「ズートピア」は、ディズニー・アニメ第2位の大ヒット作。
その日米興行成績のギャップについて。


ズートピア 日本版ポスター 隠れミッキー

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2007年以降のディズニー・アニメ、1億ドル以上は7本

先輩 4月23日から日本でも公開されるディズニー・アニメ「ズートピア」だけれど、アメリカでは大ヒットになっていて、近く興収3億ドルを突破するだろうね。

後輩 僕も先日試写を見ましたが、今回は久々に「ファミリーで楽しめるディズニー・アニメ」になってました。

先輩 キャラクターが皆動物で、主役になる女性警察官がウサギで、詐欺師がキツネ。

後輩 動物の理想郷である街で事件が起こるわけですが、それを解明すべく活躍するウサギの女警察官と、彼女を取り巻く動物キャラが、個性豊かで面白いんです。このキャラは、子供にも受けますね。

先輩 その「ズートピア」だけど、君の指摘した通り、ファミリーで楽しめる内容になっているせいか、アメリカでは凄いヒットになっている。全米・カナダでの累計興収を見ると、現在2億9678万ドルで、3億ドル突破は間違いない。

後輩 最近のディズニー・アニメとしても特筆すべき成績のようですね。
先輩 うん。2007年以降のディズニー・アニメ、つまりウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが製作した長編アニメ映画のうち、興収1億ジルを超えたのは7本あって、日本でも大ヒットした「アナと雪の女王」を筆頭に「ズートピア」「ベイマックス」「塔の上のラプンツェル」「シュガー・ラッシュ」「ボルト」「プリンセスと魔法のキス」という顔ぶれだ。

後輩 凄いですよね。「ズートピア」がそのナンバー2だとは。

先輩 ただし「アナと雪の女王」の興収は4億ドルを超えているから、さすがに「ズートピア」がそれを抜くのは難しいと思うよ。

後輩 日本では、どういう順番になるんですか?

先輩 「ズートピア」を除くと、トップはやっぱり「アナと雪の女王」で興収254.8億円。以下「ベイマックス」91.8億円、「シュガー・ラッシュ」30億円、「塔の上のラブンツェル」25.6億円、「ボルト」16.5億円、「プリンセスと魔法のキス」5億円という順序になる。

後輩 微妙に順番が違うんですね。

先輩 「塔の上のラプンツェル」は、もっとヒットしても良かったんだけど、この映画の場合、日本だけ特殊な事情があってね。つまりこの映画が公開された2011年3月12日というのは・・・。

後輩 東日本大震災の翌日ですね。

先輩 そう。もう日本中が大騒ぎになっていて、映画どころじゃなかった。これは前週スタートした「ドラえもん・新・のび太と鉄人兵団 -はばたけ天使たち-」も同様で、オープニングこそ大ヒットのスタートを切ったんだけど、11日以降成績が大きくダウンしていった。

後輩 「−ラブンツェル」の場合は、もっとダメージが大きかったでしょうね。震災の翌日から公開ですから。

先輩 その通り。だからデイトを追うにつれて、興行成績はアップして行ったんだけど、オープニングが低かった分、物足りなさが残る興行になった。これはあくまで僕のカンだけど、作品の面白さから言っても、興収30億円を超える実力はあったと思う。

後輩 中川翔子の吹き替えも、ハマってましたもんね。

ズートピア 本編映像

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ピクサー作品との、有意義なせめぎ合い

先輩 正直、「ボルト」がアメリカで興収1億ドルを超えたのは、ちょっと意外だったよ。これも動物を中心にしたファミリー・ターゲットのアニメ映画なんだけど、なんだかよく分からない話になってしまっているし。

