「頭の悪い男が失恋するストーリーは、平凡極まる」など酷評を乗り越えて作られた「寅さん」はやっぱり最高だ!
どうも。スズキです。
今や、人気作品として愛されている「寅さん」。その背景にあった物語をご存知でしょうか。これは、川村元気さんの著書「仕事。
」の中で、山田洋次監督によって語られています。内容が非常に興味深かったので、紹介します。
山田洋次監督にもスランプがあった
まずは、映画を作る前の話。山田監督は集客のことで悩みがあったそうです。しかし、ある言葉で救われたんだとか。
僕は〝寅さん〟を撮る前、ハナ肇主演の喜劇のシリーズをコンスタントに撮っていたんだけど、だんだん客が入らなくなって。
あるとき、松竹の会長だった城戸四郎さんに呼ばれて次は何を撮るんだと聞かれたから、「どうも近頃、僕の作品は客が入らなくて」と弱音を口にしたら、「客を入れるのは営業部の仕事だ。君はそんなこと心配しなくていい」と言われてホッとしたことがある。
その言葉でどんなに救われたことか。
こんな暖かいやりとりがあったからこそ、「寅さん」のヒットが生まれたのかもしれませんね。
寅さんがヒットして食べたおでん
また、「寅さん」がヒットしたことで生まれたこんなエピソードも心に響きます。
ちなみに〝寅さん〟が当たったとき、城戸さんにすぐ呼ばれて行ったら、本当にうれしそうに「よかった、よかった。スタッフとおでんでも食ってこい」って自分の財布からお金を引っぱり出して渡してくれてね。
こういった素敵なエピソードを聞くと、作品ばかりかスタッフまで好きになってしまいそうですね。
「頭の悪い醜男が美女に恋をして失恋するストーリーは、平凡極まる」と酷評されていた
さらに、38歳で監督した『男はつらいよ』が完成するまではこんな苦労もあったそうで。
30代の頃は、アルバイトでテレビドラマの脚本をよく書いていたんだよ。
『男はつらいよ』シリーズはフジテレビだったんだけど、最終回で渥美清さん演じる寅さんを奄美大島でハブに噛まれて死なせたら視聴者からものすごい抗議がきてね。
だから映画で生き返らせれば観客に申し開きが立つだろうと思って上に企画を出したら、今とはまったく逆で「テレビでやったものを映画でやったってしょうがない」って、けんもほろろ。
しかも提出した台本の裏に「頭の悪い醜男が美女に恋をして失恋するストーリーは、平凡極まる」って書かれて、突き返されたね。
こんなこともありながら、山田洋次監督はぶれずに「平凡」を撮ろうとしたんです。
とにかく平凡なものを作りたかった
「そうだよ、平凡なんだよ。俺はそれがやりたいんだよ!」って。
川村 小津監督の作品のほうがもっと平凡なドラマだよって(笑)。
山田 そうそう(笑)。
これほどの「こだわり」があったからこそ、「寅さん」は長く愛される作品になったのではないでしょうか。
すごくやりたい一人がいれば企画は化ける
映画化の際は、上司から反対意見もありながら、なんとか実現しようとした山田監督。逆境をはねのけて、実現した今、作品作りにおいてこんなことを感じているようです。
〝すごくやりたい一人〟がいる企画が化ける
こうした思いを持って、諦めずにアタックして以下のような行動もとっていたんだとか。
決定権をもっている城戸さんを説得しようとして、会長の部屋の前をウロウロしたこともあったよ。反対したという部長さんにも会いに行って、「あんたが反対したの?」って噛みついたりもしたね。
向こうは「いやぁ、私はまぁ、なんとかかんとか…」って言い訳するんだけど、反対するほうが無責任だと思っていた。映画は失敗することのほうがはるかに多いんだから。
実現に向けた並々ならぬ意志を感じますね。
山田監督がやりたがっていたから「寅さん」は実現した
そして、最終的には映画化のOKをもらったわけですが、その決め手となったのは「企画そのもの」じゃなかっと推測しているんです。
「これだけあいつがやりたいと言うなら、ひょっとして、ひょっとするのかも」というか、みんなが反対したけどものすごくやりたい人が一人いた案件のほうが、成功する確率があるんじゃないかな。
僕のときは最終的に映画化を決めたのは会長の城戸さんだったけど、彼だって『男はつらいよ』の企画を買ってたわけではないんだよ。
僕がやりたがってることが大事だと思ったんじゃないかな。
こんな風に、山田監督の人柄、姿勢が評価されて出来上がった「寅さん」。こうした背景を知っておくと、作品をより一層楽しめるのではないでしょうか。
こうしたことを頭に入れ、今週末にでも作品を再度楽しんでみてください。
ではまた!
(文・タクスズキ)
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