映画・演劇資料の宝石箱!松竹大谷図書館潜入レポート・後編
編集部公式ライターの大場ミミコです。松竹大谷図書館訪問レポート3部作も、いよいよ最終章でございます。前・中編の復習はこちらからどうぞ〜!
前編「寅さんやガンダムの台本を閲覧可能って知ってますか?」
中編「映画・演劇の台本やポスター…準備稿までも閲覧可能!」
前編は、松竹大谷図書館とは何ぞや?という基本的なお話。中編は、実際に入館して図書目録を使った図書検索を行うところまで書かせていただきました。
ということで後編は、検索した資料を手に取って閲覧するまでの道のりと注意事項、そして魅惑の激レア資料などについてお話したいと思います。松竹大谷図書館をご利用の際にはぜひぜひ参考になさって下さいね。
驚異のブレーン・カウンター係を味方につけよ!
入館時はドキドキだった筆者も、スーパー司書・武藤さんの親切&的確なご指導のおかげで、閲覧方法や図書目録の仕組みが大体分かってきました。前編にも書きましたが、松竹大谷図書館には収蔵資料のエキスパートが常時いらっしゃり、微に入り細に渡ったアドバイスをして下さいます。
なので、「グルメ映画の資料を、出来るだけ沢山欲しいんだけど」とか「歌舞伎作品の台本で代表的なものって何でしょうかねぇ?」みたいな、ぼんやりしたリクエストにも丁寧かつ迅速に対応して下さいます。かゆいところに手が届くプロの仕事に、感嘆の声が漏れること請け合いです。
※アニメから歌舞伎まで、何でも知ってる武藤さん
武藤さんに助けていただきながら、何とか請求表を記入し終えた筆者。今回は、筆者の大好きな山田洋次監督の最新作『小さいおうち』の台脚本と、これまた筆者の大好きな佐藤健さんの代表作『るろうに剣心』のプログラムを請求してみました。筆者は元シナリオライターとして山田監督の作品は外せませんし、女性として佐藤健さんの美しさに癒されない手はありませんので、このチョイスとなりました。
文化の宝と激レア資料に酔いしれる
その旨、武藤さんにお伝えすると「『小さいおうち』の台本だったら、準備稿・改訂稿・完成台本もありますよ〜」と言うではあーりませんか!!そんなわけで、それらも全部リクエストすることにしました。『るろうに剣心』についても、試写会でマスコミなどに配られる用のプレスシートもあるということなので、併せて請求してみることに…。
請求票に必要事項を記入し、カウンターの武藤さんにお願いすること数分。程なくして、筆者の座っているテーブルに台本&プレスシートが届けられました。
※通常閲覧室内及び資料は禁撮影です。
映画『小さいおうち』のイメージと統一された脚本の数々。メルヘンな飾り罫がアクセントになった、レトロオレンジの表紙がとっても可愛らしくてキュンキュンしました。と同時に、収蔵が基本1冊ずつのみという大変貴重な資料だと伺い、手にした瞬間から胸がドキドキです。やばい!これは落ち着かねば…と、佐藤健さんの袴姿に癒しを求めましたが、あまりの格好良さに余計興奮してしまうことに。
松竹大谷図書館はエンタテイメントに特化した図書館ですので、映画や歌舞伎などへの熱量が高い方や、一定の俳優・作者に対する思い入れの強い方の来館も少なくないとのこと。
そんな中、なかなか出回らないレアな資料に出会えた喜びから、勢い余って資料を汚したり傷つけたりといったことがないように、特にポスターなど、大きめのものは破損しやすいので、司書さんがお客様の目の前で広げて見せるという閲覧方法を取っているそうです。「じっくり手に取って眺めたい気持ちも分かりますが、色々試した結果、今はこの形に落ち着いています」とのことでした。
司書さん達も、映画やお芝居が大好きでこの仕事を続けてらっしゃる方ばかりですので、来て下さるエンタメファンの気持ちと重なるところが多いのでしょうか。直接手に取って頂けない代わり、閲覧者の方が納得いくまで広げて見せて下さるそうです。
このように何分も向かい合うと、恥ずかしいというか気まずいかも!?(※実際は余程大きいポスターでない限り、司書の方がカウンターや机で平らに広げたのものを閲覧)
ま、ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、心底味わうに越したことはないので、充分に満足するまでご覧下さいと武藤さん。ファンには有り難いお言葉ですね!
