さわやかな風を吹かせながら人生を駆け抜けていった坂口良子

写真家『早田雄二』が撮影した銀幕のスターたちvol.27

現在、昭和を代表する名カメラマン早田雄二氏(16~95)が撮り続けてきた銀幕スターたちの写真の数々が、本サイトに『特集 写真家・早田雄二』として掲載されています。
日々、国内外のスターなどを撮影し、特に女優陣から絶大な信頼を得ていた早田氏の素晴らしきフォト・ワールドとリンクしながら、ここでは彼が撮り続けたスターたちの経歴や魅力などを振り返ってみたいと思います。

坂口良子

1970年代前半、数々のテレビドラマの中からさわやかな風を送り続けるデビューしてまもない坂口良子に、当時の老いも若きもの男性たちは魅了されたものでした。

思えば当時小学生だった私なども、あたかも隣に住んでいそうな優しく明るいおねえさんといったイメージで好もしく見つめていたような記憶があります……。

70~80年代のテレビドラマに
欠かせない存在として

坂口良子は1955年10月23日、北海道余市郡余市町の生まれ。

71年、高校1年のときに集英社『セブンティーン』のミス・セブンティーン・コンテストに応募して優勝し、上京します。

翌72年、テレビドラマ『アイちゃんが行く』主演のアイちゃん役に抜擢されてお茶の間の人気を一気に博し、おなじみスポ根ドラマ『サインはV』新シリーズ(73)のヒロインや、『家なき子』(74)では実の親を探す旅に出る少女を、『前略おふくろ様』(75)では萩原健一の恋人かすみちゃん役、『グッド・バイ・ママ』(76)では余命1年のヒロインなど、その愛くるしくもさわやかで明るい個性が当時の若者たちを中心に大人気となっていきます。

映画は76年の石井輝男監督『キンキンのルンペン大将』で主演の愛川欽也の相手役を務めてデビューし、続いて『激突!若大将』(76)では新若大将役の草刈正雄の恋人役や、森繁久彌主演『喜劇・百点満点』(76)にも出演しています。

彼女の映画出演で特筆されるべきは、この後、市川崑監督による角川映画第1作『犬神家の一族』(76)の旅館の女中さん役でしょう。ここでの彼女は石坂浩二扮する名探偵・金田一耕助とユーモラスな会話を交わしながら、とかく陰惨なイメージに陥りがちな猟奇ミステリの中でひとときの清涼剤ともなりえていました。

この後も市川監督は金田一シリーズ第3作『獄門島』(77)第4作『女王蜂』(78)で彼女を女中役で起用して、可愛らしさの中にちょっとおとぼけな個性を引き出しながら、シリーズの準レギュラー的な存在感を巧みに醸し出すことにも成功しています。

市川崑監督に発掘されていった
女優としての輝き

この後、映画出演は『人間の証明』(77)『帰ってきた若大将』(80)『嵐を呼ぶ男』(83)と少なく、逆にテレビでは赤いシリーズ7作目『赤い激突』(78)で三姉妹の長女を演じ、これぞテレビドラマにおける代表作の1本『池中玄太80キロ』(80)暁子役、エド・マクベイン原作『87分署シリーズ・裸の街』(80)では古屋一行扮する主人公刑事の聾唖の恋人役、『二百三高地 愛は死にますか』(81)では映画では夏目雅子が演じたヒロインを熱演、『私鉄沿線97分署』(84~86)の本多刑事役もわすれられないところです。

こういった流れの中で、市川崑監督の時代劇『帰ってきた木枯し紋次郎』(93)のヒロインは、彼女にとって女優としてのステップアップになる役どころでもあったと思われますが、これはもともとテレビドラマスペシャルとして製作されたものを、先に劇場公開するという、いわばテレビドラマであり映画でもあるという、実験精神旺盛な市川監督ならではの趣向の作品でもあり、それまでテレビドラマに欠かせない存在だった坂口良子にふさわしいユニークなスタンスに位置する作品になったのではないかと思われます。

娘の坂口杏里が芸能界デビューして以降は親子でバラエティ出演が増えていくものの、ドラマ出演も途切れることなく続けていた坂口良子ですが、2013年3月27日、横行結腸癌および肺炎のため死去。

何と57歳の若さでした。

晩年も愛くるしい笑顔を絶やすことなく見る者を和ませ続けた彼女のいないテレビは、どこか寂しくなった気もしています。

※「東京スポーツ」「中京スポーツ」「大阪スポーツ」は毎週月曜、「九州スポーツ」は毎週火曜発行紙面で、「生誕100年 写真家・早田雄二が撮った銀幕の名女優」を好評連載中。

(文:増當竜也

    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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