後輩 この作品からですよね、ジョン・ラセターがディズニーとピクサー、両社のクリエイティヴを総括するようになったのは。

先輩 そう。でも「ボルト」はラセターが来た段階で、ストーリーが決まっていたらしいんだよ。そこにラセターの意向を反映させた結果、こういうお話になってしまった。

後輩 日本でも夏休みまっただ中で公開されたにしては、今ひとつもーの成績。

先輩 でもその後、ラセターの方法論がディズニーのスタッフを大いに盛り立て、ディズニー・アニメは活性化。それが「アナ雪」の大ヒットに繋がった。ラセターとしては、ピクサーのクリエイティヴも統括しているから、2つのアニメ・スタジオを見なくてはならないんだけど、ディズニーはその頃「プリンセスと魔法のキス」「ルイスと未来泥棒」「スパイ・アニマル Gフォース」とかを製作するものの、成果のほどは今ひとつ。

後輩 当時のイメージとしては、ディズニー・アニメは昔ながらのファミリー・アニメの伝統があり、そこから脱しようとしてCGを投入したりしてるんだけど、なんか作品に新しさが感じられない。その点ピクサーは、アイディアの面白さ、企画の斬新さで新作を公開するたびに話題になり、大ヒットした。

先輩 そこでラセターとしては、ディズニー・アニメの再活性化を目指して、スタッフにハッパをかけるんだけど、「ベイマックス」公開時にNHKでオンエアされた、ディズニー・アニメの内部取材では、ラセターがメインスタッフを前にして、檄を飛ばすんだよね。「作るのは君たちだ!! 出資者じゃない!!」って。このラセター流の方法論が功を奏してディズニー・アニメが再び元気になるんだけれど、その分ピクサー作品に、往年のキレがなくなってきたようにも感じるかな。

後輩 春に公開された「アーロと少年」を見た時、「これはピクサーの作品じゃないだろ。ディズニー・アニメの伝統を引き継いだ映画だ」と思いましたよ。

先輩 「インサイド・ヘッド」みたいに、これまでのピクサー作品らしい、着眼点の面白さが活きた作品もあるんだけどね。

後輩 やっぱり大変なんじゃないですか、トラディショナルなアニメ・スタジオと革新的なアニメ・スタジオの、両方のクリエイティヴを統括するのは。

先輩 その割には、痩せないよね。あの人(笑)。

ズートピア ジュディ・ホップス ニック

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「ズートピア」は全米同様、「アナ雪」に次ぐ大ヒットとなるか?

先輩 ディズニー・アニメは確かに伝統を持つアニメ映画だったんだけど、こと日本での興行を見ていくと、ファミリーをターゲットにしているが故に、公開時期が限定されるデメリットがあったんだ。

後輩 つまり、春休みとか夏休みとか・・。

先輩 子供たちが映画館に来られる時期じゃないと、ヒットは期待出来ないだろうと。でもその時期は日本のアニメ映画も市場に出る。「ドラえもん」とか「ポケットモンスター」とかね。こうした日本のシリーズ・アニメは出版サイドの強烈なアプローチもあり、例えば「ドラえもん」などは長いシリーズだから、観客の側に鑑賞習慣が出来上がっている。しかも、親子2世代、あるいは3世代に渡ってキャラクターが認知されているあたりは、やっぱり大きいよ。毎作品興収30億円以上の大ヒットになるのもうなずける。

後輩 ディズニー・アニメは、なぜ「ドラえもん」にかなわないんでしょうか?

先輩 キャラクターの問題は大きいかな。ディズニーの場合、作品ごとにキャラクターが変わるから。

後輩 そうすると、今度の「ズートピア」はどうなりますかね?
先輩 ウサギのキャラクターは女の子にも受けると思うし、「アナ雪」や「ベイマックス」を支えた女性層にも受ける要素はあると見ているよ。作品としても、画面を埋め尽くすデフォルメされた動物のキャラは、すこぶる楽しいし。

後輩 アメリカのように、「アナ雪」に次ぐ大ヒットになるのか、これは注目ですね。

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(企画・文:斉藤守彦)

    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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