インタビュー

2013年11月15日

「選ぶ時は困難な道を選ぶ」映画『くじけないで』深川栄洋監督独占インタビュー

「選ぶ時は困難な道を選ぶ」映画『くじけないで』深川栄洋監督独占インタビュー

2013年1月に101歳で他界された、詩人・柴田トヨさんのベストセラー詩集が原作、映画『くじけないで』を撮られた深川栄洋監督をインタビューしてまいりました。

映画『くじけないで』深川栄洋監督をインタビュー


くじけないで


映画『くじけないで』は2013年1月に101歳で他界された、詩人・柴田トヨさんのベストセラー詩集が原作。夫に先立たれ一人暮らしをしていた主人公が、あるとき息子に勧められ詩を書き始める。何気ない日常を綴った心温まる彼女の言葉はその後、多くの人の背中を押し、生きる希望を与えた。

すべてを包み込み茶目っ気たっぷりの主人公、柴田トヨを日本を代表する女優・八千草薫が演じ、その息子・健一を武田鉄矢が演じた。その他に30~40代のトヨを壇れい、幼少期を芦田愛菜、伊藤蘭、上地雄輔、ピエール瀧など日本映画を代表する演技が集結し、世代問わず共感できる作品が完成した。

本作で脚本・監督を務めるのは、2005年に初の劇場用長編映画『狼少女』で監督デビューを飾り、その後『60歳のラブレター(09)』や『白夜行(11)』、『神様のカルテ(11)』など、あらゆるジャンルの話題作を手掛け、今最も期待を寄せられている若手監督の深川栄洋。

作品はもちろん、若干37歳で「人間ドラマを描くことに長けた監督」と絶大な信頼を寄せられている監督の素顔に、映画ライターになる夢を目指し奮闘中の私 ナオが迫ってまいりました!

深川監督に『くじけないで』を生インタビュー!


深川栄洋監督


なぜ、この作品を企画・映像化しようと思われたのですか?
(深川) トヨさんの詩を読んだときに、ものの考え方や人に対する姿勢が僕自身の祖母や母に似ていていると感じました。その後、伺ったトヨさんのご家族のお話はまるで深川家をみているようで(笑)。トヨさんの見てきた世界と僕の祖母や母が見てきた世界が似ているのであれば、僕が映像化する意味もあると思い決意しました。

実在された人物を描く上で、気をつけられた点はありますか?
(深川) トヨさんがどんなことを考え、どういう風に人に接し、どんなことに悔しい思いをしていたのかを近親者の方にお聞きし、トヨさんの精神性については丁寧に描きたいと思いました。

出来上がった作品に対してトヨさんをずっと見てこられた担当編集者さんや息子の健一さん、奥さんの静子さんがみなさん総じて「トヨさんの人柄がそのまま表現されている」とおっしゃっていただいき、肩の荷が下りました。僕はトヨさんにお会いすることができなかったのですが、トヨさんの思いに嘘をつかなくて良かったと思えた一瞬でした。

深川さん自身のご家族はご覧になられましたか?
(深川) はい、照れ臭かったと言われました。僕自身、母に対する恩返しや父が祖母に対して表現できなかった思いを表現してみたいなと思いスタートしたので、彼らが恥ずかしいと感じてくれたということは、この気持ちが少しでも伝わったのかなと思います。

今回トヨさんの出身地である栃木県でも撮影をされたということですが、撮影中のエピソードを教えてください。
(深川) 映画はタイトルバック明けの全く動かない八千草さん演じるトヨさんから始まり、その後、詩と出会ったトヨさんが老人ホームで自分の詩を発表するシーンで終わります。

実際数か月前までトヨさんが生活されていた、宇都宮にある施設をお借りしてこのシーンを撮影しました。さらにこちらの施設に入居されている利用者さんにも撮影に参加していただき、みなさん、自分たちのトヨさんの映画という思いで引き受けてくださったことを感謝しています。