ポスターの他にも、紙が劣化した台本や会報のようなタブロイドなど、稀少かつ紙質が脆いものに関しても、司書さんの指示に従っての閲覧となります。また、図書や雑誌のコピーはOKとなっていますが、台本のコピーについて原則NGなので、司書の方の指示に従っていただくようお願いいたします。
蒲田撮影所の会報『蒲田週報』。大正時代のものも大切に保存されています。現在はデジタル化され、画像での閲覧となっています(※要予約)。
奇跡のガラスケース&ミニ展示コーナー
松竹大谷図書館は閉架式の図書館なので、利用者は書庫に直接入って資料を選ぶことが出 来ません。しかし、出来るだけ多くの方に資料を見ていただく機会を作りたいと、松竹大谷図書館では数年前、ショーケースを用いた展示コーナーを作りました。
「歴史的価値のある資料こそ、多くの人に見てもらいたい」「書庫の奥で眠らせておくなんてもったいない」…かねてよりスタッフの方々は、ショーケースを使った陳列を熱望していたそうです。しかしその願いは、なかなか叶いませんでした。膨大な資料の保存や、蔵書の充実が図書館としての優先案件で、ケース棚の購入まで予算が回らないという現実があったそうです。
そんな折、歌舞伎座(第四期)の取り壊しがあり、ロビーで使われていたガラスの展示ケースを譲ってもらえる事になったのですが、役割を終えた他の設備と一緒にトラックに載せられるところを、引き取りに行った司書さん達が危うく救出したそうです。
「これで、夢にまで見た展示コーナーを作れる!!」
以来、一命を取り留めたガラス棚は、松竹大谷図書館の閲覧室に置かれ『資料の展示ケース』として息を吹き返しました。
※図書館内の一等地に、燦然と輝く展示ケース
展示コーナーでは、季節の行事や話題のニュースにちなんだ様々な資料を展示しています。上の画像は「映画における『富士山』展」の様子ですが、この展示が催されたのは、ちょうど富士山が世界遺産に認定された時期だったそうです。このように、ロンドンオリンピックが開催された時にはオリンピックを題材にした企画を、有名な監督や俳優さんのメモリアルイヤーは関連作品の特集展示を行っているとのことです。
「小惑星探査機『はやぶさ』をテーマにした時は、宇宙がらみのパンフや資料で、ケース内がキラキラになったんですよ」と、武藤さん。
歌舞伎、ガンダム、花や緑…取り上げるテーマによって、ケースや周りの雰囲気がガラッと変わるそうです。展示内容は基本的に月ごとに変わるので、雰囲気の変化を楽しんでみるのも面白いですね。
また、過去に催された展示企画の解説がまとめられたファイルも常備されていますので、併せてご覧になって下さいませ。
実際に書庫に入ってみた
今回は『シネマズ』の取材ということで、特別に書庫に入れてもらうことが出来ました。わーい!
本来なら絶対に入れない場所ですので、もちろん写真撮影もNGです。ということで、ここからは私の拙い文章とイラストだけでお伝えしていこうと思いますので、想像力をフル回転させて読んでみて下さいね…と言っても、待っていたのは、普通の図書館と同じく書棚がズラッと並んだ光景でしたが(笑)。
※ぎっしり資料が並んだ書庫
資料のカテゴリーとしては、圧倒的に芝居もの(台本や写真など)が多いそうです。映画やドラマなどのポピュラーなエンタメは、この書庫では比較的少数派とのことですが、一般人である筆者の為に、映画コーナーを中心に見せていただきました。
映画資料は、台本・パンフレット(プログラム)・一般図書・雑誌・スチール写真・ポスターなど、ジャンルごとに保管されていました。パンフや図書の書棚はやはりカラフルで、印象としては賑やかな感じでした。一方、手作りのカバーに収められている台本のコーナーはグレートーン一色でした。
というのも、映画やドラマの脚本というのは、撮影までの間に何度も修正を加えて完成させていくからです。そのため台本も企画の段階で使う企画稿、企画を叩いて形になった初稿、直しを入れた二稿・三稿を経て、決定稿へとブラッシュアップするので、結果的に数冊の台本を擁するのが一般的なのです。
1つの作品に対する複数の台本を一括りで保管するため、松竹大谷図書館では厚紙のカバーを使っていました。汚れや破損を防ぐ・同じ作品の資料がバラバラにならずに済む・立てて収納する際に本がへたらないなど、厚紙のカバーは棚に立てて収納するにはもってこいのアイテムなのだと武藤さんはお話しして下さいました。
画像・左が、実際の棚の様子です。(※写真はお借りしたもの)
資料を最高の状態で保管する裏側には、松竹大谷図書館のスタッフの方々の知恵と細心の注意、そしてエンタテイメントと資料に対する大きな愛があるのだと知らされました。
また万一、火災・水害などが起こっても資料へのダメージが最低限に保たれるよう、歴史的・文化的に価値の高い資料などは不活性ガス消火設備が整った別室に納められているそうです。
このように、沢山の手間とお金がかけられて、松竹大谷図書館の資料はコンディションを保っているのです。
文化を後世に伝える崇高な仕事
前・中・後編と、3回に渡ってお伝えしてきた松竹大谷図書館の探訪記ですが、裏側まで覗かせていただき一番心に響いたのは「膨大な蔵書を保管する大変さ」でした。
もちろん、資料をリクエストして触れただけでも「こんなに美しく保管されているとは!」と感動すること請け合いなのですが、書庫に入れていただいたことで『整理・保存』に対するイメージが変わりました。ひとくちに『蔵書を保管する』と言いますが、実は文化を後世に残し伝えるという崇高な仕事なのだと心から思いました。
文献の保存には、膨大な手間隙とお金が必要です。松竹大谷図書館では、より有意義な活動と社会貢献のために寄附金を募っています。共感された方はぜひ、下記リンクをチェックしてみて下さいね。
寄附金趣意書|松竹大谷図書館
寄附金募集要項|松竹大谷図書館
おわりに
その存在すら知らなかった松竹大谷図書館でしたが、実際に行ってみて本当に楽しい場所ということが分かりました。索引や引き出しに納まったカード式目録を使った図書検索や、レアな資料との出会い、そしてスタッフの方々から溢れるエンタテイメントへの愛情…
ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオとまでは言いませんが『体験型アトラクション』『レアな仕掛け』『愛いっぱいのスタッフ』という要素においては『エンタメ資料テーマパーク』のようだと思いました。TDL(Tokyo Disney Land)ならぬ、SOT(ShochikuOotaniToshokan)(笑)。
近い未来には、カップルや家族で訪れる、東京屈指のアカデミックスポットとなっているかもしれません。ナウでヤングな情報通の皆さん、今のうちに松竹大谷図書館をチェックしておけば、"一歩先行くデキる奴"と一目置かれること間違いナシですよ!!
(文・イラスト/大場ミミコ)
関連リンク
寅さんやガンダムの台本を閲覧可能って知ってますか?松竹大谷図書館訪問・前編
映画・演劇の台本やポスター…準備稿までも閲覧可能!松竹大谷図書館訪問・中編
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