いつも映画で見る顔たち“リアル亀岡拓次”

今年の1月30日に一本の、面白いテーマの映画が公開された。大部屋俳優よりは一段上ではあるものの、どこかで見たけどどこで見たのかわからない“脇役”俳優亀岡拓次の活躍(?)を描いた「俳優 亀岡拓次」(横浜聡子監督)。

『俳優 亀岡拓次』サブ1
(C)2016「俳優 亀岡拓次」製作委員会

主演も人気演劇ユニットTEAMNACSのメンバーで、映画・ドラマと名バイプレイヤーぶりを発揮している安田顕で、まさしくはまり役でした。
映画本編については、以前書かせて頂いたので省かせていただくが、面白いところに光の当て、脇役俳優愛・映画愛にあふれた良作だった。
そこにいるのは亀岡拓次か?安田顕か? はまり役を超えたはまり役!

現実の“亀岡”達

実際の世界にももちろん大小様々な映画を支える“リアル亀岡”はたくさんいて、この人たちがいなければ映画が始まらない。

例えば、現在公開中の「下衆の愛」(内田英治監督)には渋川清彦、古舘寛治、津田寛治、宇野祥平などなど、ちょっと顔と名前がパッと一致するところまではいかないかもしれない俳優たちが勢ぞろいしている。さらに、かつてはそういう位置にいながら数々の映画賞を受賞したことなどから殿堂入りした“レジェンドリアル亀岡”ともいうべきでんでんも顔を出している。でんでんも園子温かんとくの「冷たい熱帯魚」(10年)では主役の吹越満を喰う演技を見せて映画賞を総なめした。

線引きが難しいところだが、同じような“レジェンド”枠だと大杉漣、寺島進、松重豊、滝藤賢一、枡毅などがいるのではないだろうか?深夜枠のドラマやインディペンデント映画に主演級で登場している面々だ。大杉連や寺島進は北野武監督初期作品に毎回のように登場し、少しずつ認知度を上げていった。

こういった俳優たちの出自を探すと、90年代半ばからの日本映画の復興の流れやVシネマなど映像畑でキャリアを積んできた面々と、その少し前に学生演劇ブームが発展して東京・大阪でおきた小劇場ブーム出身の面々がいる。前者の映像作品からの面々を見ると例えば香川照之や大森南朋、西島秀人が出世頭になるのだろうか?

一方の小劇場や学生演劇出身でいえば松尾スズキの大人計画組、古田新太を擁する劇団☆新感線組(渡辺いっけいや筧利夫など)これに現在の大河ドラマ「真田丸」主役堺雅人(早稲田演劇研究会→劇団オレンジ)、上川隆也(演劇集団キャラメルボックス)、佐々木蔵乃介(惑星ピスタチオ)、生瀬勝久(劇団そとばこまち)そして現在休眠中の三谷幸喜の東京サンシャインボーイズ組(西村雅彦・松重豊など)、本当のリアル亀岡でもある安田顕・大泉洋などが所属する演劇ユニットTEAMNACS、ムロツヨシ、蜷川幸雄、唐十郎、仲代達也(無名塾)の門下生など枚挙にいとまがない。

これにその出自を聞くと今となっては逆に違和感を覚える人も多いかもしれないが音楽畑の人も少なくなく「凶悪」(13年、白石和彌監督)でこの年の賞レースの中心となったピエール瀧もテクノユニット電気グルーヴのメンバーだ。田口トモロヲやマキタスポーツもミュージシャンを出自に持つ。

顔を覚えて、どんどん探そう!