最後のシーンは私もお気に入りです。
(深川) ありがとうございます。ただ詩を読み上げたという小さな一歩ですが、照れ臭そうに自分の胸をはり、色んな感情を思い出しながら話をしている姿がダイナミックに感じ取ってもらえれば嬉しいです。

実際ロケハンで施設にお邪魔したときも、からだがご不自由な方々がいらっしゃいました。そのとき僕はこの人たちの頭の中を描こうと思いました。詩を書くことで色んな過去に思いを巡らせ、トヨさんが再生していったように…何でもいいのですが、立ち止まってしまった人が動き出すきっかけになり、今後デイサービスや老人ホームなどでも上映をさせていただける作品になっていると良いなと思っています。

トヨさんが息子さんである健一さんに詩を書いてプレゼントされるエピソードがありますが、深川さんがこれまで印象に残っているご家族からの贈り物はありますか?
(深川) 映画の専門学校に通うようになり一人暮らしを始めたときのことですが、僕が学校へ行っている間に、ときどき母が来てくれて料理を作り置きしてくれていました。

僕が帰るころには母は実家へ帰っているのでメモが残されているだけで、「食べていないと思い作りました。これ○○までに食べてください、これ○○までに食べること…」、カレーに賞味期限を書いておかないと、きっとあの子は食べないだろう、と僕のことを先回りして見守ってくれる、これが母親の愛情だと感じましたし、まさしくトヨさんから健一さんへの手紙に通ずる部分だと思います。

この映画には「人生を楽しむ多くの人達に贈ります」といったメッセージもありますが、深川さんにとって、人生を楽しむために心がけておられることを教えてください。
(深川) 『余計なことをする』です。
僕らの生活はどんどん便利になり、余計なことや無駄なことをしない生き方を選択していると思います。でも余計なものや無駄なものに煩わされているときほど人間らしい一瞬はないし、僕らは忘れてはいけないと思っています。だから時々余計なことをしてみる(笑)。

あと、生きていく中で選択を求められたときに心掛けていることが実はあって、『何かを選ぶときは困難な方を選ぶ』ようにしています。困難な道を選ぶことで経験にもなるに、たとえ失敗したとしても、精一杯向き合ったならばその選択に後悔せず責任をとること、と決めています。
僕の人生の中で最も難しい選択は、映画監督になると決めた瞬間でした。映画監督で食べていけるのは10万人に1人と言われているなかで、無謀にもチャレンジする道を選ぶという選択が僕らしい選択だと思いました。

どうしても、人間って選択を求められると楽な方へ流されてしまいがちだと思います。でも困難の先をイメージして1つずつ向き合っていくと、自身の成長という部分で、少しずつ楽しみが見つかるような気がします。
(深川) そうですよね。遠回りしますけど、その遠回りの道中もすごく楽しいですし、そこで出会える人たちは最短距離よりも多いのでとても面白いと思います。

今日はお時間をいただきありがとうございました!
(深川) こちらこそありがとうございました。

インタビューを終えて


インタビュー


これまでいくつか深川さんの作品やインタビュー記事を拝見し、きっと繊細な方だろうと思っていました。実際お話させていただきましたが、やはり繊細な人だという印象は変わりませんでしたが、実はそれ以上に「内に秘めた熱い思いを持っている方」だと感じました。

映画のお話をされているとき、ご家族のお話をされているとき…そこには必ず相手に対する尊敬があり、愛がありました。それはきっと深川さんがこれまで様々な選択をし経験されてきたバックグラウンドからにじみ出ているものだと思います。

本作に登場するトヨさんの息子、健一は不器用でありながらも、過去に夢を追いかけ続けており、内に秘めた熱い思いを持っている人物として描かれています。私には深川さんと似ているようにインタビューを終えたいま思っています。

誰もが不安を抱える昨今ですが、本作を観終わったあとはきっと一歩前を踏み出す勇気をくれる、そんな作品だと思いました。

作品紹介


「くじけないで」ポスター

人生は、いつだってこれから。200万部のベストセラー詩集が感動の映画化“90歳からの詩人”柴田トヨさんの物語。

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