょう。

その足でスズ子は丸の内テレビにいって、アユミは「ラッパと娘」、自分は「ヘイヘイブギー」を歌うと、プロデューサーに告げます。

沼袋勉(中村倫也)も大満足。もともとこの仕掛けを企画したのは彼。思うように収まりました。「この業界、悪いやつが必要なんだ」と得意満面にうそぶきます。

中村倫也は、主役もできるし、脇役もできます。
沼袋勉役を演じるにあたり、キラキラ感をとっぱらい、芝居のうまいバイプレイヤーが少し下衆い演出家を作り込んで演じているような演技をしています。その居ずまいはまるで、小田島役の水澤紳吾や、辛島を演じた安井順平、おでん屋の親父を演じた坂田聡、アホのおっちゃんを演じた岡部たかし、ゴンベエを演じた宇野祥平のようです。映画や演劇で腕を鍛えあげてきた名バイプレイヤー枠に自分を置いているような雰囲気も含めて巧みだと感じます。

 スズ子が帰宅すると愛子が泣いていました。結局負けてしまったのです。

スズ子は
「逃げても逃げなくてもどちらでもいい どっちにしろ人生は大変な道のりや」
(スズ子)
と愛子に言い聞かせます。「ヘイヘイブギー」は愛子のための歌。スズ子は愛子のために歌いたいと考えています。愛子が母と同じく勝負で悩んでいる流れが、ここで生きてきます。

この回は、スズ子がいかに納得するかということと、母と子の愛情を、15分かけて描いています。展開をつくらず、ひとりの人の脳内でぐるぐる考えていることをアヴァンとエンディングに分けて書いています。「〜と大野さんは思う」「〜とワテは思いますねんで」と口調も同じになってしまっています。「〜と僕なんかは思います」も以前使用されていました。

スズ子は「負けて悔しい思いしたほうが多分ええねん」と愛子に話します。
負けたら、もう歌手としてダメだと引導を渡されるかもしれなくて、不安であったけれど
生きていくなかで一番必要な、前向きな「好奇心」を発揮して、立ち向かうのです。

アヴァンに出てきた、大野さんの、逃げたいと思ったときはたいてい、やったほうがいい、と自分ではわかっていることだという言葉はなかなか名言でありました。そして、大野さんが台所仕事しながら歌う「ラッパと娘」が東北なまりでなかなか味わいがありました。小夜(富田望生)を思い出しました。アメリカでどうしているでしょう。

さ。いよいよ歌合戦!

(文:木俣冬)

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