インディペンデント映画製作の底辺にいる人々を愛と毒を込めて描いた「下衆の愛」に主演した渋川清彦は昨年の第28回東京国際映画祭・日本映画スプラッシュ部門の8作品の中で2本の主演作がエントリーされた、今の日本のインディペン度映画の顔というべき存在だ。その一方で「テラフォーマーズ」(三池崇史監督)にも顔を出しているし、福山雅治主演の月9ドラマ「ラブソング」にも出演中だ。古館寛治も平田オリザ主催の青年団所属で、大ヒットドラマ「リーガル・ハイ」1・2シーズン通して登場する少し空回り気味の磯貝弁護士というと顔が浮かびやすいだろうか?同じ青年団の深田晃司監督作品の常連でもある。

現在、その状況に賛否はあるもののデジタル撮影のクオリティが上がっていることで、インディペンデント系映画は空前の制作ラッシュで、長編を撮ったもの公開する劇場がなくて困っている監督がたくさんいるほどだ。

そんな中、昨年ちょっとしためぐりあいと御縁で3本のインディペンデント邦画の宣伝を手伝わせいただいた。このうち2本に主演級で出演していた芹澤興人も最近よく見る顔で、先日完成披露上映を見る幸運を得た岩井俊二監督作品「リップヴァンウィンクルの花嫁」の終盤に登場していて、思わず“芹澤さんだ!?”と本来笑う場面ではなかったのに一人で笑いをかみ殺していた(ちなみに紀里谷和明監督の登場シーンは劇場全体で苦笑があふれていた)。この人も「64ロクヨン‐前後編‐」(瀬々敬久監督)が控えている。

このような“リアル亀岡”な人たちは良い意味で“いい顔”をしている人が多くて、顔を一度覚えると中々忘れられない。登場シーンが短かったとしては必ず“あっ!?”“おっ!?”と思ってしまうこと間違いない。

映画を見る中で発見すること・知らされることが多ければ多いほど楽しめ、いい記憶となっていつまでも残ってくれるものだが、そのきっかけの一つに“リアル亀岡”探しはいかがだろうか?個人的にはかなり楽しんでいる映画の見方の一つだ。今回は亀岡ということで俳優だけに限った話になったが、勿論“リアル亀岡”的立ち位置の女優さんも百花繚乱、咲き乱れ、様々な映画を支えてくれている。そちらを探求し続けるもの一興だろう。今の映画には素敵な面々があふれ、いつでも会えることができる。

【付録】上半期にリアル亀岡が劇場で目撃できる作品達

「エヴェレスト神々の山嶺」
=ピエール瀧、山中崇

「信長協奏曲」
=でんでん

「家族はつらいよ」
=笹野高史

「仮面ライダー1号」
=大杉漣

「リップヴァンクウィンクルの花嫁」
=野間口徹・芹澤興人

「あやしい彼女」
=志賀廣太郎、温水洋一

「下衆の愛」
=渋川清彦・古館寛治・津田寛治・宇野祥平・でんでん

「蜜のあわれ」
=大杉漣・渋川清彦

「無伴奏」
=光石研

「テラフォーマーズ」
=渋川清彦・滝藤賢一・宇野祥平

「64‐ロクヨン‐」
=滝藤賢一・宇野祥平・芹澤興人・大西信満

「二重生活」
=宇野祥平

「セトウツミ」
=宇野祥平

「SCOOP!」
=滝藤賢一・宇野祥平

「太陽」
=古舘寛治

「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」
=古舘寛治・田口トモロヲ

「アイアムヒーロー」
=マキタスポーツ

「月光」
=古山憲太郎・川瀬陽太

「日本で一番わるい奴ら」
=ピエール瀧・音尾琢真

「森山中教習所」
=音尾琢真・光石研

「夏美のホタル」
=光石研

「HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス」
=安田顕・ムロツヨシ

「ヒメノアノ~ル」
=ムロツヨシ

「サブイボマスク」
=温水洋一

「クリーピー 偽りの隣人」
笹野高史

※以上が全作品ではありません、リアル亀岡達はこれ以外にもいろいろな場所に登場しています!

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(文:村松健太郎)

    ライタープロフィール

    村松健太郎

    村松健太郎

    村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年目に入った映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方で各種記事を執筆。

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